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KOMION  作者: 猫のような兎
11/16

観光ってか見学?


ここに来るまでの途中から、植物が全く無くなった。

水はある。だが植物が無い。


そんな明らかにおかしい場所を通って、着いたのがこの国。


屋台が並び、賑やかな人々。

少しでも歩けば肩がぶつかる程度には込み合っていて、至る所から良い香りが漂う。


「ヤバい。なんか買いたくなるっ!」

「僕、奢りましょうか?」


やめてくれ。こんな小さな子に奢ってもらうなんて惨めにも程がある。とレイスがうなだれるのを横目に見つつ、ヴェリアに訪ねる。


「祭りか?」

「いえ。この国は一年中賑わっているんです。」

「この国、観光名所として結構有名なんだぜ?」


バイギヲアという国らしい此処。

屋台の他に、闘技場があり、毎日大会が開かれているという。

ヴェリア達はそれに出るのが目的なのだとか。


賑わいは嫌いではない。

…だが、此処にも全く


「草花がない」

「…じゃあ次の国行くか?」

「ちょ…出るの早くないですかっ?」


ヴェリアが噴いた。


「見てみたかっただけだし、満足さ。こんな人混みでショウが迷わない訳がないしな。俺がしんどい。」


いや、超しんどい。と言い直したレイス。


異議はない。

全くその通りだ。

迷うに決まっている。


「て、ちょっとは申し訳なさそうにしろよ!」

「すまない」

「取って付けたように言うな!」

「矛盾だ」

「だまらっしゃい!」


脇腹に一発入れられた。


「…でも、大会の賞金って14万9800円だよ?」


絆硫が借金返済に良くない?と首を傾げる。

…借金を気にしてるのはレイスだ。

俺は興味ない。


レイスが苦笑いを浮かべた。


「14万9800円って、いやにリアルな数字だなオイ。別に15万円でいいじゃんねぇか。なんで200円ケチってんだよ…」

「リアルな数字とはどんな数字だ」

「あんたは少し黙れアホショウ」


俺に肘鉄を加えながら、レイスはゆっくり首を振った。


「確かに魅力的だけど。俺、大会系はちょっと、な。ショウ、あんたは?」

「………」


並ぶ屋台を見る。

 かき氷か。今は夏なのか?…おでん味?

ほう、新しいな。


「…おーい」

「………」


仮面屋…あれはなんだ?マグロか?

その隣は…カツオか?

ヒラメなら見たことがあったのだが…


「おんどりゃあ花オタぁ!無視すんなよ!」

「少し黙れと言われた」

「……言いましたよ。ええ言いましたともコンヤロウ!」


ヴェリアが苦笑いを浮かべながら間に入る。


「ショウさんは植物が無いところに興味は無いんですよね?」


…そうは言ってないが。

まぁ、いいか。なんでも。

ため息をつきながらレイスが片手を上げる。


「…てことで、俺たちはもう出るわ」

「意外です。レイスさんは、お金にパクっと食いつくと思ってましたから…」

「ヴェリアさん…。そんなショウが道端の草を見つけたみたいにゆーなよ…」


失敬な。

ちゃんと毒が無いものを選んでいる。


「じゃ、ショウ。さっさと行…のわっ!?」


突然地面が揺れる。

わざとらしくレイスが体制を崩し、近くの街頭に掴まった。

バイヲギア国民たちもよろめき、ざわざわと一瞬だけ声がいっそう大きくなったのの、

何事もなかったようにまたお祭りムードに戻る。


「おーびっくりした」

「地震か?」


結構な揺れだ。震度3はあっただろう。


「なんだか国の人たち、慣れてますね」

「僕、地震なんて久しぶりだよ」


日本は地震ばかりの国だったし、震度3位ならあまり動揺はない。

また地震か、最近やけに多いなと思うだけだ。

 この国の人たちもそうなのだろうか?


「そのうちどーんと大きいのが来るかもしれませんね」

「おはしだな」

「だからあんたは話が突拍子もないんだって…」


押さない、走らない、しゃべらない。

俺の小学校はおかしだった。かは駆けない。


「しばらく滞在するんだよな?気をつけてな」

「うん。ありがとう。レイスお兄さん」


レイスが絆硫の頭をわしゃわしゃなでる。


「俺の相棒ももっとこう可愛げがあればよかったのになー」

「可愛くなって欲しいのか?」


俺に可愛げ足しても気持ち悪いだけだと思うぞ。


「東にパナニフ国があります。行く場所が決まって無いならそこはどうでしょうか?」

「あんまり発展はしてない国だけどショウお兄さんは好きそうなとこだよ」


植物は豊かなんだ!と絆硫がポケットに手を突っ込みながら笑う。


「じゃ、とりあえずそこ向かうか?」

「分かった」


どこでもいい。


「世話になった…っていうか迷惑かけたな」


アホ勇者が。と続けるレイス。

迷惑、かけたか?記憶にないが。

…迷惑をかけることの無い人などいないか。


「ううん。楽しかったよ」

「ははは、そりゃ良かったよ」


俺も旅とは楽しいものだと思う。

毎日が飽きない。


「また会いましょうね」

「ああ。大会、がんばってくれ」


ヴェリアに頷き、背中を向ける。

と同時に隣からぐわっと首を絞められる。


「ほーら逆だ、迷うなよ?」

「む?」


レイスがもう一度二人に手を降り、首を掴んだまま、進み出す。

どうでもいいが進むのが早い。

そんなに人混みが嫌か。

ふとレイスが空見上げた。


「しかし、あの二人なんで大会に出るんだろうな」


 ………。


「…意外に戦闘狂なのではないか?」

「……いやないだろ」


 なんだっていい。

世の中不思議が多いんだ。

気にしても意味がない事も多いんだ。

 レイスさん、子守がんばってくださいねー!と遠くから聞こえた。


「おーよ!頑張るぜー!」




失敬な。




「レイス、植物が何もない」

「ん?あぁ、そうだな」

「異常だ」


草一本生えないなんてあり得ない。


「この国は異常だ」

「はいはい、あんたが花好きは分かってるって」






「…異常なんだよ。レイス」












    Because what to be alive now is supported by someone and exists.

        The person cannot live only by one person.

植物のない所って、なんだか息が詰まります…。

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