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溺愛ハッピーエンドが欲しくて頑張ったのに、なぜか彼氏はヤンデレ化した  作者: ChaCha


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触れないまま、守られていく

ふ、とした瞬間だった。


特別な出来事があったわけじゃない。

劇的な言葉も、甘い接触もない。


ただ、日常の中の、ほんの一瞬。


学園の中庭を抜ける時、

風向きが変わって、ローブの裾が翻った。


「……」


ベルンハルトは、何も言わずに半歩前に出る。

私に直接触れることはない。

ただ、風を受ける 位置 を変えただけ。


それだけなのに――


(……あ)


胸の奥が、きゅっとする。


誰かに言われたわけでも、

教えられたわけでもない。


でも、分かってしまう。


(……守られてる)


危険から、というほど大げさなものじゃない。

でも、不快なものや、余計な視線や、

小さなストレスから。


そういうものを、

“当たり前に除外してくれている”。


昨日もそうだった。


廊下で人の流れが増えた時、

いつの間にか、ベルンハルトは外側に立っていた。


私の歩幅に合わせて。

急かすことも、置いていくこともなく。


(……優しい)


それは、声に出さなくても伝わる優しさだった。


前世の私なら、

「過保護すぎない?」

「溺愛ルート入ってない?」

なんて、茶化していたかもしれない。


でも、今の私は――


(……嬉しい)


その気持ちを、否定できなかった。


教室で、ノートを取っている時もそうだ。


私が考え込んでペンを止めると、

ベルンハルトは、決して覗き込まない。


答えを教えない。

急かさない。


ただ、同じところでペンを止めてくれる。


(……待ってくれてる)


触れない。

言葉も最小限。


それなのに、

一人じゃないと、はっきり分かる。


(前のカレンは……)


ふと、思う。


(こういう“静かなところ”が、好きだったんだろうな……)


昨日の日記の文字が、頭に浮かぶ。


並んで歩くだけで落ち着いた。

話さなくても、安心した。


(……うん)


分かる気がする。


前世の私が割り込んでこない。

攻略だ、ルートだ、選択肢だ、という声が、今日は静かだ。


代わりに、

今の私の感情が、ちゃんと前に出てくる。


(……ベルンハルト)


視線を向けると、

彼は気づいていないふりをしている。


気づいているのに、

“見ない”という選択をしているみたいに。


(……ずるい)


その距離感が、

ますます意識させてくる。


ふっと、口元が緩んだ。


自分でも驚くほど、

自然に。


作った笑顔じゃない。

考える前に出た、素の表情。


ベルンハルトが、それに気づいた。


一瞬だけ、目を見開いて――

すぐに、柔らかく目を細める。


触れない。

でも、確かに受け取っている。


(……あ)


胸が、じんわりとあたたかくなる。


(……私)


この人に、

大切にされている。


それは、束縛じゃない。

押し付けでもない。


“ここにいていい”と、

何度も、何度も、行動で示されている。


(……溺愛って)


こういう形も、あるんだ。


派手じゃなくて。

強く抱きしめられるわけでもなくて。


ただ、

逃げなくていい場所を、

黙って用意されている感じ。


(……悪くない)


むしろ――


(……好き、かも)


その気持ちが浮かんだ瞬間、

胸の奥で、静かに何かが定着した。


更新された日常。

触れないまま、守られていく関係。


それは、思っていたよりも、

ずっと、心地よかった。


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