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溺愛ハッピーエンドが欲しくて頑張ったのに、なぜか彼氏はヤンデレ化した  作者: ChaCha


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案件です。大変です。

放課後の廊下は、昼間よりも少しだけ騒がしい。

部活動へ向かう生徒、帰宅する生徒、友人同士で談笑する声が混ざり合う。


カレンは、その中をベルンハルトと並んで歩いていた。


(……)


……気づけば、チラ見していた。


(だって……)


隣を歩く横顔。

落ち着いた表情。

整えられた姿勢。


(……最近、ほんとに……)


優しいし、近いし、

触れないのに、存在感が強い。


(……見ちゃうよ……)


その瞬間。


――つるっ。


「わっ!!」


足元の段差に気づくのが、一瞬遅れた。


「っ、カレン!」


ベルンハルトの声が、鋭く響く。


次の瞬間――

身体が前に倒れ、視界が回転した。


「ひゃあっ!」


どすん、と。


尻もちをついたのは、ベルンハルトだった。


勢いそのまま、

私は――


(……え)


ベルンハルトの上に、跨る形で倒れ込んでいた。


時間が、止まる。


(……え、え、え?)


近い。

近すぎる。


おでこと――が、ごつん!!


「「痛っ!」」


同時に声が出た。



額に、じんとした衝撃。


「いった……」


反射的に目を閉じて、

すぐに、はっと息をのむ。


(……あ)


ベルンハルトの瞳が、すぐそこにあった。


距離、数センチ。


視線が絡む。

唇が、触れそうな位置。


(……ち、近っ……!!)


「わっ、わわっ、ご、ごめんなさい!!」


慌てて起き上がろうとする。


けれど。


「……っ」


ベルンハルトが、片手を上げた。


「……カレン。少し、待って」


声が、低い。


「へ? う、うん……?」


言われるがまま、動きを止める。


そのままの体勢。

私は彼の上に跨ったまま。


(……え、なに……?)


ベルンハルトは、目を閉じた。


そして――


深呼吸。


一度。

二度。

三度。


盛大に、繰り返す。


肩が上下するのが、はっきり分かる。


(……???)


状況が、理解できない。


(え、私……そんなに重かった?)


(押し倒しちゃったから、痛いのかな……?)


「……ふぅ」


ようやく、息を整えたベルンハルトが、目を開けた。


「大丈夫」


そう言って、視線を逸らす。


「……耐えられる」


「???」


カレンの頭に、はてなが大量発生する。


(耐える……?)


(なにを……?)


見下ろした位置にあるのは、

ベルンハルトの胸元。


――近い。


呼吸の熱。

体温。

筋肉の硬さ。


(……あ)


今さら、状況を理解する。


(……これ……)


(……健全な男子案件では……!?)


しかも、

彼はずっと“触れない”距離を保っていた。


それが今、

完全に 破綻 している。


(…… 当たってるよ ……)


言葉にできないことを、

本能が察する。


ベルンハルトは、視線を外したまま、

歯を食いしばるように、短く息を吐いた。


「……本当に、悪い」


「え!? え、なんで!?」


「俺が、支えきれなかった」


(いやいやいや!!)


内心で全力ツッコミ。


(どう考えても私の不注意です!!)


「だ、だいじょうぶだから! ほら、起きるね!」


慌てて身体を離す。


立ち上がると、

ベルンハルトもすぐに起き上がった。


ローブの裾を整え、

何事もなかったかのように、姿勢を正す。


……ただし。


耳が、赤い。


(……)


(あ、照れてる……)


その事実に気づいた瞬間、

心拍数が、一気に跳ね上がる。


(……やばい……)


ベルンハルトは、咳払いをひとつしてから、

いつもより少し距離を取った。


「……歩く時は、前を見ろ」


「う、うん……」


それだけ。


触れない。

責めない。

でも、さっきよりも確実に意識している。


(……距離、壊れた……)


ほんの一瞬の事故。


それなのに。


胸の奥が、ずっと、うるさい。


(……これ……)


(……溺愛、って……)


(静かなだけじゃ、済まないやつだ……)


ベルンハルトは、何も言わずに歩き出す。

その背中が、いつもより少しだけ早い。


カレンは、その後ろを追いながら、

自分の額をそっと押さえた。


(……いたい……)


でも。


(……ドキドキ、も……)


収まる気配が、なかった。


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