鍵と白い影 2
ちょうど、体育館の壁にもたれかかるように、薄い金属で出来た大人が何人も入ることのできるおっきな物置があった。
スコップや、鍬や、一輪車なんか、園芸道具を仕舞っていた。
入り口付近には雨が当たらないように、大きな袋の中に、しかぬまいし?何て読むんだろう、あともう一つは、腐った葉っぱと土って書いて、なんて書いてるのか、分からないけれど、そんな袋が、三つほど積まれてた。
後で先生に聞くと『鹿沼石』『腐葉土』って読むらしい。どれも、園芸には必要らしい。ってモモちゃん先生は言ってた。
物置の入り口は鎖と大きな錠で。
すごい!
海賊の宝箱に出てきそうな大きな錠が掛かっていた。
先生が、ガチャガチャと金属の輪っかに一杯の鍵を通している。
鍵の塊を職員室から持ってきてて、ガチャガチャと鍵を錠に差し込んでいたけれど、一杯ある錠の塊の中から一個づつ差し込んで回している。
けれど、どれも違って、鍵穴に入るけど回らなかったり、鍵穴に入らなかったり、入って回るけど、開かなかったりと、どれも錠に合う鍵が見つからないみたい。
「もう!」と言って錠に鍵が刺さったまま先生は手を離した。
そのままブランと金属の輪っかが、一杯の鍵が付いている鍵のかたまりが、振り子のようにぶらさがっていた。
そして、腕組みをして、暫くウーンと唸っていたと思うと、急にくるっと振り返りオレを見て「コージ君よろしく」と、近寄って来て、急に片手をあげ、ハイタッチをしてきた。
ボクは急にいっぱい鍵の付いた輪っかから「合う鍵を見つけるようにっ。選手交代!」て、選手交代を指名された。
こんな、選手交代はいやだ、エースはこんなところで選手交代なんかしないもん。
「えー!」といいながら鍵を見ると、鍵が錠にささったままブラブラ揺れていた。
「どうしようこんなに一杯あるのに、どうやって見つけよう」と、いったん鍵を抜いて目の前でジッと見ていると、後ろから、「ガンバレー」って先生と部員三人が声を掛けてきた、「男子ー、がんばれー」と口に両手をわっかにしてメガホンの様にして、三人一緒に、そして、後について先生が「男子!ガンバ!」と声援をおくってきた。
「男子だろうが、鍵を見つけるのって関係なくない?」と声に出さずに心の中で叫んだ。
もう一度、鍵を一つづつ、じっと見ていると「やっぱりわからないや。」って気になって一つづつ鍵穴に鍵を差し込んで何十本も試して、指がしびれてきて、もうすぐ鍵の輪っかが一周する少し前、鍵を差し込もうとしたとき。
チャリーン!と目の前に鍵が落ちてきた、「エッ!」と思って上を見上げると何かが空を飛んで行った。
何かはわからなかった、ただ、白い影しか見えなかった。
影は黒いものなんだけど、影の様に見えたのが白かったんだ。
すぐ振り返って後ろで、声援を送っている女子と先生に「今の見た?」って聞いてみた。
「なーにー、」「もう鍵空いたー」とか、「どうしたのー」とか、「ガンバレー」とか、くちぐちにいってて、なんだかみんな見てない感じだった。
おかしいな、とおもって、落ちた鍵を拾ってみた。
その鍵はキラキラ光ってるようにみえた。
新しいからピカピカに光ってるのかな、と思ってジッとよく見ると、光が反射して光っているわけじゃなく、鍵そのものが光っていた。なんだか気持ち悪くなって、先生に見せようと思ったとたん、普通の金属の鍵の色になった。
頭の中に「?」がいっぱいになって、どうしようかなと思ったけれどなんだか、この鍵で開くんじゃないかなとなんだか不思議な気持ちになって、心の中で、「よーし。」と言って、鍵穴に差し込んで回してみると、カチンと鍵の輪が弾かれたように鍵が開いた。
後から「開いたー」「開いたー」「お疲れさまー」「ゴクロー」とか口々に言って、オレの近くにやってきた。
「近い近い!」って心の中で叫ぶくらい、ちかよってきた、ボクにではなく、ボクが物置の入り口に立っていたからだ。
そうだとしても急に近づいてこられるのは、とってもドキドキだ、このドキドキが顔に出さないようにするのにボクは頑張った。
錠や鍵の輪っか、鎖を土の袋の上に置き、先生は「じゃあ中からスコップや、シャベルや、クワとか取りだしましょう、あっ、その前に軍手をして怪我しないようにしましょう。」
と、言って物置の中にはいっていった、女子三人もあとに続いて入っていった。入り口に残されたボクはもう一度空を見上げ、白い影みたいな何かが見えた方向をもう一度見た。
だけど青い空が広がっているだけで、何もなかった。
拙作に目を通していただいて、大変恐縮致します。本作は一応、児童対象としております。【例:つばさ文庫、青い鳥文庫、みらい文庫】もし、よろしければ、覗いていただければ幸いです。




