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第58話 いつもの三人

「ね、提案なんだけど、私たち三人で先名(さきな)さんに日頃の感謝を伝えるのはどうかな?」


「俺も先名さんのために、何かできないかと考えていたところなんだよ」


 二人に報告をした帰りの車の中で、俺と彼女は相談をしている。


 俺は先名さんが心配なんだ。他の人はどうか知らないけど、俺は先名さんが「とっても寂しがり屋なの」って、弱音を漏らしたことを知っている。


「考えてみたら俺、先名さんの趣味とか好みとか知らないんだよな。何か知らないか?」


「うーん、私が知ってるのは意外とインドア派な部分もあるってことかな?」


「そうなのか。確かに意外ではあるな」


「だからいつもは加後(かご)ちゃんが率先して、先名さんを遊びに誘うことが多いよ」


「それなら加後さんにも聞いてみようか」


「うん、電話してみるね! ……って、今の加後ちゃんは話せる状態じゃないね」


「そうだった、泥酔のステータス異常にかかってるんだった。明日にでも相談しておいてくれないか」


「うん、そうするね!」


 そして三人で相談した結果、スーパー銭湯で日頃の疲れを癒してもらおうということに決まった。



 そして土曜日。今日は四人で出かける日だ。花見とスイーツ店めぐり以来だから、三回目になるのかな。


「みんな今日は私のために集まってくれたの?」


 俺が運転する車の後部座席に座っている、先名さんが全員に問いかけた。


「そうですよ! 私も加後ちゃんもいつもお世話になってますからね!」


「私もです! みんな先名さんが大好きなんですよ! ねっ、桜場(さくらば)さん!」


 俺が先名さんを大好きって言うのは、少し違う意味合いになりそうなので、無難な返事をしておいた。


「みんなありがとう! ごめんね、時間を使わせてしまって」


「何言ってるんですかー、私も加後ちゃんも桜場も先名さんのためなら、いつだって駆けつけますよ!」


 彼女が三人分をまとめて言った。確認なんていらない。そんなことをしなくても、誰一人として反対する人なんていないと断言できるから。


 俺はてっきり先名さんからの言葉が返ってくると思ったけど、聞こえてきたのは加後さんの声だった。


「あれ? 先名さん、もしかして泣いてるんですか?」


「だっ、だって……。こんなにも私を想ってくれるなんて、本当にいい子たちと出会えたなって……。みんな本当にありがとう」


「先名さん……」


 女の子二人も泣きそうな声で先名さんに声をかけた。俺ももらい泣きしそうになったが、全員を無事に目的地まで送り届けるため、より運転に集中した。


 無事にスーパー銭湯に到着した俺達は、予約してあった和個室へと入る。


「あら、いい雰囲気ね!」


「そうですね、旅館みたいで落ち着きますね。ね、加後ちゃん」


「旅行に来たみたいですー」


 ほんのりとした畳のいい匂いや、ガラス戸の向こうに見える自然が、普段とは違う落ち着いた世界に連れて行ってくれる。


 昼食をとり、部屋でのまったりタイムを過ごしたあと温泉に入り、それから館内着で岩盤浴へと向かう。


 混浴といっていいかは分からないけど、同じ部屋でたっぷりといい汗を流した。水分補給のため俺が一時退室すると、偶然にも三人と一緒になった。


 三人とも汗で髪の毛が肌に張りついており、どこか(つや)っぽい。館内着にも汗で濡れたあとがあり、どこかイケナイことを連想させる。


「ふぅ、やっぱり暑いわね」


「先名さん、なんだか色っぽいですね。私と加後ちゃんも見習いたいです」


「先名さん、私ちょっとだけ触りたいですー」


「加後さん? 触るって、私を?」


「そうです! だって着けてないんですよ? いつもよりフカフカに決まってるじゃないですかー! えいっ!」


「あっ……! ちょっと加後さん!? んぁっ……! んんっ……! もう! こんなところで! えいっ!」


「へひゃあっ!」


 お互いの超膨らんだ部分でお(たわむ)れになる、美人お姉さんと可愛い女の子。俺のいない所でもこうなのか? そしてなんと加後さんは酔っていない。完全にワザとですね!


同島(どうじま)、やめさせてくれないか」


「私だってちょっとはあるんだからっ……!」


 いつものやつ。なんで三人そろうとこうなるんだ。この時ばかりは俺、いないことになっているのだろうか。


 夕食も四人でここでとり、満足して帰ると思っていたけど違う。今日はこの部屋で泊まりなんだ。


 美人お姉さんと可愛い彼女と可愛い後輩と同じ部屋で寝る。きっと寝られない。

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