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冒険

初冒険!

暗闇の中、一点の明かりが灯る。立ち込める獣臭がこの先にラグドルが住み着いているとそう確信させる。


「マイ、僕が前衛で行く!後ろから僕を守ってくれるか?」


「はい!兄様はマイが守ります!」


この洞窟に来る際。ギョウさんから洞窟などの攻略についてある程度のことは教えてもらい、早速実践する。不吉な空気が漂う洞窟に不安を感じつつその目は怯えていなかった。


ガルルル・・・・。


前方から唸りながら現れたラグドル。構えた剣をラグドルに向けお互いに様子を伺いあう。先に襲いかかってきたのはラグドルだった。飛び掛かってくるラグドルを剣で受け止め振り払う。ユウは自分を落ち着かせるかのように一息つく。足に赤いオーラが立ち上る。地面を踏み締めラグドルに向かい切りかかる。ラグドルの意識が完全にユウに向いた瞬間。下からマイの土の拘束魔法に囚われるラグドル。一瞬感心してしまったユウだがすぐに切り替え、すかさずラグドルの首を刎ねた。


初めての戦闘は、とても長く感じたが一瞬で決着が付いた。お互いの目を見合わせ喜びを分かち合う。


「兄様すごいです!ちょっとだけギョウさんみたいでした!」


「いや!マイのおかげだよ!あの拘束したやつどこで覚えたんだ!すごかった!」


「思いつきでした!こうしたら兄様がやりやすいかなと・・・!魔法はイメージですから!」


ドヤ顔で言ってくるマイ。この薄暗い空気に見合わない会話をしていたが、洞窟の更に奥から殺気を感じ構えをとる二人。暗闇の中から2体のラグドルが現れる。


「ギョウさんも、言ってたけど。やっぱり一体で終わるわけないよね。」


ラグドルは基本的に群れを成す魔獣。一つのテリトリーに5〜10匹程度いるのが普通だそうだ。


「兄様!どうしましょうか・・・。」


「僕が絶対にマイに近づかせないから、まずはさっきみたいに1匹拘束してくれ!」


マイが攻撃魔法を使うと、また暴走してしまう可能性がある為サポートに徹してもらうことにし、再度身体能力強化魔法を使いラグドルに向かう。しかし予想とは裏腹に逃げていくラグドル2匹。違和感を覚える。


「兄様、これって・・・。」


「ああ。完全に誘われてる・・・と思う。」


正直この違和感を感じた時点で引き返した方がいいのかもしれない。でも依頼達成できなければ冒険者登録はさせてもらえない。その葛藤がユウを悩ませる。

・・・・


「引き返そうマイ。ギョウさんに違和感を報告しないと」


ユウは冷静だった。冒険者になれなくても今ここで死んだら意味がなくなる。マイを守るどころか、道連れにしてしまう。それだけは絶対に嫌だった。


「はい!では引き返しまし・・・っ!?」


僕達が帰ろうとした途端。先程とは比べ物にならない程の。動けなくなってしまう程の不気味な気配が、背後からユウ達に突き刺さる。


「僕ちゃんの可愛いラグドル達を虐めたの。君たち?」


少し高めの男の声。何も言葉が出てこない。振り返ったら死ぬかもしれない。


「ねぇ、君たちに聞いてるんだけど。無視は酷くない?」


何かしなければ。でも何かしてもダメなんだろうと察するユウ。しかしマイは勇気を振り絞り返事をする。


「ど、洞窟に迷い込んでしまいまして!そしたらラグドルに襲われたので仕方なく・・・。」


「僕ちゃん。嘘つきは嫌いだな。」


その言葉と同時にマイに襲い掛かる謎の男。僕は咄嗟にマイを庇い、その男の重い一撃を受け吹き飛ばされる。


「わ〜お!君まだ小さいのに今のに反応できるなんてやるね!」


そう楽しそうに話す謎の男に土の拘束魔法が巻き付く。


「兄様!今です!」 「ああ!ナイスだマイ!」


「何これ。練度が低すぎて拘束になってないよ。」


渾身の一撃を繰り出すが、いとも簡単に拘束魔法を破壊し、受け止められてしまう。


「君は面白いけど〜。あっちの女はいらないや。」


謎の男はマイに襲い掛かる。庇えない。間に合わない・・・。


「マイィィイ!」


咄嗟に目を瞑るが、思っていた音とは違う。金属がぶつかり合う音がした。


「全く!突然とんでもない気配がしたと思ったら!」


そこにはギョウさんの姿があった。


「ギョウさん・・・!きてくれたんですね!マイは!」


「兄様!私は大丈夫です!それよりギョウさん!なぜここにいるんですか!?」


「嫌な気配がしてね。少し様子を見に行こうとしたら、とんでもない気配を感じて。きてみたらこんな状況だったわけさ。・・・そしてこんなところで何を企んでいるんだい?ナイアス。」


ギョウさんは謎の男を知っているようだった。


「こりゃ驚いたな〜!ギョウさんがこんな所にいるなんて!何も企んでなんかないよ〜。僕ちゃんはやるべき事をしているだけさ。それにギョウさんまできたんじゃあ勝ち目薄いかな〜。僕ちゃんはお暇させてもらうよ。」


謎の男、ナイアスは暗闇の中に消えていった。張り詰めていた空気感がなくなり、今まで息を止めていたんじゃないかと思うほど溜まった空気を吐き出し、呼吸する。


「ギョウさん。あの男は何だったんですか・・・。」


「説明は後だ。とりあえず君たちが無事で本当によかった・・・!そして内容はどうであれ君達はラグドルを討伐したんだ!洞窟に残党の気配は無い。依頼達成というわけだな!」


依頼は確かに達成し、僕達は冒険者になれるのかもしれない。しかしユウはマイを全く守れなかった自分の弱さに。マイより先に動けなかったことに。悔しい気持ちでいっぱいだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

僕達は洞窟を出て帰路につく。マイはギョウさんにおぶられ、眠っていた。落ち込んでいるユウにギョウさんは声を掛ける。


「あの男、ナイアスは龍神の側近だ。この世界でもかなりの実力を持つ男だ。ユウが弱かったからじゃない。ほとんどの人間は奴の前ではああなるだろうさ。」


「でも、あそこにいたのがギョウさんだったら!僕がギョウさんみたいに強かったら、マイはあんな怖い思いをしなくて済んだかもしれなかった。」


そう弱音を吐く僕の頬に優しくも強い衝撃が走った。


「ユウ。そう思うなら尚更下を向いている暇なんてないだろう?それに俺がつくまでマイを守り抜いたのは紛れもなくユウだ。次奴に出くわすような事があったら負けないように。マイを守り抜けるように。鍛錬を続けるしかないんだ。」


ギョウさんの言葉に何も言い返せなかった。でも不思議と何かが湧き上がるような気がした。僕はあの男、ナイアスに勝てるようになりたい。ならなくちゃマイを守る事ができない。世界を冒険し、大迷宮を攻略するなんて夢のまた夢だ。


「すみませんギョウさん。・・・僕は強くなります!ギョウさんみたいに。・・・昔本で見た英雄のように!」


「英雄とは大きく出たなぁ!でも努力さえすればできないことなんてない!人生も魔法と同じように、イメージさえあればそこに近づけるもんさ!」


再び前を向くユウ。その目の中の炎は今まで以上に熱く燃え上がっていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ギャルド城下町に帰還した僕達はギルドに、ラグドルの掃討を報告した。


「・・・まさか本当に依頼達成してしまうなんて。はぁ。約束だしね。ユウくんとマイちゃん。二人を冒険者として認めます。これは冒険者証よ。」


冒険者証。僕達の名前が彫られた、ブロンズ製のプレート。これがあればどこの冒険者ギルドでもそれ相応の依頼が受けられるそうだ。


「ギョウさんからもしかしたら聞いてるかもしれないですが、冒険者には階級が振り分けられています。一番下がブロンズ級。そこから順にシルバー、ゴールド、プラチナ級。そして一番上はこの世界に3人しか存在しないミスリル級よ。ちょっと前までは、そこのギョウさん含めて4人だったんだけどね!」


「ええええ!ギョウさんそんなに凄かったの!?」


ユウとマイは目が飛び出るほど驚いた。階級の話は聞いていたが、そんな凄い階級に居たなんて聞いたこともなかったからだ。


「おいメルナ!余計な事を言うな!」


「別にいいじゃない!隠すことでもないんだし。」


メルナさんにギョウさんは頭が上がらないみたいだ。そして無事に冒険者登録を終え僕達は宿につき溜まった疲れがどっと溢れ出し。すぐに眠りについた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ナイアス。今日はやけに機嫌がいいじゃないか。」


「そうですか〜。まあ、面白い出会いがありまして。」


「そうか、よかったじゃあないか。・・・だが油断するなとだけ言っておこう」


「はいは〜い。ご忠告どうも。」


どこともわからない場所でナイアスと貴族の様な真っ白な服を着た紳士がたたずむ。その背後には小さな村が焼け落ち、村人は皆串刺しにされていた。


面白かったらGOODしてくれると嬉しいです!

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