鍵と白い影 1
オレ、 後藤コージっていうんだ、あだ名は【ゴートゥー】。我賀田小学校5年にこの春なったばかりなんだ。
好きなものはサッカー、サッカーさえあれば何もいらないそれほど大好き。
この前、家の中で、サッカーボールを蹴っていたら、「外でしなさいっ」てお母さんに怒られちゃった。だって、今度の日曜日、地元クラブチームの試合だから、ボールを蹴ってなくちゃ、不安で仕方なかったんだ。
苦手なものは、算数と生たまごと、そして女の子。
算数は九九が大の苦手、そして、女の子は、オレ、女の子の前に立つとどうしてもきんちょうしてしまうんだ。分かんないけれど。
おかあさんに相談すると、クスクス笑って、だいじょうぶ、だいじょうぶ。
としか言わないんだ。なにがだいじょうぶか、オレには分かんない。
小学校も高学年になると、何かクラブに入らなくてはいけない決まりらしいんだ。
運動部【ソフトボール部、陸上部、サッカー部】と文化部【音楽部、図書部、理科部、園芸部】があるんだ。
でも、決まった人数しか入部することが出来なくて、サッカー部は大人気で、あっという間に、定員の人数になってしまって、クラスの担任の先生に「後藤君は地元チームに所属しているから、他の人に譲ってくれないかな?」って頼まれて。
頼まれたら嫌と言えないオレはしかたなく、人気のない文化部の園芸部にはいることになったんだ。
エンゲーブって何だろうと思っていたら、花や、植物を植えて育てるらしいんだ、植物って、たねをまいて、水をあげたら育つんじゃないのかな。なんで、それだけなのに園芸部ってあるのかな。「うーん、なんでだろ。」って疑問。
いよいよ部活動開始!って日に、部員の自己紹介のために会議室にオレと、あまりしゃべったことのない、クラスの女子。
そして、隣のクラスの女子が二人、そして、今年から、顧問の先生になったという、女性の国語の先生とが集まったんだ。そしてそれぞれ、自己紹介をすることになったんだ。
オレ、キンチョウ、超キンチョウして、後藤コージ、って自分の名まえを言って、今10才って言ったまま、何も言えなかった。
顔が、真っ赤になってしまったから。
だって、女の子が俺を見てるから、キンチョウして。
超キンチョウして体の動きが、自己紹介する時もカクカクしてしまって、席に着いくまでカクカクしてた。
席に着いてから、入部した、三人の女子の自己紹介を聞いたんだ。
一人目は、松根さん、っていってた、ピアノとバイオリンが好きで、よく音楽家のお父さんに教えてもらっているって、好きなものはパンと音楽、嫌いなものは男子と毛虫。男子といったところで、ちらっとオレの方を見て、毛虫っていった。なんだか、オレのことかなとおもって、なんだか、複雑。今日会ったばかりなのに。
二人目は、宮竹さん、大好きな、ひいおばあちゃんに教えてもらっている、編み物が好きで、虫が苦手って言ってた。
三人目は、百合川さん、ダンスが大好きで、ダンススクールに通ってて、将来はダンスバトルで優勝を取りまくること、っていってた。すごいと思った。
その他、色々聞いたけど、女子の自己紹介はほとんどおぼえていなかった。
先生の自己紹介は。桃田先生。モモちゃん先生ってみんなに呼ばれている。独身で、先生になって2年目、近くの町に住んでいて、植物の事は全然わからない、分からないから、みんなでガンバロー、って言っていた。なんだか、親戚のお姉さんって感じ。
さっそく部活動しよう、ってことになって。
体育館裏の花壇にいくことになった。
校舎と校舎の間のスペースにブロック、レンガ、大きさの不揃いの植木鉢、プラスチックでできたプランターが、重ねて土とか、枯葉とかでうずもれていた。
校舎の間を抜けると、体育館裏になってて広い花壇が、あれ、全然花なんか咲いてないや。
なんだか、雑草がいっぱい生えてて、花壇の地面が見えないくらい。
こんなところでどうやって、花を植えるんだろうと思ってフト空を見上げると。
何かキラキラした物が何回か空を行き来している。
目を凝らしてみても、何だか分からない。
でもそれが、後々僕たちにとんでもない事を引き起こすことになるんだ。
目を通していただき、ありがとうございます。少しテイストの違ったものを書いてみました。小さい頃の時間が永遠だった頃を思い浮かべながら書いてみました。




