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心霊写真

数日前に友人二人と旅行に行った俺は、自室でその時に撮った画像を見返していた。

なにか良い画像があったら、印刷して配ってやろうと思っていたのだ。


たくさんの画像を撮ったが、ふと、その中に気になるものがあった。


ある神社の石段の途中で撮ったものだ。鎮守の杜と呼ぶのだろうか。

木々に囲まれ、静かで雰囲気が良く、とても気に入ったのを覚えている。


その画像は自撮り棒を使って三人で写ったものだが、俺たちの後ろ、石段を数段登ったところに、こちらに背を向けている男がいるのだ。髪の色は黒で、白いTシャツにズボンはベージュだろうか?


これを撮影したときには確かに俺たちの他に誰もいなかった。これはどういうことだろうか。

俺の記憶違いかもしれないので、次の日一緒に行った友人二人に画像を見せながら聞いてみた。


やはり、このときこの場にいたのは俺たちだけだった。なにしろ数日前の記憶だからハッキリしている。ということは、これは心霊写真なのではないか?


初めての心霊写真に、俺たちは恐怖よりも興奮と嬉しさを感じていた。「世にある心霊写真の九割が偽物」とされている中、本物を撮ることが出来たのだ。別にオカルトにはそこまで興味はなかったものの、誰も成し遂げていない快挙を達成したかのような、よくわからない感情で俺たちは湧き上がった。


どこかに売り付けるか。いやいや、ネットで公表するべきだ。それよりもまず霊能者に見せてみよう。いろいろ意見が出たが、何も決まらずその日は解散となった。


次の日、俺はまだ冷めやらない興奮とともに、また件の心霊写真を見る。


違和感を感じる。その違和感の正体はすぐにわかった。背を向けた男が、カメラ側にほんの少し向きを変えているのだ。これは怪談でよく聞く「見るたびに霊がこちらを向く心霊ビデオ」のようなものではないか?


大抵そういう話は、霊がこちらを完全に向いたらどうなるのか。そういうところまでは語られていない。俺はすぐさま友人に連絡し、急遽集合することになった。


「なるほど、確かに少しこちらを向いているね」

「これが完全に向き直ったら、どうなるんだろう」

「少し、様子を見よう」


どうやらこの心霊写真は、画像を開くその都度に向きを変えるのではなく、一日毎に少しずつこちらに向き直っているようだ。


俺は毎日観察を続け、あと数日で完全にこちらを向き直るところまで来た。もうほぼ表情も眼も、顔も判断出来るところまでこちらを向いている。ここから数日間は俺と友人、三人泊りがけで観察することにした。


一日目。二日目。三日目。そろそろ完全にこちらを向く。俺たちは部屋の数カ所にカメラを仕掛け、録音機材を駆使し、その霊が完全にこちらを向いたとき、何が起こるかを記録しようと待ち構えていた。


そして運命の四日目。完全にこちらを向く日がやってきた。俺たちは期待と少しの恐怖を抱き、画像を開いた。


幽霊がこちらを向いていない。それどころか、表情がおかしい。今までは無表情の中に恨みをつのらせたような、なんとも言えない顔をしていたのだが、今は目線を下斜めにし、苦虫を噛み潰したような、これまたなんとも言えない顔をしている。


一日目。二日目。三日目。ついに幽霊は完全にまた背中を向け、それどころか四日目、五日目となると徐々に石段を登っていき、最後には完全に消えてしまった。


このあまりにも意外な結果に、友人の一人はこう推察を述べた。


「こいつ、恥ずかしかったんじゃね?」

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