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ユウマイ冒険譚〜奴隷から冒険者になる〜  作者: れたろ
第二章 カラバリの町
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最悪の結末

 再びカラバリの町へと馬車を走らせる。ギャルドを出てから5日が経っていた。馬車を休ませる以外はほぼ走らせていたため、カラバリの町は目前となっていた。しかし前来た時とは打って変わって、行商人とよくすれ違う。それにあの時感じた気配は全くなかった。あまりにも前と違いすぎる何もかもに、違和感と不安を感じる。


 ユウ「マイ、何か明らかにおかしい感じがしないか?いかにも普通を装っているような・・・。」


 マイ「はい。それに何かこう・・・言い表せないんですけど変な魔力がここら辺は流れている気がします。」


 不気味な魔力の正体はわからない。だが決して良い事ではないのは瞬時に理解していた。だんだんカラバリの町に近づいているが、その不気味な魔力はより濃くなっていた。怖さはあったが、前回の様な動けなくなるほどの気配は感じない。


 マイ「兄様・・・。この町なんか変です。それに恐らくですがオルト村同様魔法阻害の結界が張られてます。」


 ユウ「ってことは、やっぱりギョウさん達は石像を壊すのに失敗したんだ・・・。」


 マイ「・・・。でも逃げてる可能性もありますよね・・・。」


 マイは自分に言い聞かせる様にそう言う。しかしこの町の不気味な魔力はオルト村とはまた違っていた。なんにしたって町に入ってみないとわからない。二人で顔を合わせ頷き覚悟を決める。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 町に足を踏み入れると、すぐに結界の効果の違いにマイは気づく。魔力阻害じゃない。逆に何も効果を感じない、それが恐ろしい。


 マイ「兄様。魔力阻害じゃないようです。しかしこの結界は何の為の・・・。どんな効果があるのか分かりません・・・。」


 不気味な魔力は今もなお感じる。何かこの町に必ず秘密がある。何にせよギョウさん達はこの町に来たんだ。誰かしらが見ている可能性が高い。そう思い周りの人に聞き込みを始めるが、誰も大柄の獣人など見ていないという。どうしようかと考え込んでいるところに一人の男が声をかけてきた。


 ?「君達。もしかしてギョウを探しているのかい?」


 ユウ「え!ギョウさんを知っているんですか!?」


 ?「ええ。昔の知り合いでして・・・。会いたいかい?」


 まさかの展開に、一瞬目をかっぴらいたまま硬直するが、すぐに我に戻りついていく事にした。大通りを抜け、細道のさらに細道を通り、暗い階段を降りていく。


 ーーーっ!?


 あの時感じた気配。絶望恐怖死。全ての感覚が危険信号を出し、身が震える。


 ?「どうしたんだい?・・・もう引き返せないよ。」


 ユウ「あなた誰なんですか・・・!僕達を嵌めたんですね!」


 ?「いやいや!嵌めたなんて失礼じゃないか!君達が会いたいと言ったんだろう?ほら、もう目の前に君達の見たい景色がある。」


 階段の先に扉があった。その扉から出るとそこには焼け焦げたカラバリの町があった。


 ユウ「なんで階段降りた先に町があるんだ・・・。」


 マイ「恐らく、結界によりこの町を模した空間を作り出し、それを外部から分からないようにしているんだと思います。」


 このカラクリを即座に見破られ唖然とする男。我に戻ると笑い出し、拍手をしだす。


 ?「凄いじゃないか!このカラクリを見破ったのなんてギョウしかいないのに!」


 ユウ「御託はもういいです!ギョウさん達はどこにいるんですか!組織のみんなは!」


 ?「もうすぐ会えるさ!そう急ぐんじゃあない少年」


 きっと抵抗したところで勝てない事はわかっていた。あのメントゥスさんと同等、いやそれ以上かもしれない。悔しい気持ちを抑え込み、後ろをついていく。


 ーーー痛い、痛い、痛い、痛い!誰か助けてぇ・・・。


 静まっていた空間に、次第に悲鳴が聞こえ始める。ユウ達は声のする方へ走り出す。それをあの男は止めようとしなかった。


 ーーー目の前の景色は地獄そのものだった。そして悲鳴の正体は、組織メンバーのメイナさんだった。彼女は僕達と一番年が近く、よく話し相手になってくれた。そんな彼女が今目の前で串刺しにされている。すぐに死なないように急所を外し、腕と足を使えないようにされて・・・。溢れ出る血と涙と悲鳴。しかし喉から込み上げる血によって悲鳴は途切れ、思う様に吐き出す。どれほどの時間こうされているんだろう。彼女の目はもう生きていなかった。


 ユウ「メイナさん!今助けますから!マイ回復魔法の準備をしてくれ!」


 こくりと頷き魔力を集めるマイ。ユウは強化魔法を腕に集中させ棘に向かって斬りかかる。しかし瞬時に前に入りユウの一撃を受け止める男。


 ?「ダメじゃないか。勝手に解放しちゃあ。彼女は今罪を償っているんだから。」


 この男が何を言っているのか分からない。彼女が何をした?罪?彼女はただ親を龍神の手下によって殺され、自らを高め、仇を撃つためにひたむきに頑張ってきた健気な女性だ。


 ?「龍神様に刃向かって、実力もないのに僕達を。そして龍神様を侮辱したんだ。この程度の罰で済んでいるだけ慈悲深いってもんじゃあないか!」


 ユウは我慢の限界だった。頭に血が昇っていたが、感情のままに斬りかかりはしなかった。


 ユウ「マイ、エンチャントを今できる最大魔力で剣に付与してくれ。」


 マイ「・・・兄様。分かりました。」


 ユウの剣に雷のエンチャントが纏う。しかし力の差は歴然・・・のはずだった。


 ユウは今までの比にならないスピードで斬り込み、常ににやけ顔だった男の顔は真剣に変わる。間一髪で避けた男は距離を取る。


 ドゥレス「何が起きたんだ。さっきまでの少年とは別人じゃないか・・・。素晴らしい!私の名前はドゥレス!お手合わせ願おう。」


 凄まじい攻防。マイは援護しようとするが、ついていけなかった。


 ドゥレス「何かしらの特異体質か!しかしこの変わりようは何かしら制限があると見える。どこまで持つかな!」


 見るだけしかできない。しかしマイは見ていたからこそあることに気付く。ユウの剣に付与した雷のエンチャントが弱まっていた。


 ーーーまさか。魔力を吸収する特異体質・・・!しかも誰かが具現化した物からのみだとしたら・・・。


 ユウの周りに無数の具現化されただけの魔法が現れる。土の具現化を手に取るとそのまま魔力を吸収し、土は無くなった。そして周りの具現化も次々に吸収し、剣を構える。次の一撃が決着となる。そう確信する二人。マイはユウの剣に炎・風のエンチャントを付与する。3属性に輝く剣と共に勢い良く走り出す。ドゥレスも呼応する様に走り出す。


 剣と剣がぶつかり合う。鍔迫り合い、お互いに一歩も引かないが、ドゥレスの剣は押し負け吹き飛ばされる。そして振り下ろされた3属性に輝く剣はドゥレスの体を切り裂く。負けたはずなのに少し満足げに倒れるドゥレス。


 ドゥレス「見事だな・・・。だが龍神様に楯突いたこと。いつか後悔する日が来るぞ。」


 ユウ「それでも、こんなことをしているあなた達を。僕は許せない。」


 鼻で笑い、笑顔で息を引き取るドゥレス。ユウは限界が来たのか。そのまま気絶してしまった。




 ーーーーい様!・・・・兄様!


 マイの鳴き声混じりの呼びかけで目が覚める。少し前の記憶がない・・・。


 ユウ「マイ!あの男は!メイナさんは!」


 マイ「兄様があの男、ドゥレスを倒したんですよ・・・。おかげで、私もメイナさんも無事です・・・。無茶しすぎです兄様・・・。」


 自分があの男を倒したことが信じられなかったユウ。しかし横たわるドゥレスを見て現実なんだと確信する。だからと言ってじっとしているわけにはいかない。この空間にもしかしたらまだ組織の人がいるかもしれない。すぐに動き出したかったが、ユウは体が動かなかった。きっととうに限界突破していたのだろう。


 マイ「兄様は少し休んでいてください。幸いにもあの凄まじい気配は今は感じません。マイが周りを見てきます。」


 心配だったがマイに任せることにした。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 気配は無くなっても不気味さは消えていなかった。細道を抜け、大通りに出る。


 マイは目の前の光景に嘔吐してしまう。


 マイ「ヴァイストさん・・・コーラスさん・・・ガーディさんにガリドさん・・・みんな・・・・。」


 串刺しにされ手足を切られすでに生き絶えていた組織のメンバー達。ギョウさん、メントゥスさん、他数名のメンバー以外皆ここで死んだんだ。溢れ出る涙と嘔吐が止まらない。


 ーーーマイは引き返したことを、最善の選択をしたんだと想う様にしていた。しかし目の前に広がる光景は、最悪の結末だった・・・。


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