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花かんむりの眠る場所で 番外編  作者: 綾取 つむぎ
長編番外 人狼ゲーム
22/30

嘘と狂気の宴【9】

扉の奥に消えていったミアを見て私、月乃玲明は嗚咽を漏らした。

もう、会議は終わったのだから、皆、家に帰ってもいいのに誰も何も言わず、私の嗚咽だけが響く空間が、十数分も続いた。


そして、もう本当に日が暮れてしまう、という直前になって、のあが声を発した。


「このままだと、皆食われます。玲明は、何とか連れていきますから、皆さんは先に」

「…………わかった。……と言っても正直お前も月乃も、どっちがどうだかわかんねぇんだから十分気をつけろ。寄り道はせずに真っすぐ帰れよ」


のあの声に反応して真っ先に会議場を去ったのは一条さんだった。


「……わたくしも、お先に失礼しますわ」

「僕も」


そう言って、どんどん人は会議場から去って行き、遂には私とのあの二人だけになった。


「…………のあ」

「うん」


声をかければ、のあから、声が返ってくる。

それが、今は無性に安心した。けれど――――


「………………のあは、死なない?」


同時に、心配でたまらなくなってしまった。


隣の子の声は、失われないだろうかと、消えないでずっとここに在ってくれるだろうかと。


「……ごめんね、約束はできない。今後の状況がどうなるかもよくわからないし、絶対にそばにいてあげられるとは、言えない」

「………………」


返答は、私が望んだようなものではなかった。

出来ることなら、死なないと、その言葉が聞きたかったのに。


「でも、れいの人生はれいの人生だ。僕の有無にかかわらず、れいはちゃんとれいの人生を生き抜くこと。

それが、ミアにとっても、その時いるかいないかわからない僕にとっても、救いになるんだから」


のあは、残酷な現実を目の前に突きつける。


「今後誰が犠牲になろうとも、誰に裏切られようとも――前を向いて歩いて」

「………………はい」


のあのその言葉は残酷だけれど、心の中にストン、と落ちて、私の中の覚悟として固まった。


もう、私たちは戻れない。

そもそも、退ける道なんて用意されてないのだ。


ただ、死にゆく人たちの遺志を継いで、私たちが生き抜いていくしかない。


「まぁ、そんなこと言ったって、れいも僕もちゃんと人間側かなんて、確かめようがないから、ある意味この発言を信じるのも恐ろしいっちゃ恐ろしいけどね」

「今の話、別に人間がどうとかこうとかいうよりもただ個人間の話だったでしょう。信じる信じないを考える余地もありませんけどね」


覚悟が決まった私はのあとそんな軽口じみたブラックジョークを言い合い、のあに手を引かれながら会議場を後にした。


* * *


一日目昼、終了。

一日目夜。


獣は、村を彷徨い、唸り声を響かせ――

占い師は、とある人を占い、正体を暴き――

霊媒師は、前日処刑された魂の本質を見抜き――

騎士は、村民を守る――――


そして、朝日は昇った。


一日目夜、終了。

二日目昼。


* * *


「すみません、遅くなりました」


私、月乃玲明は指定されていた時間から数分ほど遅れて会議場へと到着した。


「月乃さん……」

「れい!!よかった…………」


私が会場に着くなり、私以外の全員があからさまにほっとした顔をして、こちらを見た。

そして、私は私で恐る恐るその顔ぶれを見れば――――


(あれ?)


「全員、生き残って…………」


もう一度、間違いはないかと頭の中で数を数えながら、全体を見回す。

だが、何度数えても、数は昨日の夕方と変わらぬ九人だ。


「もしかして、今日って、誰も――」

「月乃さんがこの場に現れたことで、確定しましたね。――今日の犠牲者は、いらっしゃいませんでした」


私の中に渦巻いていた疑問を、風夜さんは、そう皆に聞こえる形でまとめた。


「…………よかった。昨日の今日で、れいが犠牲なっちゃったのかと気が気じゃなくて……」

「月乃、次から遅刻はやめろ。本当に心臓に悪い。あと数分してもこなかったらみんなで月乃の家に行こうって話になってたくらいだ」


皆には相当心配をかけてしまったようだった。


「本当すみません。色々と疲れていたみたいで熟睡してしまいました。……本当に、以後気をつけます」


心配かけて申し訳ない、と思いながら頭を下げたらみんなは小さく笑いながらため息をついた。


「まぁ、月乃くんが無事で何よりだよ。今日なんて犠牲者なく、朝を迎えられたことだし、これほどまでに喜ばしいこともない」

「そうですわね。…………それに、月乃さんの方、精神的なものも、持ち直したようでよかったですわ」


峰さんと淡海さんは、そう声をかけてくれた。


「…………さて。このまま楽しく話していたいところではありますが、そうもいきませんね。月乃さんも席についてください」


未だ会議場の、入り口側の扉に立ったままだった私は、風夜さんの言葉でこれからする行動を察し、風夜さんの声に促されるがまま、昨日と同じのあの隣、そして反対側には誰も居なくなった、寂しい席に着いた。


そして、私が席に着くのと同時に、昨日と同じように風夜さんが呟く。


「それでは、生存者が全員揃ったところで――本日、二日目の会議を始めさせていただきたいと思います」

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