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學校と公苑と 3

 モモちゃん先生は、シートベルトを装着して、指先のない革の手袋を装着した。

 こんな手袋F1の動画でしか見た事が無い、実物は初めて見る。

 すると、

『シートベルトつけた?いくよ!』

 と大きな声で、格好よくモモちゃん先生は言った。


 それとは別に後ろの席ではクスクスと笑いながら、女子三人組が相変わらず、『コーちゃん』って、意味も無く僕の名を呼ぶ。

 女の子って、なにがそんなに可笑しいのか分かんない事で、笑っている、でも僕は何だかバカにされたような感じがして何だかモユモユしている。

 モユモユってモヤモヤの上の感じの事、ぼくが勝手に作った言葉。

【ヤ】の次が【ヨ】だから。


 ぼくは何だかずっと恥ずかしくて、モユモユしているから何か話をしなきゃ、と思ってモモちゃん先生に話しかけた。

『学校が休校になったってどういう事なんですか。』

 タイヤが横滑りしてキュキュキュとすごい音がすると、急カーブを曲がった。


 その度に。


 僕たちは車の中で右に左に、シャッフルされたみたいに車の座席で激しく揺れていた。

 佐保姫(さほひめ)は女子の後ろの荷物置き辺りでフワフワ浮いている。

『わらわの時代は、牛車で移動していて、雅なものだが。

 こんな、激しい乗り物は、はじめてじゃ。』

 と、扇をひろげ、口元にあてながら言った。


 僕たち四人と佐保姫(さほひめ)を乗せた車は、モモちゃん先生の激しい運転で学校に向かった。


 モモちゃん先生は僕の質問に答えた。

『どうやら、学校に入ることも、出ることも、出来なくなったってことくらいしか連絡が無いの、』

 カーブを曲がって、右に体が動いて。


『以前から、不思議な事がたくさん起こっていて思うのは、

 佐保姫が言ってたとおり、この学校と公園はある意味繋がっていると思う、

 さっきの画像、写真見たでしょう、多分あれがヒントだと思う。』

 カーブをまた曲がって。


 『明治初期、ほぼ同時期に、学校と公園は新たな時代へと、国が変わりつつあった、学ぶことや、憩いといったことが等しく平等に、国民のものになった』と言ったかと思うと、また急にハンドルを切った。


『あの写真の笑顔は、みんな平等に学ぶことが出来る、そんな喜びのあらわれかもしれない。』


 佐保姫はその言葉を繋いで。

『その喜びと共に、何年もかけて、いろんな人が、一人が六年という学校生活の中で、遠足や、修学旅行の嬉しい事、仲良しの友達と喧嘩をしてしまった悲しい事、テストの点が悪かったり、運動会や、球技大会で負けて時の悔しい事、その他にたくさんの色んな思い出を、何千人何万人と学校に積み重ねていった。』


 佐保姫は、近付いて来る学校に目を向けて。

『そして長い間年月を掛けて、その思いが折り重なり学校そのものがパワースポットとなっていった。』

 と続けた。



 学校に近付くと、なんだかパトカー、や救急車、空にはヘリコプターや、マイクや、カメラを持った人が校門の前に、人だかりが出来ていた。

『ここじゃ駄目ね。』

 と言って、モモちゃん先生は車を裏門の方に走らせた。


 宮竹さんがネットを見ながら、

『みて、このニュース。』

 そう言って、見せてくれたのは、検索した新聞社や、全国ネットのテレビのニュースだった。

 そこには日本全国のあちこちで、公園や、学校に異変が発生している事だった。

 それはモモちゃん先生が言っていた通り、学校や公園に入ることや、出ることが出来なくなってしまったニュースだった。


 車を停めると、逢佐古(おうさこ)コーチがいた。

 僕たちが車から降りてきた事に気が付いて、

『学校が、大変な事になったと聞いたから、慌てて見に来たんだが。

 君たち桃田さん、いや桃田先生の車に乗ってきたの?大丈夫だった?彼女とっても車の運転すると、人格変わるから。』


 と、言ったところで、モモちゃん先生は。

『シー、黙ってて。そんなことないわよ、ねー。』

 と、同意を求められた。

 でも、僕たち四人と佐保姫は顔を見合わせて、車の中で転がっていたことを思いだし、何て言おうか迷っていた。



『あ、桜の精と梅の精。』

 と、モモちゃん先生は誤魔化すように、校庭の方を指さした。

 確かに、桜の精と、梅の精が校庭を右往左往慌てているようだった。

 そして、僕たちに気が付くと近く、傍までやって来て言った。

 当然、先生、佐保姫、園芸部の僕たち四人以外は見えない。


佐保姫(さほひめ)様、大変です。龍田姫(たつたひめ)様が。』

 確か、龍田姫(たつたひめ)と言ったら、秋を司る女神。

 佐保姫(さほひめ)が以前言っていた。

 和歌にもよく詠われている女神。

 でもまだ、秋には早いはず。


 そこまで言うと、一呼吸置いて。

『ご乱心なされました。』

『えっ。』

 一番声を上げたのは佐保姫(さほひめ)だった。



拙作に目を通していただき誠にありがとうございます。

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