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第16話 同期の知らない一面を見た

 加後(かご)さんを同島(どうじま)のベッドに寝かせた俺が帰ろうとすると、同島が手料理を振る舞うから感想を聞かせてほしいと言ってきた。


 そして『今日は泊まってもいい』とも取れる発言も。まあそんなわけはないから、その発言については置いておこう。


「同島って料理得意なんだな。知らなかった」


「一人暮らしなら自炊しないとね。桜場(さくらば)は料理するの?」


「同島、知ってるか? 世の中にはお湯を注いで3分待つだけで出来上がる、魔法のような食べ物があってだな——」


「はい、もう大丈夫でーす」


 ツッコむのも面倒だと言わんばかりに、同島の手のひらが俺の前に突き出された。


「つまりほとんど料理はしないってことだね」


「しないわけじゃないぞ。ただ出来上がりが激マズになるだけだ」


「食材がかわいそう」


「念のため言っておくが、きちんと完食するからな」


「何を作ったのかは聞かないでおくね……。私が作るから、今日くらいはきちんとした食事をとるといいよ」


「そう言ってくれるならお言葉に甘えようかな。ありがとう」


 それから同島はキッチンへと向かった。なので、俺は一人残された。暇だ。話し相手でもいればいいが、加後さんはさっき眠りについたばかりだ。こんな中途半端な時間に熟睡して大丈夫なんだろうか。


 ちょうど夜中に目が覚めるんじゃないか? なんか暇を持て余した加後さんに、同島が叩き起こされる様子が目に浮かぶ。


 一人でできることといえば、スマホを見るくらいしか思い浮かばない。こんな時はWeb小説を読むに限る。さて、今日はどんな愉快なタイトルの作品が見つかるかな?


 しばらくするとキッチンの方から、いい香りがしてきた。どうやらカレーを作っているようだ。少しだけキッチンを覗きに行くと、エプロン姿の同島が鼻歌混じりで鍋の中をかき混ぜているようだった。


 もともと明るい性格の同島が楽しそうに料理をしている姿は、いつもよりいっそう魅力的に見える。


 俺はそんな同島の姿につい見とれていたようで、同島に見つかってしまった。


「もう、そんなところで見られるとビックリするじゃない」


「ごめん、驚かせるつもりは無かったんだけど、楽しそうな同島につい見とれてしまった」


「なっ……、何を言ってるの!? もともと今日はカレーにしようと思ってて、余り過ぎるのも困るなぁと思ってたところに、桜場と加後ちゃんが来てくれて助かったと思ってるだけだからね!」


 同島がここまで慌てるのは珍しい。というか初めて見たかもしれない。


「それよりも加後ちゃんを起こしてくれる? このまま熟睡すると夜中に目が覚めちゃう」


 同島からそう頼まれたので、加後さんを起こすためベッドの横まで行った。加後さんはやっぱり熟睡しているようだ。


「うーん、もう食べられましぇ()ーん」


 またベタな寝言を言う加後さん。夢の中で一体何を食べているのだろう。目が覚めたら即、カレーが待っているというのに。

 その後、俺はなんとかして加後さんを起こすことに成功した。


「あれ? 桜場さんじゃないですか」


 目を覚ました加後さんは一応、まともに話せる状態になっていた。


「何でこうなったか覚えてる?」


「ちょっと待ってください、思い出します」


 加後さんは(あご)に少し手を当てて、考え始めた。


「また私何かやっちゃいました?」


 無自覚系? 今日は覚えていないのか? 俺は加後さんにいきさつを説明した。断片的には覚えているようだった。


「そうだったんですか。ごめんなさい、ご迷惑をおかけしました」


 やっぱり加後さんには礼儀正しい一面がある。なので全く怒る気にはならない。


 ここで同島が食事の準備を終えて、ローテーブルに三人分のカレーとサラダが並べられた。


「桜場、帰る前に好きなだけ食べてね」


「えっ!? 桜場さん、今日帰るんですか?」

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