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KOMION  作者: 猫のような兎
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晴れのち時々勇者

ご閲覧ありがとうございます。

初めての作品ですが、楽しんでいただけたら幸いです。

 主人公最強が嫌だ、ご都合が気に食わない、そしてあまりいないと思いますが、花が嫌いな方、栄養という言語に胸焼けがする方は、申し訳ありませんが読まない方がいいかと思います。

精一杯、頑張らせて頂きます!

かきーん。


地味にいい音が響き、石が飛んだ。


よろよろと近付いてきていたミイラのような謎の生命体A(魔物)の足が消し飛ぶ。

たかが石。されど石。

とはいっても普通は無理。


「む?」


金属バットを打った形のままに、足を失っても今度は歩腹前進に向かってくるミイラを眺める。


バットを下ろし、青年は無表情に呟いた。


「どう見ても筋肉が無さそうなのだが…。腕の力のみであの速さで進めるとは…。」


凄い気力だ。


なにやら感心している青年。

だがそこにはツッコミを入れれるものはいなかった。


森をふらつく事一週間とちょい、

最近はようやく、ここはどこなのだろうと考え始めた。


こんな広い森、管理が大変そうだ。

 日本は意外に広かったのだな。


「うわああああっ!」


遠くで叫び声が響く。

人に暫く会っていなかった彼は会話が出来る存在だと信じ、その方向に全力で走っていった。


…途中、ミイラを引き飛ばしながら。





---------------




今の状況に悩んでます。


「おいてめぇ、とりあえず金だせや。」


やっとコミオンを見つけたかと思ったら、突然ナイフを突き付けられての一言がそれ。

 しかもちょうど国から離れたころに言うし。

まいったなぁ、とおろおろしてればオークが現れてみたり。

コミオンがふっ飛ばされてみたり。

思わず尻もちついてみたり。


三メートルほどのそれを見上げながら絶望にあいさつした。

 こんにちは。できれば早々にお帰りください。


あれか。厄は重なって起きるっつーあれ。


と、人影が落ちてくる。

 どこからか降ってきたその青年は軽々と着地し、オークに向き直る。

風も無いのに鮮やかな緑の髪が揺れた。

 男の俺から見ても、お~。と見とれてしまう神秘さがあって…

でも、手に持っている長細い、銀色の棒のようなものが何とも言えない雰囲気を醸し出していた。


彼は無駄の無い動きでその棒を構え…



…投げた。


回転せず、槍投げの要領で真っ直ぐ飛んでいったそれはオークの眉間に刺さり、音をたててその巨体は地に伏せる。

でもさ、あの棒、尖ってなかったよな?

 どちらかというと、鈍器なんじゃねぇの?


オークを一瞬で倒した青年が、俺にゆっくりと振り返る。

 なんとなく姿勢を正す。座ったまま。



「……知ってるか?」


彼がゆっくりと口を開いた。

無表情に真っ直ぐな黄色の瞳をそらさず。


「緑は目に優しい」


…コイツは何を突然。


「だが…、…黄色に緑はないと思わないか?」


意・味・不・明。

あまりに真剣な口調に唖然とする。


なんなんだコイツっ!?


勿体無い事をした。金属バット、丁度良い重さだったのだが…仕方ないか。

その緑の男はそう呟きながら、俺に手を差し出す。


「あ、ありがとな」

「…いや、すまない」


彼の隣で倒れている盗賊なコミオンに目をやった。

まだ息はあるようだが、血が流れすぎてる。

助からないだろう。


「まぁ…コミオンだけど、アルサーダムを出る為に取り敢えず組んだ奴だし。親しくはないからな」


そう言ってから気まずそうに目線をそらした。


「しかも、人員ミスして…。コイツ、盗賊でさ…。参ってたとこだよ。」


命ぐらいは助けたかったけどな。と笑っておく。


「そうか。盗賊。日本も物騒になったものだ。」


ニホン?どこだよ。


「俺はレイス。レイス・カーバネルだ。あんたは?」


名乗り、俺は笑顔で差し出された手を受け取る。


伊藤(イトウ) (ショウ)だ。」


彼は無表情だった。





--------------------------------




「あんた…明らかに異世界人だろ」

「…何?」



レイスが道案内にここから一番近い国ハカリを目指して森を進む中、そういやあんたのコミオンはどこだ?との会話から発展した結論。


この世界では国外に出る時は常に二人以上で行動しなくてはならない。

というか近くに自分に敵対する者以外の誰かが半日以上近くにいないと世界に存在をもみ消される。


国内には特殊な結界がかかっているので大丈夫らしいのだが。

だから国外に出る時は相棒(コミオン)を作り、常に行動を共にしなくてはいけない。

普通は。


「でもあんたは一人歩きで一週間半?しかも、コミオンを知らない?ニホン生まれ?金属バット?思いっきり、そりゃ絶対この世界のもんじゃねえなっ!?ってなるわなっ!」


気づかねえあんたが逆に怖えよっ!とレイスは一気に言い切ると、同情するようにぽんと翔の肩に手を置いた。


「オメデトウ。あんた、勇者だ。」

「…そうか。」


日本ではなかったのか。

やけにでかい犬やら動く木やらが出るし、治安が悪いと思ったわけだ。

 良かった。日本もとうとう末期だと思い、危うく心配しそうになっていた所だ。

翔は一人、納得した。


「あんた、色んな意味で勇者だな…。」

「ありがとう」

「誉めてねえよ?」


レイスは溜め息を軽くつき、真面目そうにお馬鹿な勇者に世界について説明をすることにした。

 命の恩人だし、大体ここで置いて行かれては俺が世界に消されてしまう。

コミオン、死んじまったし…。


「いいか?ここはアイソレーション。あんたらの世界がどこかは知らねえが、違う世界だ。」


ヘェルサーダムとカンダフェラの2つの王国を中心に分かれているこのアイソレーションは決まった周期はないがたまに異世界から人が降臨する。

彼らは皆、驚異的な身体能力と圧倒的な魔力、そしてそれぞれ特殊能力があると言われていた。

彼らは勇者と呼ばれ、魔王を倒すべく使命がある、と王国は言う。

 どうやって来るかとか、どこから来るかとか、知らん。


「でも、たまに魔王がいない時にも来るんだよな。勇者。お前だって前回勇者が5年前に来て魔王倒したばっかりで魔王いねぇし。」


倒せねえじゃねえかはっはっは。と笑うレイス。

 しかもたしか今、翔以外にもいたはずだ。勇者。

ふと森を抜けた。明るくなり、マイナスイオンを感じるもののキノコが喜びそうな、じめじめとした空気が一瞬でさわやかになる。

 少し開けた空間。草原というより原っぱという名称が似合いそうだ。

翔が顎に手をやり、青空を見る。


「つまり…、俺は自由にブラブラして良いのだな。」

「いやいや」


お前帰りたいとかそういう発想はねえのかよ。とレイスは内心思いつつ、

既に城の一部が見えている、本来は1日かかるはずのハカリを親指で差す。


翔が魔物を蹴り上げ、踏みつけ、乗り回したお蔭でだいぶ早く着いたようだ。


「一応王様に会っとけよ。勇者は契約者貰うのが慣わしだ。」

「契約者?」

「姫様らしいぜ?勇者にとってのコミオンだ。」


だがコミオンがなくても翔は一人でふらつきまくってる。

コミオン、必要なのか?


「ともかく勇者コミオンになるには契約が必要で、契約した人は魔法が自由に扱えるんだとよ」


魔力というのは誰しも持っているか、人間で魔法を使えるのは、勇者、勇者のコミオン、勇者のコミオンの血縁者(魔法使い)、そして限られた僧侶だ。

 その僧侶も王家の者が大半を占める。


「…自分の血筋に魔法使いが欲しいから、勇者のコミオンにさせるのか。」


翔のちょっと考えた発言に思わず仰け反る。


「なんだ?」

「いや、あんた一応は頭回るんだな。」

「頭を回したら痛いと思うが。」


レイスは思った。

前言の撤回は許されるだろうか?

目の前の緑頭をうつろな目で見てやる。


「…まぁ、とりあえず城まで送ってくな。城なら色々説明も聞けるだろうし、補助金だって受け取れる。悪い話じゃねえだろ」

「…分かった。頼む。」


任せろ!とレイスが胸を叩く。

 

 彼らは心地よい風が吹く原っぱを進み始めた。

 





                 be implicated or implicate ?

おそらく金属バットは元の世界から一緒に旅行しに来ていたのだと思います。


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