學校と公苑と 4
その不思議な現象は、僕自身が体験しても最初は信じることが出来なかった。
学校の入り口、正門から入っても裏門に出てしまう、入ることはできなくなっている。
それは、まるで裏門と正門が直接くっついているって感じだった。
学校の正門から一歩入ると外の景色が一瞬で変わり裏門の景色となって、やっぱり学校の中に入ることが出来ない。
正門で、さっきの人だかりが出来ていたけれど、この不思議な現象で、みんなどうしてらいいのか分からない状態だった。
だから、正門に人がいっぱいいたんだ。
正門にいた人達が試しに学校内に入ろうとしても裏門に飛ばされてしまう、学校の中がどうなっているのか分からない状態。
そんな時桜の精と梅の精は、僕たちを見ると駆け寄って来て、佐保姫に龍田姫が乱心してこの状態を作ったと、告げた。
佐保姫は、
『龍田姫はこの中にいるのかえ。』
と聞くと二人はコクコクと頭を縦に振った。
『じゃあ、向かおうぞ、』
僕は、学校の中に入ろうとする佐保姫を呼び止め、
『僕たちも、連れて行って』
とモモちゃん先生も
『学校が、どうなっているか、私も行きます』
佐保姫は、みんなの目をジッと見て、
『こうなったのも、わらわのせいかもしれぬ、ぬしたちを連れていくわけには、』
そこまで言うと、
『分かりました、では龍田姫を呼びましょう。』
と、モモちゃん先生は言い、一首詠んだ。
『※龍田姫 たむくる神の あればこそ 秋の木の葉の ぬさと散るらめ』
※ 龍田姫に手向ける神が居るから、秋の木の葉が幣『神へのお供え物』の様に散るのだろう
すると、白い影が、まるで、佐保姫が僕たちと最初に出会った、その時と同じように白い影が集まり、それが人型となって、それは、それは、美しい女性が現れた。
和歌に込められた、呪文に似た詠んだ人の想いの力だ。
その力が、
『龍田姫。』
そう佐保姫は呟いた、
龍田姫を呼び寄せた。
『こんなことをしたのはぬしかえ?』
続けて言った。
暫くジッとその引き込まれそうな、澄んだ青い目で僕たちを見ていた龍田姫は、踵を返し、学校の奥へと行こうとした。
『待ちやれ、龍田姫。』
と学校の中に入ろうとした、佐保姫の手をモモちゃん先生は、掴んだ。それを見て僕は反対側の手を掴んだ、すると、僕の服を引っ張る人がいた、振り返ると松根さんと百合川さん、そして、宮竹さん三人が僕を掴んで引っ張っていた、
みんな繋がった状態でアッと思う間に、学校の中に入ることが出来た。
佐保姫の力なのだろうか。
それとも。
学校の中は特に変わったところは無く、やけに静かな印象だった。
桜の精と梅の精は、龍田姫が学校の奥へと消えた方を、探しに行っているようだった。
僕たちも、その龍田姫の後をついていった。
体育館の裏、僕たちの園芸部の花壇まで来ると、
花壇の、傍で佇んでいる龍田姫が居た。
『龍田姫、主がこのような事をしたのかえ、』
と、佇んでいる龍田姫に投げかけた。
『お姉様、佐保姫ばっかり』
と、その顔は怒りと、言うより、まるで、拗ねているといった風だった。
『お姉様ばっかり、みんなと仲良くして、とっても楽しそう。』
僕は、モモちゃん先生や女子三人組と目を合わせていた。
『何を言っているのか分からぬ、何を怒っているのか、そんなことよりこんな状況にしたのはお主かえ、答えよ』
と、少し語気を強めて佐保姫は質問した。
龍田姫は。
『春先からずっと、お姉様ばっかり呼ばれて、その子たちと楽しそうにしているのが、うらやましかったの。』
『それは、たまたま偶然に私が、和歌を詠んだから、佐保姫が現れてくれただけで。
龍田姫を決して、仲間外れにした訳ではないの。』
先生は、佐保姫がみんなの前に現れた時の事を、龍田姫に説明した。
僕も、
『龍田姫は、秋を司る女神って聞いていたから、秋になればきっと会えると思っていたから、仲間外れとかなんじゃない。』と言った。
それでも、じっと、秋空のさわやかな、澄み切った青い空のような、その青い澄んだ目で、僕たちを見て、暫くすると。
『鍵』
と一言。
『鍵って、何』
宮竹さんが聞くと。
『そこの、ボクが光る鍵を見つけたでしょう、その鍵。』
ボク、と言われて僕と分かるまで、少し戸惑ったけれど、あの時空から落ちてきた光る鍵の事と分かるまでそんなに時間はかからなかった。
『その季節の鍵で、この結界は解除できる。』
僕は、
『あれは、物置の鍵だけじゃなかったんだ』
『そう、この花壇の四季折々の花々を咲かせるための道具を収納しているところ。すなわち四季の準備のための鍵。』
と龍田姫。
あの鍵は、鍵の輪っかに差し込んで、キーボックスの中に仕舞っているはず。
『じゃあ、その鍵で元に戻してくれるの?』
と僕は龍田姫に聞いた。
『そうね、仲間外れにしていない証拠も兼ねて取ってきてくれたら、元に戻すわ。』
と悪戯っぽく笑ったのが印象的だった。
拙作にお付き合い下さり、誠にありがとうございます。お時間に見合うだけの物語を、私は綴っておりますでしょうか。何卒よろしくお付き合いくださいませ。




