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3組と8組

6月3週目

相野高校3年8組出席番号38番吉野君子。

数字だけ書くと3838となっていてとても覚えやすい。

いや、そんなことはどうでもいい。

今日は明子と長谷川にこの間のお礼も兼ねて何かを奢ろうと考えている。

明子には簡単に放課後の約束を出来たけど、問題は長谷川だ。

あの日、クラスを聞いたところ3組らしい。

同じ学校と言うのはなんとも驚きだった。

まぁ2年の時は1組と9組という反対のクラスだったみたいなので知らなくても仕方がない。

うちの高校は玄関が二つある。

東玄関と西玄関があってどちらからも入ることができる。

靴は玄関にある空いている靴箱のどれを使ってもいいことになっている。

なのでマンガとかでよくある「下駄箱にラブレターが!」っていうのとは全くもって無縁な学校だ。

そして横長の学校なので階段も二つある。

1組から3組は西玄関と西階段、7組から9組は東玄関と東階段を主に使っていて、4組から6組はどちらか好きな方を使っていた。

なので西と東の使用者はそれぞれのクラスとは全く関わりがない人間もいるということになっていた。

私たちと長谷川も例によって関わりがない人間の一人だったというわけだ。

そして今私は長谷川のクラス・3組の前に立っている。

他のクラスに行くのって初めてだから結構緊張するな。

勇気を振り絞ってドアの前に立って長谷川を呼ぶ。


「長谷川!!・・・くん・・・います・・・か?」


どんどん声が小さくなった。

みんなの視線がこっちに集まるんだもん。

やっぱりお礼なんてやめておけば良かった。


「あれ?吉野じゃない?」

「たしかに!」


声の方を見ると2年の時に私をいじめていた3人がいた。

一瞬からだがブルっとした。一人がこっちに歩いてくる。

あの時は正樹が近くにいたから平気だった。

でも今はもういない。

逃げ出そうとしたけど、私のからだは凍ったように感覚がなくなっていた。

まさしく蛇に睨まれた蛙状態。


「吉野。あの時はゴメンね。あたしもまだ子供・・・」


謝られたってなんにも変わらない。

自分は少し楽になるかもしれないけど、相手は一生トラウマになるくらいのダメージを受けているってことをわかってない。

イジメとはそーゆーもんだ。


「吉野?」


ふいに後ろから散々聞いていた声が聞こえた。

動かないからだでぎこちなく後ろを振り返ると長谷川が立っていた


「あ、は、長谷川」


やっとのことで声が出せた。

でも多分もうここでは声は出せないような気がした。


「どうした?何か用か?」


さっきの元いじめっ子が長谷川に何かを言っている。

私・・・正樹のことで少しは強くなったと思ったんだけど、少し思い上がっていたみたいだなぁ。

全然動けないししゃべれない。

結局ぐるっと一周しただけで、根本的には何も変わらなかったのかもしれない。


「吉野。ちょっとこっち来い」


長谷川が私をじっと見る。

いじめっ子がまだ何か言っているのを無視して、長谷川に手を引かれてその場を離れる。

そのままされるがままに連れて行かれた先は、東階段横の自販機があるホールだった。


「ここならさっきの廊下よりは人は少ないだろ」

「あ、ありがと」

「そんなことよりどうした?なんか用か?」


長谷川は何も事情を聞かないでくれる。

わざとなのかそれとも本当に気にしていないだけなのかわからない。

でもそれが今の私には心地よかった。

凍っていたからだが溶けていったのがわかった。


「あ、あのね。この間のお礼がしたくて」

「お礼?あれはお見舞いに行っただけだから別に何もいらないぞ」

「そういうわけにもいかないの!」


思わず食ってかかる私の頭を長谷川は手で押さえる。


「そこまで必死になるなよ。で、何してくれるんだ?」

「なんか好きなもの奢ってあげる」

「なんかって言われてもな・・・俺欲しいものは自分で買うから他人からもらったものは使わないぞ」


人が奢ってあげるって言ってるのに、こいつやっぱり変な奴。

ってゆーかこんな人間初めて見た。

普通奢ってくれるんなら奢ってもらうのが常識じゃん。


「えー。なんか奢りがいのないやつだなー」

「えーとか言うな。そんなにお礼がしたいのか?」

「だって迷惑かけっぱなしだったし、私のためにあんなにいろいろしてくれたわけでしょ?」

「それはそうだが、別にお礼が欲しいとか感謝して欲しいとか思ってやったわけでなくて、俺がしたいとおもったからやっただけだ。だから気にしないでくれ」


こうなったらもう意地でも奢ってやる。

私は目的を『奢ってあげる』から『何がなんでも奢ってやる』にシフトチェンジした。


「そんなこと言わずにさ。何か奢らせてよー」

「うーん・・・そこまで言うならひとつだけお願いしてもいいか?」

「さぁなんでも言いなさい」


やっと折れてくれた。

思わず笑みが溢れてしまう。


「俺と普通にいろんな話をしてくれないか?」

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると執筆意欲が高まります。


この回からラブコメ展開を増やしていきたいと思ってます。

気分が乗らなくて無意味に書き溜めを投稿してるのは内緒です。


次回もお楽しみに!


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