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クラスメイト 02

「あははっは、あんなモンスターなんて余裕だったよ。あんな弱いのと戦ってたらこっちまで弱くなっちまう。」


「そうなんですか?!流石勇者様です。私モンスターなんて怖いですわ。勇者様?モンスターが出たら守って下さりますか?」


「当たり前だ!!この剣を見てみろ。国で一番の剣で国宝だったらしいが勇者に相応しいと王様が俺にくれたんだ。俺とこの剣が有ればどんなモンスターだって倒してみせるさ。」


 庇護欲を誘うような容姿に演技。若い勇者には分からない。それが本心では無くただ客の承認欲求を満たし金を引き出す為の物である事を。


 剣も名剣ではあるが国宝などではない。そういえば勇者の自尊心を満たし大人達が手のひらで転がし易くなるからだという事を。


「カッコいいです勇者様!!」


「ショウでいいって言っただろ?」


 そう言って女性の腰に手を伸ばし引き寄せる。


「私もショウ様に守って欲しいな。」


「ハッハッハ、もちろんだともこっちに来い」


 女性を左右に侍らせ気分良さげに酒を飲む。召喚前ではあり得ない待遇。誰にも、酒を飲んでいても咎められない状況に酔っていた。


 もう常連になった娼館。女性を抱いたのも1度や2度では無い。ここの支払いは国が持つので後先を考えた事も無い。


 罠だった。勇者に接点を持ちたい貴族の誘い。最初は大人の綺麗な女性に緊張して、初めてのお酒に酔い。ただの接待だった。


 いつしか女性に慣れて緊張が解れ酒の味も多少わかり始めてからは誘われれば必ず、誘われて仕方ないといった風を装ってついて行った。


 頻度の高さに国王は呆れつつも容認した。訓練をサボるでも無い勇者に、魔王討伐をさせるためには必要かと。


 訓練の段階が上がり初めてモンスター、生物との命のやり取りを経験した時に勇者は塞ぎ込んでしまった。新兵も似たような事があるため解決法は分かる。娼館を手配し女性を当てがった。


 初めて女性を抱いた勇者はその行為に耽っていった。周りも気がついていた。勇者だといっても扱い易い若者だと。


 後は転がるだけだった。勇者を褒め称える大人は皆勇者の後ろを見ていた。金と名誉を。

 いつしか勇者は増長していった。


「それで2人とも考えてくれたか?」


「愛人の件なら了承しましたよ」


「支配人にも伝えて了解が出ています。」


「そうか!!ありがとう。魔王討伐後は姫と結婚するんだが正妻は姫に決定している。第二夫人以降も貴族の令嬢に声をかけているから愛人になってしまうのは許してくれ。だが姫と結婚すれば王族の一員だ。今の王太子は不甲斐ないからもしかしたら王になるかもしれない。期待してくれ。」


「「はい!!」」


 ありもしない勇者の夢物語を聴きながら心の中では引き際しか考えていない女性に気がつかない。


 勇者は気がついた。この国が魔王討伐にこだわっているのに。魔王討伐を盾にすれば大体の欲求が通る事に。


 国は気がついた。増長させ過ぎた。そして勇者が弱いと。


 そんな勇者を観察する人間に勇者は気がつかない。


 *     *     *     *


「あれは酷いな。」


「ええ、だから無駄と言ったでしょ?」


 一組の男女は客と娼婦を装い勇者を観察していた。


「それで他はどうだったの?」


「あまり変わらないな。戦いを拒絶して奴隷紋を刻まれていた者も居たな。集団召喚は失敗だ。」


「奴隷紋ね。可哀想に。」


「問題は教会だ。聖地に潜入した者からは勇者が発見出来なかったと報告を受けている。」


 教会は国を持たないが聖地と呼ばれる地を実効支配しどの国にも属さない中立の自治区と

 称している。


「聖地に居ないなら何処を探せばいいか分からないから厄介ね。」


 教会は国の政治に関わらないからと言い、多くの国に支部を持ち布教活動をしている。

 もっとも教会が政治に関わらなくても国民が教徒になれば国が無視出来なくなる。


 それを狙っての魔王討伐だろうと各国は気づき主導権を争ったが・・


「召喚勇者を抱えてるのは確実だが主導に関しての沈黙が怪し過ぎる。」


「教会の勇者も微妙だったからとかは?」


「かもしれんが何か手段があると見た方がいいだろう。」


「魔王や魔族の偵察もまだ進んでいないのよね?」


「ああ全くな。しかしエルフから興味深い話が出て来た。」


「エルフ?珍しいわね。魔王討伐に関わらないんじゃないの?」


「そのスタンスは変わっていないが、教会が魔族と呼んでいる存在に心当たりがあるそうだ。里で聞いたらしい。

 その里は元々北の魔獣域の近くにあったらしいんだがモンスターの襲撃に負け南下を余儀なくされたらしい。

 魔獣域の周りには多種族が住んでいて、そのなかに闇属性魔法を得意にする種族がいて魔族と呼ばれているのはその種族の事かも、と。」


「闇属性なら教会も放置出来ないわよね。」


「教皇がどう思ってるか知らんが教会は光属性を至上と触れ回っているからな。放置したら教徒が騒ぐ。」


「それでなんて種族なの?」


「そのエルフは知らないらしい。里の長なら知ってるらしいがエルフの里には近寄れんから不明だ。」


「そう。でも魔獣域の近くに住んでいた種族ならあの勇者じゃ絶対無理よ。相手にならないわ。」

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