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溺愛ハッピーエンドが欲しくて頑張ったのに、なぜか彼氏はヤンデレ化した  作者: ChaCha


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起きるはずだったイベント

それは、本来なら起きるはずの日だった。


理由は、はっきりしている。

日付。

天候。

時間割。

生徒の動線。


前世の記憶が、静かに一致を告げてくる。


(……今日だ)


胸の奥で、かすかに音がした。


騎士科と魔術科の合同演習。

中庭を通過し、器具庫の前で小さな事故が起きる。

落ちた荷物。

手を伸ばす誰か。

助ける誰か。


――よくある、あの流れ。


好感度が上がるかどうかは関係ない。

“起きる”こと自体が、条件を満たしている。


(……なのに)


私は、何事もなく教室を出ていた。


ベルンハルトが、いつもより少し早く声をかけてくる。


「今日は、器具庫側は通らない」


「え?」


理由を聞くより先に、

彼は私の歩幅に合わせて進路を変えた。


(……あ)


嫌な予感、というほど強くはない。

でも、確かに、引っかかる。


(……ここ、だったはず)


角を曲がれば、

器具庫が見える。

人が集まる。

騎士科の訓練終わりと重なる。


そういう“予定”。


なのに。


「今日は、混む」


短い一言で、

その道は選択肢から外れた。


(……混む、だけ?)


私は、思わず後ろを振り返る。


遠くに、騎士科の生徒たちの気配。

笑い声。

足音。


――でも、交差しない。


(……交差、しない)


世界が、ずれている。


歩きながら、

前世の記憶が、細かく点灯していく。


・この時間

・この天気

・この位置


一致している。

なのに、結果だけが、違う。


(……偶然が、起きない)


ベルンハルトは、前を見ている。

迷いはない。


彼の手が、すぐそばにある。

触れない距離。

でも、逃げられない距離。


(……あ)


その時、はっきり理解した。


偶然が起きないんじゃない。

――起きる前に、閉じられている。


道。

時間。

接触。


全部、“起きない配置”に整えられている。


(……これって)


胸の奥が、冷える。


守られている。

そう思っていた。


でも。


(……守られてる、だけじゃない)


ベルンハルトが、ふとこちらを見る。


「どうした」


「……ううん」


言葉が、喉で止まる。


(……言えない)


“起きるはずだった”なんて、言えない。

世界の仕様なんて、言えるわけがない。


でも。


(……世界が、静かすぎる)


安全で、平穏で、完璧な日常。


その裏で、

何かが、確実に歪んでいる。


器具庫の前を、通らないまま。

誰とも、ぶつからないまま。

何も、起きないまま。


その日の“イベント”は、

静かに、未発生のまま終わった。


(……閉じられた)


偶然は、失敗したんじゃない。

遮断された。


それに気づいてしまった瞬間、

私の中で、はっきりとした不安が生まれた。




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