鍵と白い影 4
園芸部物置の奥の方で、もう一人の女子、えーと確か、宮竹さん、だったと思う。
シャベルや、角スコップとショベルをもっていた。
先生と一緒になってどっちを使うか話をしているみたいで、
「ももちゃん先生、どっちを持っていきますか?」
「うーん両方持っていこう。」と近寄ってみると何やら、そんなことを言っていて。
一輪車の荷台にスコップやら、角スコップ、先のとがった、シャベルをどんどん荷台に積んでいた。
近づいたボクに宮竹さんが「さあ、男子!よろしく!」と言って俺に一輪車のハンドルを待たせて、「これを花壇まで運転、お願い!」運転というのか、押すというのか、タイヤが、一本しかないので、とっても不安定で何回か、ひっくり返そうになった。
フラフラする度その度に「しっかりー」といって、声援を宮竹さんが。
もう!ボクは、こんなの初めて、押して運ぶんですけど!と心の中で、言いながら、口では、「このっ、このっ!」とふら付く度に声は出てるみたい。
そうすると先生は、「ゴートー君、この一輪車、何ていうか知ってる?」と話しかけてくる。
こっちは、初めての運転でで、フラフラなんですけど!
と、思いながら、「何て言うんですか?」と、聞いてしまった、そこで、すかさず、「ネコ車!」と元気よく答えたのは、手ぶらで後ろについてきている宮竹さん。
「手ぶらじゃんもう!」と思いながら、この一輪車が、ネコ?あのニャーって鳴く?と思っていたら、「よく知ってるねー」と先生、その間もおれは、フラフラと前進している最中。
やっと物置の出口に差し掛かり出ようとしたら出口の段差にタイヤが乗り越えられない状態だったので、勢いを付けるのに少しバックして、勢いを付けて、前進して、を繰り返しているうちにバランスを崩して、ひっくり返してしまった。
「あーあー」と言って、先生と宮竹さんはひっくり返って、荷台からこぼれた、スコップや、シャベルなんかを拾って、「そう、丁度荷台をひっくり返した、ところが、ネコの丸まった状態に似てるから。」と宮竹さんは言って、
そして、「諸説あり!」とうれしそうにいった、先生。
モモちゃん先生、それ、言いたいだけでしょ。
と、思いながら、もう一度、一輪車を立て直し、スコップを荷台に積んで、歩き出した。なんだか、花壇まで、遠く感じて仕方なかった。
草が生い茂っている花壇が、眼の前なのに、あっちフラフラこっちフラフラしていると、うしろから、宮竹さんと先生が「頑張れ男子!」と応援?応援してくれている。
広い花壇は、草が伸び放題で、荒れていた。元々、何か植えていた形跡はあるけど今は、その見る影もない。その近くに一輪車、ネコ車に積んでいるスコップやそのほかの物をおろして、先のとがった鎌とか、刈込ばさみは危ないから、シャベルとか、スコップを使って、草の根っこから引き抜くようにしなきゃいけない。
で、なかったら、また、直ぐ草が生えてくるというから、軍手をみんなつけて、草むしりを始めることにしたんだ。草が冬を超えて、枯れ草になっていて、それでも地面が見えないくらい。
草をむしってると生えている、土筆を発見した。
これ、土筆ですよね。
と、モモちゃん先生に見せると、「そうそう、土筆っていって、土に筆って書いて、書道で使う筆に似てるから、そう言われてるらしいって。それに、つくだ煮にして、食べることもできるんだって。」「へーっ」っていって感心していたら。
「土筆は春の訪れを昔の人はね、鎌倉時代の『藤原為家』という人がこう詠んでいたんだよ。
『佐保姫の 筆かとぞ見る つくづくし 雪かきわくる 春のけしきは』って、『春になって雪をかき分けて生えてくる土筆は、春の神様、佐保姫が使う筆の様だ、』って意味なんだけどこう見ると、筆の様にみえなくもない、よね。」ってモモちゃん先生。
「へー」と言いながら、その手に取った土筆をまじまじ見ていると。
『ありがとう』と、どこからか、声が聞こえたかと思うと、枯れた草を抜いたりしている途中の、花壇に、白い影が、するすると集まってきたんだ。
今度は、ボクだけじゃないももちゃん先生も、松根さんや宮竹さん、百合川さん、みんなの目の前で白い影が現れて。
その白い影をみんなが見ていると、どんどん周りから、白い影が集まりだし、みるみるそれは、人の形になってきたんだ。
読んでいただき、目を通していただき、誠にありがとうございます。




