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花かんむりの眠る場所で 番外編  作者: 綾取 つむぎ
長編番外 人狼ゲーム
14/30

嘘と狂気の宴【1】

普段とは違う世界線で人狼ゲームをやってもらおうという趣旨の長編番外編です。

四章までの登場人物が出てくるので四章読了後に読むことをお勧めします。


エイプリルフールにかつて毎時間投稿をした狂気の名残で一話一話は短めです。悪しからず……。


また、違う世界線ということで育ってきた環境も違うので、皆の考え方や特性が普段と違うところも幾つかあります。


例、真夏さんの人の心の内が読める特性→半分、生まれつきのようなものだけれど、あそこまでの精度で読み取ることが出来るのは貴族社会という環境で育った故だったので、この番外編での真夏さんは「人の心情を読み取ることに少したけた人」程度の能力です。


他、魔法は使えなかったり、のあの保護者っぷりが百倍程度マシにになったりしています。

昔々の遠い昔。何処かに名もない村があった。


名もない村の住人は皆、仲良く協力しあって暮らしていた。――そう、昨日までは。


* * *


「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


神々しい朝日の中、似つかわしくない悲鳴だけが木霊する。同じ村の住人のその声に驚いた私、月乃玲明は慌てて家を飛び出す。


ただ事ではない悲鳴に気がついた他の村の人々も次々と外に出てきているようだ。だが、集まった人は皆、一点に集中している。


「何があったんです……か」


最後の一文字など、声にはならず、息をし損なって出たような小さい呼吸音にも似た音だった。

ひゅぅっと喉に異物が詰まり、気道が塞がれるかのような感覚を味わう。人だかりの中心には――


――血塗れの人が死んでいた。


「……何故、こんなことに」


集まっていた村民の内の一人である風夜凛さんがぽつりと呟いた。


「わからねぇ。……にしたって何でこんな姿で。

死んで、野晒しにして挙げ句の果てにこんな姿にされちまうなんて命への冒涜以外の何ものでもねぇ」


風夜さんの隣にいた一条悠里さんもぽつりと呟く。

……そう、私が絶句した理由は単純に人が死んでいたこと以外にも、もう一つあった。


食い荒らされていたのだ。


皮膚は破かれ、生々しい桃色の肉の色や、黒ずんだ血の色が垣間見える。

腸は引き摺り出され、見る影もなく、胃も脳も、なんなら顔だってズタズタのぼろぼろに引き裂かれていた。


「ゔっ……」

「ミア!!」


ご近所さんでもあり、友人でもある雷山ミアがガタリと崩れ落ちる。恐らく、一番初めの悲鳴もミアのものだったのだろう。今まで必死に耐えていたようだが、限界が来てしまったらしい。


それはそうだろう。こんなものを見たら誰だって気分が悪くなる。私だって、胃の中からふつふつと湧き上がり、迫り上がってくる気持ち悪さがある。


「あ、あ、あぁぁぁぁぁぁ」

「ミア、落ち着いて。大丈夫、大丈夫ですから」


込み上げてくるものを抑え込もうと必死で手を口に当てて蹲っている背をそっとさする。


「ミアの方は私が請け負いますので風夜さんや一条さんは出来るだけ状況を変えないよう現状維持をしつつその方にシーツを被せて差し上げてください。

後は村民の集合を」


どうにか動き出さなくては。と、必死に頭を切り替え風夜さん達に指示を出す。


「そ、そうですね。月乃さんは雷山さんの方をよろしくお願いします。その他は私たちに任せてください」

「こっちは任せろ。集合場所は追って伝える。とりあえず今は雷山をこの場から引き剥がせ」


状況確認もままならなくなってしまったため、とりあえずその場はそれきりで各々役割分担をして解散となった。


* * *


「……皆さん、集まってくれてありがとうございます」


数時間後、一条さんに呼ばれて集会場へと来ていた。

集会場はお城じみた教会のような場所であり、しかしその実内装は会議室に近い。


中央に丸い大きな机があり、それを囲むように村民の席がある。


私が着いた頃には他の村民はミアと、あと一人を除いて全員が集まっており、私が入るなり風夜さんより話題が切り出された。


「火急の要件ですので、ここで司会役として立つ正当性もない私ですがお目溢しいただけると幸いです。

挨拶も省略致しますが早速用件に移らせていただきます」


たしかに一村民である風夜さんが司会役に回る、これといった何かはないが、そこに突っかかる程、猶予がないことを、事情を知らない村民たちも、空気で感じ取っていた。


しかし、こんな場でも最小限の手間に留めながら緊急集会の流れを踏んで、礼儀を守る風夜さんだ。元々誰も文句を言わないだろう。


「さて、ご存じの方も、まだこの場にて初めて知る方も、いらっしゃるかとは思いますが…………本日早朝、中央広場にて雷山ミアさんが遺体を発見致しました」

『はっ!?』


数名の村民が驚きに声を上げた。


「人が死んだって!?誰が、何で、いつ…………!?」


一番に焦りの表情を浮かべ、がたっと立ち上がったのは如月由良さん。私とも同い年の村民で、普段鬱々としていたり、自信なさげな様子はあれど、喜怒哀楽はハッキリした人。


そんな如月さんだから、話を聞いて取り乱すのは必然とも言える……が。


「……落ち着きなさい。如月さん」


今日は、それを嗜める声が響く。


「今はお姉様が説明されている時間ですわ。貴方の焦りもわからないことはありませんが、色々な情報が知りたいのなら、お姉様の話に耳を傾けるのが一番賢明かと」


冷静な口調で、しかし如月さんに寄り添うように言葉を紡いだのは、淡海真夏さん。


今、司会役を担っている風夜凛さんとは古い付き合いだが淡海さんは風夜さんを信仰しているため、友人というよりも、神様と教祖様。


……と言ったような不思議な関係性であり、風夜さんに関することとなると、タガが外れたりもするが、基本的には非常に冷静で、知性的。だがそれでいて人の心に寄り添うことを忘れない優しい人である。


「…………すみません」


そんな、淡海さんの言葉を受けて如月さんは少し落ち着いたようだ。一度肺に溜まった空気を吐き出すとぺこりと頭を下げて、席に座った。


「お言葉を遮ってしまった非礼をお詫び致しますわ」

「いえ、お気になさらずに」


そして、二人で軽いやりとりを交わすと、風夜さんはまた口を開いた。


「ご遺体が見つかった、というところの説明から続けさせていただきたいと思います」




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