嘘と狂気の宴【13】
「今回は、いい理由も、悪い理由も、どちらもある峰さんが曖昧なところだったからこそ、わたくしは峰さんを占うことにいたしました」
立ち上がり、村民全員を見渡した淡海さんは、そんな始まりで、峰さんを占った理由についてを語り始める。
「昨日、今後の占い方法についてのお話をしだしたとき、如月さんは「お互いの占った人占うべき」とのことを言っていましたが、峰さんは「まだ別々の人を占った方がいい」と言っていました」
まず最初に出したのは、昨日の議題に上り、如月さんと峰さんで議論していた「占い方針」に関する話題。
あれは、峰さんの方針に納得する人が多く、昨日の夜の占いもその基準のもと行われたはずだが――
「あの理由についてはその通りであり、いい意見だとも思いましたが…………しかし、月乃さんやわたくしがを白を出した人のなかに人狼がいるから、それがバレないように、誤魔化そうとしたのではないか、とも取れると思ったのです」
「…………なるほど、一理ありますね」
淡海さんの視点で見ると、確かに怪しさがないとは言い切れない。
「そして、そこについて疑念を抱いたため、もしかすると人狼の可能性もあると考え、占ったのです。
……しかし、結果は白。人狼以外との結果が出ました」
以上が、わたくしからの説明になります。と淡海さんは自分の語った話題を締めくくる。
「では、次に私の理由を説明させていただきます」
淡海さんが座ると同時に私が立つ。
「……大元の、峰さんが白か黒かわからなかった、という所は同じですが、その考えのもとにした部分は淡海さんと少し違いました」
私は昨日、話していたことを出来るだけ思い出しながら、説明を始めた。
「昨日、峰さんは騎士と人狼の行動についての話をされていましたよね。騎士と人狼がどこで合ったかによって、予想をすることが出来る、と」
確か、占い師のどちらかで合ったのなら、人狼はそっちを本物だと見ている。
もし別のところで合ったのなら、その人物は人狼にとっても騎士にとっても特別視されている人物。
峰さんはそう言っていたはずだ。
しかし――
「あの話、峰さんはふと思ったことだから共有すると言っていましたが、ちょっと考えると、騎士が誰かを探っているようにも、見えなくないと思いました」
人狼なら、誰を襲撃したかがわかるはずだし、それを妨害した人……騎士がいるとするのなら、人狼はその存在を排除したいだろう。
だから、もしかすると峰さんは人狼なのでは、と推測したのだが――――
「けれど、結果は淡海さんと同じく白。
善意から言ったのだな、と思って今日になれば、峰さんは亡くなっていた。私の方の説明も以上です」
私もそう、言葉を締めくくり、席に着くと、会議場は何とも言えない空気が漂っていた。
しかし、その居心地の悪い空気を、ある人は鋭い言葉で切り裂いた。
「………………月乃さんの「善意から」という話。それはもしかすると違ったかもしれませんね」
「風夜さん……?」
淡々とした口調で言うのは、風夜さん。
「……考えてみてください。二人が白を出したその翌日、峰さんはなくなったのです。
占われて、死ぬ。その特性を持った異能力者がいると、本人が言っていたではありませんか」
「もしかして峰さんは――」
狐。
どこかの誰かが、そうぽつりと呟く。
「…………いや、でも、そんなことあるか?叶斗が狐だとするのなら、昨日は二人犠牲者がいるはずだし、そうなると、会議に散々口出してきたのは何のためになるんだよ」
「お忘れですか、一条さん。狐は、人狼と人間の勝負を楽しむだけの愉快犯。狐は楽しければいいのですから、口を出して場をかき乱したとしても何ら不思議ではない」
狐の性質についておさらいする風夜さん。そして……。
「昨日の犠牲については、人狼襲撃の対象が、峰さんであり、人狼が峰さんを殺すことは叶わなかったが、占い師によって、殺された。
そういう偶然がかみ合った奇跡が起きていれば、なくはない話だと思うのですが」
「そんなこと普通あるか?」
偶然と、必然と…………色々が入り混じった、奇跡、そしてそれがあり得る可能性についてを、風夜さんは続けて語る。
「先ほど月乃さんが挙げた、騎士と人狼の行動の例。あれは峰さんを人狼側としてみて、騎士を探っていると捉えていましたが、あれは逆に、人狼側から見たら「人狼を探る騎士」に見えたのではないでしょうか?」
「だから人狼は、峰さんを騎士と勘違いして襲撃した。しかし、峰さんは狐で人狼に殺されることはなかったが、偶然峰さんを占った占い師によって殺された。こういったことが重なればありえなくはない話だと思うのですが」
風夜さんは今までの可能性の話をそうまとめた。
「うーん、ありえなくない話ではないと思うが…………」
「一条さん、今日はやけに否定したり突っかかったりしてきていますが、一条さんには人狼の考えがわかるのでしょうか?」
「はぁ!?なんでそんな話に!?俺が人狼側だとは限らねぇだろうが!!」
しかし、まだ何となく腑に落ちないらしい一条さんがつっかかったことにより、誰が人狼か、今日は誰を処刑するか、という話にうつった…………が。
(何か、腑に落ちない)
それは一条さんと同じく、風夜さんの語った奇跡のような可能性を信じられず、腑に落ちない、というのもあるが、なんかもっとそれ以前の何か。
何処かを決定的に見落としてしまったような、不思議な感覚がする。
(何なのだろうか……)
一条さんと、風夜さんの議論を聞き流しながら、それについてをずっと考えていたが、結局何なのかわからないまま三日目の会議はあっという間に過ぎていった。




