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溺愛ハッピーエンドが欲しくて頑張ったのに、なぜか彼氏はヤンデレ化した  作者: ChaCha


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“偶然”が起きなくなる世界

変化は、音を立てずに始まった。


朝の登校。

中庭を抜けるはずの道が、今日は使われなかった。


「今日は、こっちから行こう」


ベルンハルトが言う。

理由は、添えられない。

混雑しているから、だとか。

時間が押しているから、だとか。


どれももっともらしい。


私は頷き、彼の示す道を選ぶ。

ただそれだけ。


(……あれ?)


噴水の音が、聞こえない。


中庭を避けた結果だと気づくのに、

少しだけ時間がかかった。


授業の合間。

廊下で立ち止まり、誰かを待つ――そんな余白が、なくなった。


「次、移動だろ」


ベルンハルトは、いつも一歩早い。

声をかける前に、隣にいる。


(……気遣い、だよね)


そう思う。


放課後。

騎士科の訓練が終わる時間帯。


以前なら、遠くに見えたはずの光景が、今日は視界に入らない。

時間が、微妙にずれている。


(……たまたま、かな)


ベルンハルトは、何も言わない。

ただ、帰りの準備を整えている。


馬車の手配も、早い。


「今日は、家の用事がある」


そう言われれば、それ以上は聞けない。


(……最近、いつも一緒だな)


嬉しい。

それは、間違いない。


守られている感覚。

選ばれている実感。


でも――


(……偶然、減った?)


エルンストと顔を合わせる機会。

名前を呼び合う距離。

廊下での挨拶。


思い返してみると、

ここ数日、きれいに起きていない。


(……不思議)


イベントは、起きるはずだ。

予定に近づけば。


なのに。


起きない。


起こらない。


(……世界が、静か)


学園は変わらない。

人も、授業も、規則も。


ただ、

“私の周囲”だけが、整えられている。


ベルンハルトは、いつも通り優しい。


声の温度も、

視線の柔らかさも、

距離の取り方も。


触れないまま。

でも、確実に、そばにいる。


(……安心、なのに)


胸の奥で、何かが引っかかる。


「カレン」


名前を呼ばれる。

反射的に顔を上げる。


「疲れてないか」


「大丈夫」


即答してしまう。


彼は、少しだけ目を細めた。


(……見られてる)


嫌じゃない。

むしろ、心強い。


それでも。


(……前より、選ばなくてよくなった?)


行き先も。

時間も。

誰と会うかも。


気づけば、

全部、彼の隣で決まっている。


(……あ)


その事実に、初めて輪郭が生まれる。


不安、と呼ぶには弱い。

疑問、と呼ぶには曖昧。


でも。


(……偶然が、起きなくなってる)


私は、歩きながら、無意識に周囲を見回した。


中庭の方角。

騎士科の廊下。

人の流れ。


――何も、起きない。


ベルンハルトは、私の歩幅に合わせている。

ぴたりと、離れない。


「行こう」


そう言われて、

私は、また頷き、一緒に歩き出した。

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