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プロローグ
零 【光り輝く二柱】
人の形をしているけれど、人ではない。
ただ、世界を見下ろし、物語を覗き込む存在。
『もう切な過ぎてさ』
片方が、困ったように肩をすくめる。
『うん。わかる』
もう一方が、即座に頷いた。
『涙、止まらなかった』
『……だね』
沈黙が落ちる。
それは否定ではなく、同意だった。
幾つもの分岐。
選ばれなかった手。
届かなかった想い。
それらを、二柱はすべて見てきた。
『溺愛ハッピーエンドを欲してる』
『自分も』
声が、少しだけ柔らぐ。
『じゃあ、次は 君に 決めた!』
その言葉が放たれた瞬間――
「……へ?!」
世界が、きしりと音を立てた。
それは、誰にも聞こえない声。
誰にも見えないやり取り。
だからこれは、
きっと――
私の独り言。
そういうことに、しておこう。




