今現在、自称マレーシア在住の高額所得美女とLINE中。
果たして結果はどうなのか、俺が信じた相手は実在するのか?
リアルで宝くじの高額当選を得るより、稀な確率だと思う。そんな奇遇な事が有るのかって?
……有る。しかも、今現在継続中なのだから。
おはこんばんちわ、稲村某で御座います。小説書いてねーのかって? いやいや書いてますよ。但し、今している事の方がきっと皆さんの興味を惹くと思って停止中なんですよ……ぐはっ!! 内臓に直接ダメージが……。
さて、そんな茶番はさておき、本当の茶番劇を御披露目しましょうかね。タイトル通りですが。
今から六日前、稲村某のTwitter(現X)にフォロー通知がやって来ました。おやおや小説書きのお方かな? と開いてみると、
【RINDA(仮名)さんがあなたをフォローしました】
と、嬉しいような嬉しくないようなお知らせが。先ず、明らかに外国籍っぽい日本語訳な自己紹介。それだけで、稲村某の危機管理システムが励起されました。だって怪しいんだもん。
だがしかし、稲村某は常に来る者は拒まぬ主義。しかも相手は女性(たぶん)である。何を拒む必要があるのやら(おい危機管理システムはどうなった?)。そんな訳で逡巡の時間は瞬時に過ぎ、同意ボタンをポチーッと押していました。
「LINEしませんか?」
ちょっとだけメールのやり取りを経た後、稲村某にそんな揺さぶりを掛けるRINDAさん。いや、流石に怪しいでしょ? ……承ったけど。
それから、RINDAさんとはLINE上で楽しいやり取り。彼女がマレーシア滞在で、日本語に興味があり、しかもいつか日本に行ってみたいと教えてくれる。32才、独身。LINEのマイページ写真はとても美人。ああ、そうさ中々の美人だったのさ!
一日、また一日とLINEを経由して楽しいやり取りに明け暮れた。友達とゴルフに興じ、負けて食事を奢った写真や、夜に出歩いた市中の喧騒の動画。ああ、異国情緒溢れるねぇ……。
と、そんな彼女が突如「私は兄の投資グループと共に資産を運用し、多大な利益を上げた」なんて不穏な発言をする。いやいや、あなたがお金持ちだって事は判ってるから、どうかそのまま天真爛漫に日本行きたい、とか言っててくれよ……。
それから暫く経て、帰宅してからのメールの最中に、自分が元カレの韓○人に裏切られ、ビットコインを入れていた口座を一切残さず奪取されたとか告白してくれたのだが、その話の真偽は判らない。ただ、彼女と話をする度に投資の話が良く出るようになる。金なんて知らん。ただ、貴女が存在するだけで良いのだから……。
そして、遂にその時が来た。
「私は、あなたが投資に参加する必要は無いと思います。ただ、アルバイトに時間をかけて貴重な時間を無駄にするのは止めましょう」
と、RINDAが送ってきたのだ。その瞬間、稲村某はキレた。何故かって? その前に自分から「私はマレーシアに渡って日本食の素晴らしさを伝えたいのです」と書いたのに、そんな返答をされたからだ。RINDAさんよ、あなたは私の情熱を投資話でうやむやにしたんだよ……?
そろそろ本気出そうか? こちらも教科書的な表現に飽き飽きしていたんだ。
自動翻訳が効かない文章を見せてあげるよ。
日本語の深淵を覗いてみるかい?
私は稲村某。文章を介して老若男女分け隔てず交わり、字を操り文を組み立て言葉を編む。
……そんな文章を数分間で十文節以上も送った結果、
RINDAは「あなたの文章は支離滅裂で理解できない」等と言ってくる。いやいや、今まで稲村某が書いて送っていた「私はあなたの清廉な行いに共感しました」みたいな方が、自分的に理解できないっつーの。
そうして膨大な文章を一気に投入し続けた結果、相手は「今言う事は有りません」と折れた。つまらん。
今朝、稲村某は昨夜の非礼を詫びた。ただ、ひたすらに詫びたのだ。感情的な文章を一方的に送ったのは自分の落ち度だ、出来るなら元の安寧なやり取りに戻したい、と。
そして、返答が来た。余りにも簡潔に「あなたの感情的で攻撃的な言葉が、私を傷付けた」と、そんな文章が返ってきたのだ。だから、仕事が終わったらキチンとやり取りしたい、と答えてから、休憩を終えて仕事に戻った。
夜になり、帰宅して稲村某はこうメールした。
「私は真実が知りたい」
「簡単な事で、誰にでも出来る容易い方法です」
「時計を背景に薬指と親指で輪を作って写真を撮って欲しい」
その文章と共に、テレビの上に置いてあった目覚まし時計と自分の手を写真に撮り、RINDAに送ったのだ。
「あなたは私を信じていない。そんな相手とやり取り出来ない」
ああ、そりゃそうだ。だが、それは俺も同じなんだよ。
「自分の顔を写真に撮れるのに、簡単な写真は出来ないの?」
「私はあなたを信じたい。だから私は自分の写真を送った。何故あなたは同じように送れないのか?」
それからRINDAはぐだぐだと返答を繰り返す。あー、もう面倒だな。
「あなたは私が情熱と誇りを籠めて【マレーシアに日本の食文化を広めたい。私の技術と魂を引き換えに奉仕したい】と送ったら【それを解決するには資本が必要だ。アルバイトで時間を無駄にするのは勿体無い】と答えたのだ。だから私は憤慨したのだ」
「あなたは自分が成すべき義務を金で雇った相手にさせるのか?」
「あなたは私の誇りと魂を踏みにじったのだ」
「私は投資より、自分の培ってきた技術を通してマレーシアに日本食の素晴らしさを広める事の方に興味が有ります」
「私にはその覚悟がある。もし、あなたが望むなら今すぐマレーシアに行きます」
そう、書いた。そして更にこう記したのだ。
「あなたは日本人の本質を、日本人の職人気質を理解していない」
「私は以前、指先を切って怪我をしたが、5日後に仕事に復帰した。無論、傷口は癒えないままだったが、絆創膏を貼って仕事をした。少し触っただけでも激痛が走る中、時には違う指先を必死に使いながら職務を全うした」
「何故か? それが日本の職人としての本懐だからだ。誰かの役に立つから、その一筋の光に導かれて職人は職務を全うするのだから」
「今でも親指の端は爪が生えないが、そんな事は笑い話にしている。あなたには理解できないだろうが」
「だから、もしあなたが望めば私は全身全霊を籠めて職務を全うする」
「年間1億円以上の売上を出す店で十年以上働いてきた自分が、です。嘘では有りません」
「七本の包丁と、共に」
RINDAは、あなたの思想は過激過ぎて対応出来ない、と言葉を濁した……けっ、根性無しめ。
「そんな御託はいいから写真はよ」
「いいから写真はよ」
そう畳み掛けたが、最後の二つには未だに既読は付かない。うーん、写真はよ、のはよが翻訳出来ないのか? 早く写真見たいなー、それでマレーシアに呼んでくれないかなー?
【マレーシア】
現在、アジアで金融市場が活発化している都市を有する発展国の一つ。治安は良く、英語とマレー語が広く使われている。中華圏との交わりを古くから行い、食文化はアジアと大陸の中間的で国際的な評価も高い。
あー、早く行ってみたいなー!! マレーシア!!
……どうせ、サギ紛いなんだろうなぁ。
と、思っていたのは紛れもない事実である。今は小説書きに戻るかって感じですね。
注意・そもそも稲村某は嫁が把握出来ない海外と取引出来る口座を、一切所有していません。あしからず。それに元金すらねーぜ?