表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/70

第27話 同期が先輩に聞いた

「だって桜場(さくらば)くんのことを話す同島(どうじま)さん、とっても楽しそうなんだもの」


「えっ!? そうですか? 自分じゃ分からないんですけどね。そういえば昔の桜場は酷かったなと思うと、面白くなっちゃって」


 同島から新入社員研修の時の話を聞いていた先名(さきな)さんがそう口に出し、同島が返した。


 同島の楽しそうな表情、俺も見たい。でも俺は今、加後(かご)さんとコッソリ聞き耳を立てている状況だ。つまり同島の楽しそうな表情は先名さんが独り占めしている。


「それは同島さんの自覚は無いけど、どこかで桜場くんを意識しているということじゃないかしら。何かきっかけがあったんじゃない?」


「最初にも言いましたけど、大した話じゃないですよ?」


「私にとっては十分に興味深い話よ」


「そうですか? それなら話しますね。研修が終わっていざ本格的に今の部署で仕事が始まると、電話対応のツラさが思ってた以上だったんです」


「そうね。ある意味お客様から怒られることが、仕事みたいなところはあるかもしれないわね」


「それでも友達と遊んだりしてストレス発散してたんですけど、きっと見た目に出ていたんでしょうね、社内で偶然桜場と会った時に声をかけてきたんです。『最近疲れているように見えるけど大丈夫?』って」


 その時のことは俺も覚えている。あの同島がとても疲れた顔をしていたように見えたんだ。


「私、少しビックリしたんですけど、研修で少しは仲良くなれたかなと思ってたので、事情を話したんです。すると桜場は、『そういうことは誰かに話すだけでも気が楽になったりするから、俺で良かったらいくらでも話を聞くよ』って言ってくれて」


 今思うと少し恥ずかしいセリフかもしれない。


「それならと思って、私からランチに誘いました。まあ桜場だし、変な意味には思われないだろうなって」


「そうよね、桜場くんってなぜかそういった安心感があるのよね」


「男の人の中には、求めてないのにアドバイスしてきたりする人がいますよね。私の場合はそれがちょっと苦手で。でも桜場は親身になってくれるというか、普段はあまり見せない笑顔を交えながら励ましてくれて、最後までしっかりと話を聞いてくれるんです」


「私もそうしてほしいかな。当たり前のようだけど、ただ話を聞いてくれるだけでよかったりするもの」


「それから少しずつ、仕事のグチを聞いてもらうため桜場と食事することが多くなって、お酒を飲むこともあるようになって、特に最近は合う回数が増えてましたね。と、まあそんな感じです。普通の話ですよね」


「人を好きになるきっかけって、案外そういったことじゃないかしら。会っていくうちにいつの間にかとか、なんとなくその人のことを考えてしまうとか。一目惚れだってあるくらいなんだから、特にきっかけが無いことだってあるはずよ」


「そうなのかもしれないですね。……って、私が桜場を好きだなんて言ってないですよ!?」


「同島さんは桜場くんのことどう思ってるの?」


「えっと、どうかな? 気軽に飲みに誘える貴重な人材……ですかね」


「人材って、企業じゃないんだから。同島さんは桜場くんとはずっと今の関係でいいの?」


「うーん、どうだろう。最近になって、そういえば桜場から誘ってくれたことは無いって気がつきました。なので、桜場からも誘ってほしいかな、とは思います」


 そういえばさっき加後さんからも聞いたっけ。


「先名さん、私、桜場のこと好きなんでしょうか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ