嘘と狂気の宴【14】
「今日の投票結果をお知らせします。
一条悠里、四票。風夜凛、一票。白票、二票。よって、今日処刑されるのは一条悠里さんです」
風夜さんが淡々と投票結果を告げると、名前を呼ばれた本人はがたっと椅子から立ち上がり――
「俺が投票で決まったのなら言うことはなんもねぇよ。せいぜい上手くやれ。そんだけだ」
言葉を宙にほっぽり投げていくと、扉の奥に消えていく。
『…………………………』
今日の投票で決まったのは、一条さん。
私が考え事を始めた当時、風夜さんと始めた口論だが、一条さんが人狼である疑惑を払拭しきれず、今日の投票では、一条さんが処刑対象に選ばれることとなった。
正直、その辺の論争について、私はまともに聞けていなかったし、一条さんが人狼という確証があるかと言われると微妙なところ。
他の人はどうなのだろうな、と思い、見渡してみると、大半の人は迷うような、悶々とした表情をしているのだが、一条さんと真っ向勝負でやりあっていた風夜さんにだけ、迷いはないように見えた。
「それでは、今日の議論はここまでなので、各自家に帰るように…………。
あぁ、占い師のお二人は、今日確認した通りにお願いします」
「えぇ、しっかり覚えていますわ」
「はい、もちろ………………うん?」
……あれ、何の話だろうか、と私は首をひねる。
「…………月乃さん。もしや聞き逃していましたか?」
「えっと…………。はい、すみません。何のことだか…………」
素直にわからないといった私に対して、風夜さん他、淡海さんもため息をつく。
「…………そろそろ黒以外にも、誰が白で、どんな立ち位置か、というのが大切になってくるから、今日はわたくしが留紀さんを占う。今日の所、月乃さんはまだ占われていない誰かを占えばよくて、明日以降の占いは、白杜さんがどうだったかによっても決める。そういう話になりました」
「確実に白の人を見つけるためなのと、まだ占っていない人に黒が潜んでいないか、それを見つけるためにこうすることになりましたのよ」
二人そろって丁寧に説明してくれた。
「そういうことだったんですね。ありがとうございます…………」
お礼を言えば、二人はため息をつきながら笑う。
「わかったようなら何よりです。それでは、改めて――これにて今日の会議を終了します」
* * *
三日目昼、終了。
三日目夜。
獣は、村を彷徨い、唸り声を響かせ――
占い師は、とある人を占い、正体を暴き――
霊媒師は、前日処刑された魂の本質を見抜き――
騎士は、村民を守る――――
* * *
私、月乃玲明は、解けない引っ掛かりがもやもやして、よく眠れずにいた。
(何が引っかかるんだろう)
そんなこと考えてもすぐには出てこない。
(…………とりあえず、今までの人の役職予想と、行動でも振り返ってみよう)
折角だから、今までのことを一から思い出してみよう、という考えに思い至った私は、一日目から行動を思い返した。
(まず、一日目の昼、処刑されたのはミア)
ミアはおそらく……というかほぼ確実に村人だろう。
人狼や異能力者だったら、あんな大胆な行動できるはずがない。
(そして、一日目の夜。この日は犠牲者がいなかった)
犠牲者がいないまま迎えた会議。
その中で、私と淡海さんの占い結果である白杜さんの白と、凛さんの白を、報告し、今後の占い方針についてが定まった。
そしてその後、何故死者がいないのかという話になり、騎士と人狼が噛み合ったから、それはどこで起こったのか、という話に発展した。
そしてこの日は、全く話さなかったこと、主張に違和感があったことから、ライが処刑されることになる。
(今、一条さんを処刑して、全体数が六人になってもなお私たち人間が殺されていないことを考えると、人狼を一人は必ず処刑できているはずだ)
…………となると、一条さんか、ライのどちらは、人狼。もしくは両方人狼、というわけになるのだが……。
(うーん、わからない。一先ずは一条さんとライを人狼(仮)としておこう)
そんなこんなでとりあえず二人についての思考をやめ、二日目の夜にうつる。
(昨日の夜。この夜に殺されたのは、峰さん)
正直、三日目は一番予想がしにくい日である。
(人狼が峰さんを襲撃した&私が峰さんを占った、という奇跡的な状況が起きたせいで、狐の峰さん一人が死ぬことになった、という予想もできなくはない)
しかし、峰さんが人である可能性も、まだ否定はできない。
(峰さんは狐か人間、としておこう)
すると、あとは今残っている人たち。
(私視点、淡海さんは狂人。白杜さんは恐らく村人……?騎士は…………直感だけど、風夜さんとか?)
意外と異能力持ちが残っているのかもしれない、と思った矢先――
(あ!?)
今の今まで、完全に忘れ去ってしまっていた異能力者の存在を思い出す。
(……霊媒師)
死者の正体を暴くことのできる異能力。
(ライや、一条さんが霊媒師だと主張をしなかったことを考えると、霊媒師は峰さんか、今残る如月さん、のあの中の誰か…………)
賭けにはなるけれどこの人を占って、白が出たら二分の一で、彼が霊媒師。
そして、もう一人が、人狼である可能性が高い。
…………そう、予想をつけた私は、感覚を研ぎ澄まして力を開いた。
* * *
三日目夜、終了。




