嘘と狂気の宴【15】
「…………今日の犠牲者は、白杜留紀さんでした。それでは、四日目の会議を始めます」
もう、慣れてしまった日常の中、今日犠牲になった人が、風夜さんから告げられる。
「……………………ここも寂しくなったよね」
会議の開始と同時だが、全く関係のない言葉を、如月さんは紡ぐ。
始めほど、活気があって、ピリピリした重い空気だったのなら、その発言に対して「今は会議だ」とか、文句を言う人がいたのだろうが、今の廃れて寂れた廃村のようなこの空気では、そんなことを言う人もいなくなってしまった。
「……まぁ、もう私と、のあと、風夜さんと、如月さんと、淡海さん、五人ですからね。……十人の、半分ですよ」
嗜めたり、怒るどころか、私なんて、それに返事を返してしまった。…………そうでもして、ちょっと気を紛らわさないと、この最終決戦に、ちゃんとした表情で臨めない。
…………泣いて、歪んだ顔を見せてしまう。
「……それはそれとして、今日の占い結果を――」
私たちが雑談をし始め、脱線してしまった話の路線を戻そうと、淡海さんが言葉を紡いだ。
しかし――――
「もう、その必要はありません」
「え」
淡海さんは何を急に、と言った顔をする。
「…………如月さん。貴方は、今まで話題に上がらなかった異能力者――霊媒師なのではありませんか?」
今度は名指しで問いかけられた如月さんが、きょとんとした顔をして驚く。
「………………そしてのあ。貴方が人狼」
こちらののあは、驚きもせず、ただ沈黙を貫いている。
「如月さんは、今まで一度も、自分の立ち位置について明かすことはなかった。…………けれど、他のい能力者と人狼と、みんなの主張についてを考えてみれば、霊媒師という異能力を持つ人の可能性は、だいぶ少なくなる」
村人であることが明らかなミア。
反論せずに死んでいった一条さん。
呪詛を吐いて処刑されたライ。
村人だったのであろう白杜さん。
峰さんは、おそらく狐。
「私の中での想像ではありますが、風夜さんと如月さん、どちらが霊媒師かと言われたら、私には如月さんが霊媒師にうつったんです」
思い返すのは、三日目。
如月さんが一日中黙っていた日のことだ。
あの日、死体の前に集まった人の中で、白杜さんと如月さんは体調悪そうにしており、議論の中でも、ほぼほぼしゃべることはなかった。
しかし、それは白杜さんも同じ。だから、一見すると白杜さん、如月さんの二人は新たな人が犠牲になったことで、精神的に参っており、会議をする気力もない、とそう思うだろう。しかし――――
「あの日の投票。白票は、一票だけ。
そして、その時に票を入れなかったのは、白杜さんただ一人」
ライの処刑の日に、如月さんが、自分で言っていたことでもある。「投票する人は覚悟を決めた人だ」と。
「あの時、如月さんは、精神的に参っていたというより、何か思うところがあり、考え事をしていたのではないですか?……例えば、前日のライの霊媒結果とか」
私がそう、問いかけると如月さんは――――
「すごい、よくわかったね」
笑って、私の説を肯定した。
「……そうだよ、あの時考えていたのは、ライさんのこと。ライさんの霊媒結果は黒であり、紛れもない人狼。そこまではまだ予想できるよね?」
でも、と如月さんは続ける。
「それなら尚更謎だな、と思ったんだよね。
人狼なら、最後まで騙したり色々試行錯誤して、足掻こうとするんじゃないかなーって。あんなに自棄になることあるかな、って気になったんだ。
で、色々考えてたわけなんだけど――――」
「――多分、ライさんが処刑されたのはわざと。
僕は、そういう結論に至った」
あまりに衝撃な予想に、私や淡海さんは目を見開く……が、他の人たちは、微動だにせず、話に耳を傾ける。
「恐らくライさんが処刑された目的は、霊媒師を炙り出すため。一人でも人狼がでたら、霊媒師はそれをみんなに共有する可能性が高いし、仮に自分から言い出さなくても、軽くゆすってみれば、霊媒師が名乗りを上げる可能性も、少なくはない。きっと、人狼はそう考えだんじゃないかな」
…………確かに、占い師が黒を当てたら色々やりようがあるように、霊媒師も、黒を当てたらその情報はだいぶ価値のあるものだし、すぐに公開する、という手もなくはない。
「あの当時の一夜だけでは、罠だなんて気付けるほどに考え事をする時間はないし、どうしようかかなり迷っていたけれど、幸い僕は翌日、「精神が参った可哀想な如月さん」ポジションを手に入れられたからね。あの位置を使って存分に考えごとをしたし、口を閉ざしてた」
「結構卑怯なやり方しますね………………」
「同じ人間陣営なんだから、その辺は上手い!凄い!って褒め称えるところだよ」
如月さんは、ムッとしたような表情で、私に抗議の言葉を寄越すと、説明を続ける。
「そんな、こんなで色々考えごとをした結果、二人目を見つけられるまで、僕は黙っていることに決めた。
幸い、それをできるだけの時間はありそうだったから」




