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花かんむりの眠る場所で 番外編  作者: 綾取 つむぎ
長編番外 人狼ゲーム
19/30

嘘と狂気の宴【6】

気紛れ、気分屋で、傍迷惑な存在。

峰さんは、狐という異能力者をそう評した。


「……狐は、決着を見たら興味をなくすんだよな?」


狐についての説明を聞いた一条さんは、峰さんにそう問いかける。


「はい。「決着を見届けたら」興味を失います」

「…………それなら、狐が決着を見届ける前に、狐も処刑をする他ないんじゃないか?」


厄介な狐という存在の対処法について、一条先輩が提案をすると、峰さんは頷く。


「そうですね。それも一つの方法です」

「……一つということは他の方法もありますの?」


峰さんの、何かを含んだような言葉に、淡海さんが切り込んで尋ねる。


「えぇ、その通り狐には他にない――呪殺という殺害方法があります」


おどろおどろしいその言葉に、私は内容の想像がつかず、首を傾げる。


「しかし、呪殺と言っても、何か特別な行動をするわけではありません。占い師の「占い」は狐にとって悪影響であり、占い師に占われた狐は力を失い、衰弱死する。これが呪殺です」


その後、峰さんが追加で話した内容によると、狐はその存在を暴かれるのを嫌い、存在を暴く「占い」は狐の力を削ぎ、殺すのに最適な方法なのだという。


「………………質問なのですが、狐の占い結果は占い師にどう映るのでしょうか?そして先ほどから言及されていませんが、人狼が狐を食べようとした場合、どうなるのでしょうか?」


狐についての説明がひと段落ついたと思った直後、風夜さんが峰さんに質問を投げかけた。


「一つ目の質問、占い師に映る結果ですが、これは特に変わりなく「人狼」か「人狼ではない」かなので、占い師には「人狼ではない」という結果が映ります。

そして二つ目、人狼が狐を襲撃した場合ですが――」


峰さんは重々しい口調で、結論を言った。


「――それでは狐を殺すことが出来ません」

「人狼では、殺せない…………」


となると、狐は処刑か占いで殺さなくてはいけなくなるわけだが、全十名のうち、多ければ昼に一人、夜に一人と一日に二名減ってしまうことを考えると、通常通りの計算ならタイムリミットまでの日数は五日。


狐と人狼を処刑で殺すのなら四日分必要になるし、そうでなく、占いで殺さなくてはならないとなったとしても、人狼を探せるチャンスを一回失うことになるわけだから、なかなかに大きな損失。


「…………何から何まで、本当にはた迷惑な存在ですこと」


淡海さんも丁寧な口調ながら悪態をついた。


「本当、人間はなかなか不利な話だよね。最悪、二日連続で人狼を外して、その夜二回とも普通に人狼の襲撃を受けてしまえば、もう同数だし、そんななか狐も殺さないといけない、なんて。

そもそもなんでこんなことに…………」


如月さんも、仮定の話をしながら、人間側の不平等さに不満を漏らす。


「でも……それでも会議を開かなくては、ただ殺されるだけであることに変わりはないわ」


白杜さんが、前を向こうと、必死に言葉を紡ぐ。


「……その通りだな」

「えぇ、……やらなくては殺される、というのであれば、仕方のない話です。覚悟を決めましょう」


そしてそれに答えて、一条さんと風夜さんが、肯定の意を示す。


「れい、大丈夫?」


皆が話し出したのにもかかわらず、ずっと黙ったままだった私に、隣に座るのあが気遣うように尋ねた。


「……大丈夫です。覚悟は、決まったはずです」


本当は、怖い。

でも生きるために、選ばなくてはいけないから――


「…………各々、思うところはあると思いますが、そろそろ、正午になります。

人狼の目覚めと同じく、異能力者の目覚めも正午。鐘がなったらもうここは戦場だと思ってください。

…………やり残したことがあるのなら、今のうちに」


悲しそうに告げる峰さんに、みんながなんとも言えないような表情を返す。


そんなこと言ってしまったら、皆もっと平和に暮らしたいというだろうし、出来ることなら今まで通りに暮らしたかったというだろう。

だから、皆、やり残したことなんて、何も言わなかった。


何も、言わないまま、鐘がなった。


* * *


(頭が………………)


重く、体の底の方まで響くような鐘の音。

初めは鐘のせいだと思った。しかし考えてみればそれだけではなくて……………………。


『うっ…………』


ちらりと、皆の方を見てみれば、全員が頭を抱えてうめき声をあげていた。

どうやらこの現象は人狼の呪いや、異能力の有無にかかわらないらしい。


けれど、私の頭の中に渦巻き、体の全体に伝わるこの感覚は――――


「頭、いた…………」

「ズーンってくる」


そうして数分みんながみんな、自分の頭痛と戦い、いくらか収まってきたところで、風夜さんが声をかけた。


「全員に、変化もあったようですし、これより初日の会議を始めようと思いますが、異論はありますか?」


「いいや」

「始めて大丈夫だよ」

「どうぞ始めてくださいませ」


数名が返事を返し、その他返事を返さなかった人たちも、その数名の言葉に頷いて、肯定を示す。


そんな村民たちを、風夜さんは一度、ぐるりと見渡すと、小さくうなずいて、言葉を発する。


「それでは、賛成多数ということで――――初日の会議を始めましょう」


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