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【3月】クラゲはぷかぷか漂う夢を見るか

“あの”メメクラゲに遭遇するとは思っても見なかった。


油断した──完全に油断しきっていた。


メメクラゲに右手の指先を噛まれてしまったせいで、私の人差し指、中指、薬指の三本は今にも千切れそうだ。


このままでは嘉木カラ子から届いたLINEに返信が打てない。


嘉木カラ子は恐ろしい。


指を三本失うより、やつの機嫌を損ねる方が私には何倍も恐怖なのだ。


怯えた私は都営地下鉄新宿三丁目駅から偶然停車中だった特急火の鳥に乗り込むと、明日の反対、昨日の方角へ向かった。


(このまま仕事をサボろう!)


無事、南海きのう駅に到着し地上へ出ると、地球では既に一晩が経過しており、太陽は東に向かって登っている。


この近くには地元でよく通ったラーメン屋があるのだ。


私は、そこで鶏白湯ラーメンを食べる事以外何の喜びも持たぬ社畜。


きっともうすぐ私の三本の指はこのまま千切れ、職と命を失う事になるだろう。


タイムリミットはあと僅か。


登っていく陽を見て、私は走り出した。


道行く人を押し除け跳ね飛ばし、道端で行われていたフラッシュモブの真っ只中を駆け抜け告白チャンスをめちゃくちゃにしてやり、犬を蹴飛ばし猫も蹴飛ばし、登りゆく太陽の六千倍早く走ったら……流石に衝撃波も出るわな、さっき蹴飛ばした犬や猫は、蹴飛ばされたまま私の発する衝撃波によってさらに吹っ飛び、吹っ飛んだ先でまた蹴飛ばしては発生した衝撃波で吹っ飛びを繰り返し、最終的にどうなったかと言うと、画面端で浮きっぱなし状態になった。やがてライフゲージがゼロになり、K.O。


──さて、ラーメン屋に辿り着いた私は店員の案内を受けて席に座り、これを食べて終わりだと思っていた鶏白湯ラーメンが運ばれてきた頃には三本の指は既に身体を離れて箸を持てなくなってしまいどうする事もできず、のびてゆくラーメンを眺めたまま失血多量にて絶命した。


あーあ。


メメクラゲに出会わなければ……と、後悔するばかりである。

文芸サークル『むちゃむちゃ海月味』のInstagramアカウント(https://www.instagram.com/muchamucha_kurageaji?igsh=NndteGl1N29obmUx)にて不定期連載中の『きまぐれ!むちゃくらマガジン』3月の部にて掲載されたものです。

テーマは「くらげ」。

Instagramでは他作家による作品も掲載!

是非是非、よろしくお願いします。

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