嘘と狂気の宴【11】
「そうだ、それはそれとして、今日の犠牲者がいなかった件について。
これについても話したいと思っていたんだ」
占いについての話題がいったん幕を閉じたところで、峰さんがそう話題を切り出す。
「普通に騎士の守りと人狼の襲撃が重なっただけではありませんか?」
風夜さんが峰さんにそう問いかけるが、峰さんが聞きたいのはそういうことではないらしい。
「そういうことじゃなくて、騎士がだれを守って、人狼は誰を襲撃しに行ったんだろうか、って話だよ」
「あぁ…………。確かに、そこは気になるところですね」
のあが反応を返す。
「もし、占い師二人のどちらかを守ってそっちと、人狼の襲撃がかみ合ったのなら人狼はそっちを本物の占い師とみてるってことですよね。逆に他のところで当たったのなら、人狼陣営と騎士で、互いに思うところのある人がいたのかも」
人狼の襲撃先、そして騎士の守り先について、そこからも予想できることは多いとのあは語る。
「そうそう。……まぁ、どちらも漏らすとは思えないからそんなに議論できる何かがあるわけではないと思うんだけどね。
ちょっとでも気になることは共有しておくに限るから、その辺も一応頭に入れて……」
と、峰さんがそこまでを話し終えたところで、ふと窓の外を見た。
「もう、夕方になるけど…………どうする?」
思えば今日は、処刑対象の話を全くしないままこんな時間になってしまった。
「とりあえず、占い師を名乗る二人と、仮だけど人間側認定された白杜さん、風夜さんの四人を除くとして考えると、何も情報がないのは僕、華道のあ、峰さん、一条さん、如月さんと、後は…………」
のあが、言葉を濁して、ライを見る。
「…………思えば、今日ライは一言も喋っていなかったような」
のあの言葉によって思い返してみれば、今日一日で、ライは何も言葉を発していた覚えがない。
「昨日は結構しゃべってたはずだよね……」
如月さんも、のあの言葉を受けて、違和感を抱いたらしい。
「えぇ?私ですかぁ……?」
自分が怪しまれたことに納得がいかない様子で、ライは不満を漏らす。
「ただただ色々考え事をしていただけですよぅ。だって、昨日、目の前で死んでいった人がいるんです。悲しくもなりますし、殺したくなんてなかったなーと、気分も落ち込みま――」
「いや、その主張はちょっとおかしい気もする」
如月さんがその主張を「おかしい」と切り捨てる。
「どうして、私の心情を他人が図ることができるのでしょうかぁ?」
その返答に対して、ライは口調を変えないながらも体の芯から冷えていくような冷たい目を如月さんに向ける。
だが、如月さんはその視線を受けながらも淡々と説明をする。
「……昨日、雷山さんを処刑することに抵抗のあった人たちの行動は、わかりやすかった。「票を入れない」ことを選んだんだよ」
(――あ)
確かに、昨日、投票結果を読み上げた風夜さんは言っていた。
『雷山ミア、六票。白票、四票』と。
「昨日の投票をしなかった人はわかりやすかったよ。まずは本人である雷山さん自身。そして、彼女と話をして、投票場所には行こうともしなかった月乃さん。そして、納得いかなかったから投票しないことを選んだ僕、如月由良。そして最後の一人は――』
すっと、白杜さんを指さした如月さん。
「少なくともライさんではない。…………僕が見た限りだけれど、白杜さんも投票場所にはいかなかった」
如月さんが目線で白杜さんに何かを伝えると、白杜さんが口を開く。
「…………えぇ、そうね。昨日、私は迷いに迷って投票に行けなかったわ。ずっと、この椅子から動けなかった」
その白杜さんの主張を聞いて、一条さんも意見を言う。
「確かに白杜は投票の時も、会議が終わった後しばらくも、椅子から動いてなかったな。
静かながら、精神的に参ってるんだろうな、と思った」
そして、それに続いて、風夜さんも、同じような意見を述べる。
「一条さんの言うように、私もそんな雰囲気は感じ取れました。
人が亡くなったことにかなり動揺している様子があったので……」
その二人の主張を聞いて、如月さんは改めてライに向き直る。
「…………といった感じに、昨日の投票に関して思うところのあった人は、投票をしていない。
投票をしていた人が、傷ついていないなんて言うつもりは勿論ないけれど、あの時、投票に行った人達は「覚悟を決めた人」だった」
昨日投票した面々は、その言葉を静かに聞いている。
「そんな人が今の今まであの件を引きずって黙りこくっているのは、些か不自然。
これは何となくの直感でしかないけれど、今日黙りこくってたのは襲撃がなぜ失敗したかとか、そういう表には言えないことを考えていたのではないかな、って風に見える」
「…………あはは」
ライは、如月さんの言葉に、一度乾いた笑いを漏らすと、瞳を陰らせて笑った。
「そういう風にみられちゃうんですねぇ。もう何を言ってもっ無理な気がするのでいいですよ。投票としましょう」
その言葉は、黒であることを認めたようにも思えたし、自棄になっていたような気もした。
「…………それでは、投票に」
風夜さんが声をかけると同時に、今日は全員が席を立ち、ゆっくりとではあるが投票場所に向かいだした。
そして、数分後。
「今日の投票結果をお知らせします。
ライ、八票。如月由良、一票。よって、今日処刑される方はライさんに決まりました」
その言葉を聞き、ライは勢い良く立ち上がると、あれよあれよという間に、奥の扉へと進んだ。
そして――
「せいぜい後悔しないように、頑張ってくださいねぇ?」
一度嗤い、呪詛を零すと扉の奥に消えた。
怒涛の展開の連続で、現実感がないまま、皆は呆然とし、日が暮れる、という時になって自然と村民は解散となっていた。




