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子猫になった気弱魔導士は猫嫌いの氷の宰相に愛される  作者: はんぺん


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21話

(この階は学院長室の他には、稀少な魔石や魔道具の保管室と、大魔導士の称号を持つ先生方の研究室しかないわ。学院長がいるとしたら学院長室か保管室のどちらかのはず)


 ふらつく体を支えるように壁に手を付きながら進んでいると、さっき入った扉の外から、複数人の男の声と階段を上ってくる足音が聞こえて来た。


『あいつら、さっきの女と同じ。なんだかとても嫌な感じがするー!』

『気をつけてー!』


 警告する精霊たちの声が緊張をはらんでいる。


(まさか、聖女の仲間が追って来たの?でも、この最上階には専用の許可証がなければ入れないはず)


 アイカが壁にもたれて思案していると、不意に目の前の研究室の扉が開いた。


「きゃっ!」

「おっと失礼!許してちょうだい。まさか外に人がいるとは思わなかったのよ」


 彼女の前に現れたのは、琥珀色の瞳を持ち、燃えるような赤髪を腰まで伸ばした、気の強そうな美しい女性魔導士だった。


「‥‥‥リーラさん?ああ、まさかこんな所で出会えるなんて!あの、私の事を覚えていらっしゃいますか?」


 彼女を見た途端、アイカは思わず喜びで声を弾ませた。名を呼ばれた女性は、不思議そうな顔をしながら首を傾げている。


「ん?誰?随分と若いけど、そのローブを着ているって事は学院の魔導士よね?そっちはあたしを知っているみたいだけど、悪いけどあたしのほうは見覚えが無――ん?んん?‥‥‥え、ちょ、ちょっと待って?どうしてあなたがこんなところに?!」


 相手が誰なのか、ようやく気が付いたリーラが動揺する一方で、思いがけず頼もしい味方に出会えたアイカは、安堵の息を吐いていた。


 彼女がリーラと出会ったのはたったの一度きり、しかも七年も前の事だったが、どうやら思い出してもらえたようだ。


 リーラこと、大魔導士リーラ・バーザンディは、アイカが生まれて初めて出会った魔導士であり、エーベル王国に五人しかいない大魔導士の称号を持っている。


 契約精霊は光と火、二柱の上位精霊だが、特に炎魔法を得意とする事から炎熱の魔女という異名を持つ彼女は、一人で騎士百人分の戦力になると言われていた。


 普段は地方で魔物討伐部隊を指揮するリーラは、領兵だけでは対応できないような凶悪な魔物が出るたびにその力を存分に振るっている。


 そのため王都を不在にしている事が多く、学院にある彼女専用の研究室が使われる事は滅多に無い。たまたま休暇で王都に戻っていた彼女と出会えたのは、まさに奇跡だった。


「まさかこんな所で会うなんて驚いたわ‥‥‥。でも、何だか酷い顔色をしているわね。一体どうしたの?」

「それが、実は――」


 だが、説明しようとしたアイカの声は、二人の前に現れた見知らぬ男たちの声で遮られた。


「おい、ここにいたぞ!」

「まて、他にも人がいるぞ。どうする?」

「構うな、たったの二人だ。とにかく急いで始末するんだ」


 魔導士のローブを着て覆面で顔を隠した三人の男たちは、やはりアイカを追って来た者たちのようだ。


「あんたたち、一体誰よ?今、この子を始末するって言った?もしかして死にたいの?」


 リーラは一斉に杖を向けてきた男たちに怒気のこもった声を浴びせると、アイカをかばって前に出た。


「おい、あの女、まさか!」

「炎熱の魔女?ニューライド領で魔物討伐してるはずじゃなかったのか?!」


 目の前にいる人物が一体誰なのか、ようやく気付いた男たちがにわかに動揺する。


「今ごろ気づいたって遅いわよ」


 リーラが短く精霊言語で呼びかけると、たちまち炎で出来た巨大な腕が現れ、彼らを思いきり薙ぎ払う。


「うわっ!」

「ぎゃっ!」

「ぐっ!」


 防御する間もなく壁に叩きつけられ、無様に床に倒れこんだ男たちを、怒った目をしたリーラが見下ろした。


「さて。なんでこの子の命を狙ったのか、ゆっくり聞かせてもらおうかしら」

「くそっ、ばけものめ‥‥‥!」


 一人だけかろうじて意識を保っていた男は、憎々し気にそう呟くと、ローブから宝石のような石を取り出した。それを見たリーラは、(いぶか)し気に目を細めた。


「ん?何よそれ?‥‥‥魔石?それにしては随分と大きな――」

『あいか、あれは危険。あいかの友達、危ない』

「え?」


 酷く焦って光の精霊が警告してきたのと、男が魔力を込め終えた魔石が強い光を発したのは、ほぼ同時だった。


「本物の化け物になりやがれっ!」

「なっ?!」

「リーラさん!危ない!」


 咄嗟にリーラの体を突き飛ばした次の瞬間、魔石から一直線に放たれた光がアイカの体を刺し貫いた。


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