二人?でデート
そして、彼女とのお出掛けの日は決まった。
大学の終わりの時間が同じ日に、一緒に出かけることになり、学校を出た。
「今日は、ネコちゃんはおうちなの?」
「うん。普段も大学とバイトの間は、家で独りなんだよね」
な、なんだろう、その発言は…帰りにうちに寄っていきたいみたいなことなんだろうか。まさかね。
二人でデートとか久しぶりだなと思っていたのに、気づけば俺の左隣にはアパートの真っ黒い奴がそこに並んでいた。
「(なんで、いるんだよっ)」
『(ついて来るな…とは、聞いていなかったなぁ)』
しれっと俺の隣を高身長なやつが無愛想に並走していた。
彼は、読心術でもできるのか俺の言いたいことが分かるらしい。そして、彼の言いたいことは頭の中にダイレクトに伝わってくるから、会話もしていないのに会話が成立してしまう。
彼が見えない彼女が右側にいるので、彼と普通に会話しようとしたら、俺だけがなんだか独り言を言っているヤバイ奴みたいになってしまうから、その点ではありがたい?とも言える。
まーそもそもついてきて欲しくなかったんですけどね。
『(べつに、居ても居なくても変わらないのなら、居てもいいでしょうがよ)』
悪魔のような男の口の端が吊り上がる。
二人きりになりたかったのに、わざと邪魔しに来たにちがいない。いったい、どこから今日出掛ける話を入手したのだろうか…。
そうこうしているうちに、ペットショップへたどりついた。
「首輪とかいろんな色があるよ!」
「わ、本当だぁ」
白猫ならば、やっぱり赤とかだろうか?色んな色の首輪を見ながら思い、言い出すタイミングを見計らっていた。
そんな俺の肩を左の先住人がつついた。
『(元)彼女が欲しいのは、緑色に水色の玉がついたやつみたいだよ?』
彼女の心を読むこともできるのか、俺に彼女の気持ちを教えようとしている。
…それを、信じてもいいのだろうか?俺は、ソレじゃなくない?と思いながらも口にしてみることにした。
「え、えっとー…この緑とかは…(ないよねぇー?」
そんなわけないと思いながらも『緑』という単語が出てきた瞬間に彼女の顔がパァっと明るくなった。
「私も!それが良いと思ってたの!」
「(え…………」
「すごいね。気持ちが通じ合ってたね」
そこまで言われて、コレにしないやつって世の中にどれくらいいるんだろうか。
俺は、彼女と選んだ首輪の他にも、猫用のオモチャも買って1人で家に帰った。
彼は気がつくとペットショップからはいなくなっていて、彼女の気持ちを伝える手伝いをしてくれたみたいに思えた。
ただの幽霊ではなくて、こんな感じで有効利用できるというなら、有りっちゃありなのかも?しれないと思った。