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31話

「あははははは!あんたの無駄に整った顔面を見ても、あの子は何とも思わなかったんだ!うん、まあそうだろうとは思っていたけどね!」

「親友に向かって酷い言いようだな」


 苦しそうに笑い転げるリーラを見て、レイザックが盛大に顔を(しか)める。


「とにかく、彼女はあんたが警戒しなくちゃいけないような子じゃないし、あたしの大切な恩人なんだから、いくら女嫌いだからって絶対に邪険にしないでよ?そんな事をしたら、大変な事になるんだからね?絶対に後悔する事になるからね?わかった?」


 笑いをおさめたリーラが、いつになく真剣な顔で何度も釘を刺してくる。そんな彼女を見て、レイザックは意外そうな顔をした。


(こいつが他人に対して、ここまで心を砕くのは珍しいな)


 レイザックの記憶に残るアイカは、表情に乏しく特に印象に残る事のない地味な容姿の少女だった。正直なところ、彼女が魔導士試験を首席合格していて、自分の命を救ってくれた人物であるとは今でも信じがたい。


 それなのに、何故リーラはここまで彼女を気にかけるのか。


(まあ、平民なのに所作が美しかった事と、貴族に対する礼儀作法が完璧だった事に関しては、普段からの努力が垣間見えるようでとても好感が持てたが)


 他に記憶に残った事といえば、普段は人に興味を持たないキールが、彼女を見た途端にソワソワし出した事だったが、それは彼女が精霊に好かれやすい人物だったせいだと、今ではわかっている。


「お前がアイカ嬢に対して特別な思い入れがあるという事はよくわかった。彼女がどんな人柄なのかはともかくとして、少なくとも命を狙われるほど恨みを買うような人物でない事は、俺も認める」

「あんたなんかに認めてもらわなくても、優しさのかたまりのようなこの子が人から恨みを買うなんて事はありえないわよ!今回みたいに彼女に危害を加えようとする愚かな輩や、彼女を悪女扱いするような馬鹿が存在している事自体に、あたしは驚いているんだから!」

「お前がそんなに怒るなんて珍しいな」


 語気を荒げる彼女にレイザックが驚いていたその時、学院長室の扉が開いた。


「叔父様!やけに早かったわね」

「うむ‥‥‥」


 部屋の中に迎え入れたモルドの表情が曇っているのを見て、リーラが眉をひそめる。


「何かあったの?」

「どうも一足遅かったようじゃ」


 モルドは厳しい顔でそう言うと、襲撃犯の元に行った際、何が起こったのかを説明した。


「わしがお前の研究室に行った時には、もう既に奴ら全員が廃人状態になっておった。おそらく契約魔法以外にも、いつでも口封じできるように魔法が仕込まれていたのじゃろう」

「それなら、精神系の魔法で直接記憶を覗くのはどう?もし奴らが見ていた場所や仲間の記憶が少しでも残っていれば、手掛かりになるかもよ?」

「いや、それも試すだけ無駄じゃろう。哀れな事だが、奴らはあらかじめ仕込まれていた魔法で精神を破壊されただけでなく、禁忌魔法を使った代償で恐ろしい勢いで老化が進んでおった。あれでは肉体はもちろんの事、脳も同様に使い物にならなくなっておるじゃろう。それに、下手に手を出そうとすればこちらまで呪いの浸食を受けかねん」


 そう言うと、モルドは襲撃犯たちが精霊の呪いによって代償を支払わされている光景を思い出したのか、恐ろしさで身震いした。


『禁忌魔法を使用したものは誰であろうと、間違いなく代償を支払う事になる。代償の取り立てを邪魔する者も精霊の呪いから標的にされる。だから、手を出さなかったおぬしの判断は正しい』


 モルドにそう語るシルカの瞳には、怒りと冷徹さとが入り混じっている。


お読みいただきありがとうございます!

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