學校と公苑と 5
僕は、鍵の事より先に、この学校に残っている人がいないか気になっていた。
もし、学校から出れなくなって残っている人がいるなら大変だ。
校内を探して、学校から出してあげないと、と思って。
モモちゃん先生や佐保姫、龍田姫に、こう言ったんだ、
『まだ、学校の中に残っている人が居れば、学校から出してあげなきゃ。』
『そうね、そちらが先ね、』
先生と松根さん、佐保姫、桜の精が一組となって。
僕と百合川さん、宮竹さん龍田姫と梅の精の二組に分かれて、校舎の中を残っている人がいないか探すことにした。
低学年の階に行くと、ある教室の片隅で数人の男の子と女の子が固まっていた。
良かった無事だった。
その中には、松根さんの弟君が残っていた。
僕を見ると。
『ゴートゥー君、』と言って走り寄ってきた。
弟君が言うには、今日はたまたま学校のプール開放日だったから、友達と一緒に来たらしい。
今日はもう帰ろうとしたところ、学校から出れなくなってしまっていらしい。
どうしようかと、不安で泣きそうになっていて。
その時僕たちが入ってきたから、安心したと言ってくれた。
見ると、安心のあまり一緒に来ていた女の子たちは泣き出していた。
『大丈夫、じゃあ、ここから出よう』
僕はそう言って、正門の方は、大人たちが一杯いて、少し怖かったから裏門の方に連れて行った。
龍田姫や梅の精は弟君たちには見えていない、龍田姫と僕たちは手を繋ぎ、僕は弟君の手を握った。
裏門を潜った瞬間、外で、待機している逢佐古コーチを含め、たくさんの大人たちが駆け寄ってきた。
何か、聞きたいようだったけどすぐに、
弟君たちを、その場に残して、また裏門の中に入った。
今度は、季節の鍵を探しに。
『ごめんなさい。』
龍田姫は、鍵の、キーリングが保管されている職員室に向かう途中の廊下で言った。
僕は、大人の人に謝られるのが初めてだから少し戸惑っていた。
『あんな、小さい子達を不安にさせてしまった。』
その瞳は、最初に会った時の、澄んだ青い瞳が暗く沈んでいるように見えた。
百合川さんの方を向いて、
『そなたの、ダンス大会とやらも中止にさせてしまった、』
うつむいたまま
『本当に済まない事をした。』
百合川さんは
『大丈夫、気にしないで、どうせ、あの時は調子が出ていなかったから丁度良かった、』
ニッコリ笑って
『そんなことより、お姉さん、佐保姫と仲直りして。』
と、龍田姫の手を握った。
握られた彼女は少し、はにかんだ、笑顔を見せてくれた。
職員室の前にはもう、佐保姫一行が先についていた。
他の先生を含め、児童が何人か、やはりプール開放日の事もあって、学校に閉じ込められたそう。
正門前は、警察や、消防、TV局の人達、保護者も含めがごった返していたらしい、そんなことを言っていた。
『この、鍵の輪っか、キーリング、ね。』
職員室の中に鍵の保管庫、キーボックスがあった。
鍵の輪っかを、キーリングを取りだしモモちゃん先生は言った。
『この鍵を、どうするの』
宮竹さんは、佐保姫に尋ねた。
『この鍵を、』と。
佐保姫は其のリングを持ちながら言うと、龍田姫もそのキーリングの片方を持った。
丁度佐保姫と、龍田姫の間にキーリングがある形になった。
暫くすると、鍵が光り出し、僕が、最初に見た、空から落ちてきたあの光る鍵になった。
『さあ、これで物置と、正門、裏門の錠を開ければ元通りになるはず。』
と龍田姫は、少しうれしそうに言った。
『お姉様、ごめんなさい、少し困らせるつもりが、こんな大事件になるなんて。』体育館の裏、園芸部の物置前に来て、もう一度龍田姫は佐保姫に謝っていた。
『わらわの事はどうでもいいのじゃ、ここにいる、人間たちに謝るが筋と言うものじゃ。』
そう促されて、龍田姫は、頭を下げながら、
『ご迷惑をおかけしてごめんなさい、許していただけますか?』
と。
『これからも、僕たちと仲良くしてくれるなら。』
と、僕を含めみんな、二ッと笑った。
僕は渡されたキーリングで、光る鍵で、物置の錠を最初のあの時の様に開けた。
あの時の、開けた時の音が鳴らなかったのが気になったけど。
暫く経っても何も起こらなかった。
みるみる、龍田姫の顔色が悪くなってきて、何か呟いていた。
『そんな!なぜ元通りにならないの。』
佐保姫は、
『何かの手違い、ではないのかえ。』
と不安がる彼女に言葉を掛けた。
モモちゃん先生、と百合川さんや松根さん宮竹さんは手を取り合って、不安そうに佐保姫と龍田姫を見ていた。
僕は、
季節の鍵で、元に戻るはずが、元通りにならない。
そんな状態の、開いた物置の奥は、いつもより増して、真っ暗だった。
その奥をジッと見ていた。
拙作に目を通して下さり、誠にありがとうございます。数ある物語の中で、この物語にお時間を頂戴いたしましたこと、心より感謝いたします。




