學校と公苑と 6
光る鍵で、キーリングの、鍵の輪っかの中の一つの鍵で、物置の鍵を開けた。
物置の奥に微かな光が見えた、僕は恐る恐る物置の中に入ろうとしたら、モモちゃん先生が僕の手を掴み、『入るのは止めておきましょう。』といって引き留めた。
でも僕は、決してその先は危なくない、と今でも考えると不思議だけど、なぜかそう思った。
僕は、『大丈夫。きっと。』
と言ってズンズン奥に進んで行った。
その後ろには、女子3人組と佐保姫、龍田姫と続いた。
物置の奥に進むにつれ、周りは不思議と明るくなりそして、外に出た。
『え?』
確か物置の奥に進んだはずなのにと思っていると。
鍬とシャベルを持ったおじさんが、こっちを見て驚いていた、そして『おやおや、見学の人達かな、危ないからあまり近付いてはダメだよ。』
と言いながら、僕たちをジロジロ珍しそうなものを見る目で、見ていた。
驚いたことに、その出で立ちは、佐保姫が僕のパソコンで調べものをしていた時の画像そのままだった。
まさかと思って、僕はおじさんに尋ねた。『今は何年ですか』と。
いまさら、なにを聞くのかといった風に答えてくれた『二十年前に西南戦争が終わったから今は、明治30年だよ。』そして続けて、
『そんなことより、それに、君たちのその格好は、何かね、新しく都になった東京はみな、そんな格好かね。』
シャベルを杖の等にして、一休みしながら、言った。
その、おじさんの服もなんだか着物ではないけれど洋服でもない、しかも草履、足袋を履いている、頭に手拭を絞って頭に鉢巻の様に巻いている。
僕たちは明治30年、あのパソコンの写真、画像そのものの時代に来てしまった、あの光る鍵の所為なんだろうか。タイムリープしてしまったようだ。
驚きが落ち着く間もなく、松根さんが『あのパソコンで見た、画像の風景みたい』と言って、あるところを指さした。
そう言えば、ここは何か建物を建てているような、工事現場のようなところだ。
そこには建物の骨組みみたいなものに、人が上っていて作業をしている風だった。
それを見た、おじさんは、『新しい、国が出来て、学校と言うものが、日本各地にできて。
やっとこの我賀田郷にも学校と言うものが出来るのさ。』そして誇らしげに『しかも、一里先に蝶乃池のほとりに大型の官営公園が出来る、我々もいよいよ近代国家の仲間入りだと、郷のみんなは張り切って手伝いを買って出ている』
僕は、
『じゃあ、ここは昔の我賀田小学校。』
『そうだよ、我賀田尋常小学校が来年の完成に向けてみんな頑張っているんだ。』
そして作業に戻る前に振り返って言った。
『君たちのような未来を創る子供たちのために我々は、
我々大人は、どんな苦労も厭わない、それは時代が変化しても、変わらない。
変わることは無い。
と、おじさんは思っている、ここに集い、一杯勉強して、遊んで、思い出も一杯つくって欲しい。そう思っている。』そう言って、作業に戻って行った。
それを見送る様に、
見ながらモモちゃん先生は『確かに江戸時代は、寺子屋のような町民の手習いや、藩校など、武士たち専門の学ぶ所はあったけれど、皆が等しく学べるところは、ほとんどなかったらしいわ。そして、人々が皆が等しく憩う公園も同じだと。』
暫くすると、責任者らしい人がやって来て言った。
『君たちが、さっき作業員から聞いた見学の人たちかね、』そして、
『今日は定礎式の準備のため、偉い人の和歌を刻んで記念に埋める準備をしてる。見てみるかい?』
責任者らしい人に案内されて礎石と言うものを見せてもらった。
建物を建てる時に礎として、埋める物らしい。
その石には。
『真砂なす 数なき星の 其の中に 吾に向かひて 光る星あり』と刻まれていてそれを見たモモちゃん先生は『正岡子規ね』と言うと、
責任者のおじさんが、
『有名な先生じゃ、残念な事にお亡くなりになったが。』
意味は確か、
『砂の様に無数に散らばっている星の中から私に向かって光る星がある』
『希望一杯の和歌なので、この学校の校長になる予定の人が是非刻んで欲しいと希望があったらしい』と続けて言った。
見終わった後、
『この時代に、蝶乃池公園も同時期に作っていたんだ。』
と百合川さん。
『それに、たくさんの人の思いで、できているなんて。』
と宮竹さん。
モモちゃん先生は思い出したように、
もう一つ正岡子規の和歌で印象的な和歌があるわ、佐保姫の事を詠っているの
『佐保神の 別れかなしも 来ん春に ふたたび逢はん われならなくに』って。
意味は、
『今年の春(佐保姫)との別れは悲しい事だ、また巡ってくるであろう来年の春に再び会える身ではないのに』
と。
すると、キーリング、鍵の輪っかが光り出した。
僕は、もしかすると、現代の佐保姫と、今詠った佐保姫の和歌と共鳴したんじゃないかと思い、鍵をもう一度出てきた物置の錠に差し入れ回した。
そうすると、予想通り、開いた物置は真っ暗なだったけれど、物置の奥は来た時と同じ様に、うっすらと光が差していた。
『これで戻れる』
と思い、みんなの手を引っ張って物置の中に入った。
物置に入る時、今まで色々教えてくれたおじさんにお礼を言って物置に入った。
『きっと、君たちの時代はとっても豊かで、とっても優しい人ばかりで、争いのない世界なんだろう、うらやましい。でも、思いを紡ぐ事を忘れないで欲しい。きっと君たちの思いを紡ぐ人のために。』
そう言って僕たちを見送ってくれた。
拙作を引き続き目を通していただいて下さり。誠にありがとうございます。




