第2話 消えた人々
ここはゴルドの国。ここは他の国同様、人間と魔獣がいる。だが彼らは、『妖怪』と言われる。妖怪は元々、ゴルドの国に住んでいた。魔獣の英雄の1人であるレミー・霞・玉藻もその1人だ。妖怪は魔法とは違い、妖術を使う。
ゴルドの国は他の国との関わりを長らく持たなかった事から独自の文化を築いてきた。その独自の美しい文化は多くの外国人観光客を虜にし、多くの観光客が訪れる。
このシナビレッジは山脈のふもとにある小さな村。その山脈には多くの名峰があり、多くの登山客が訪れる。中心駅のシナ駅にはこの時期になると多くの観光客が訪れる。この村の名物はそばで、登山客の多くはそばを食べてから山に登る。
山開きや夏休みになると、昼間の特急やいつもの夜行列車に加えて、多くの臨時夜行がやってくる。その時には普段の村とは思えないほど多くの人が訪れる。この村の人の中には駅前でそば屋を営んでいる家族が多い。
明日はいよいよ山開きだ。この村のそば屋はこの時期になると観光客だけでなく、登山客もやってきて、とても忙しくなる。そんな時は夏休み中の子供も仕事に回る事が多い。
その中の1つ、洗馬家の運営するそば屋『登龍門』は駅前にあるそば屋で、この村の中では有名なそば屋だ。特に多くの観光客が訪れる。
そんな洗馬家に1人の少年が住んでいる。藪原太一はシナビレッジに住む少年。体を大きくしたり小さくできる入道族だ。アヅマシティに生まれたが、間もなくして両親を失い、それ以後は母の実家で過ごしている。小学校ではみんなの人気者で、友達が多い。
母の実家は家族等でそば屋を営んでいて、太一は小学生ながら休みの日は手伝いをしている。太一は将来、このそば屋の跡取りとなろうとしていた。
太一がそばを教わったのは祖母の洗馬スエだ。おばあちゃんっ子だった太一は幼い頃からそば打ちを手伝い、5歳で作れるように、10歳でスエが認めるまでに成長した。そば打ちの小学生大会では負け知らずで、将来日本一のそば職人になるだろうと思われていた。
スエはこの村で一番のそば職人だ。国中のそば職人が憧れ、『伝説のそば打ち名人』と呼ばれている。スエが書いた著書はそば職人がバイブルとして読んでいるぐらいだ。そんなスエは10年ほど前にそば屋からは引退し、道の駅でそば打ち体験の講師をしている。
今日から夏休みだ。学校は正午で終わり、生徒は帰宅中だ。この村にある小学校は1つだけで、卒業すると隣にある中学校に進学する。生徒数は少なく、1クラスで1桁だ。過疎化が進んだり、小学校の統合もあり、この数だ。
太一は正午で小学校を終え、これから長い夏休みを迎えようとしていた。太一は自宅までの道のりを1学年年上の井辺真由美と歩いていた。太一の住んでいる集落に、小学生は太一と真由美だけだ。この集落では高齢化が進んでいる。年々社会問題になっているが、全く状況は変わらない。それどころか、高齢化がより一層進んでいる。
集落までの田園地帯を、2人は歩いていた。田園地帯はのどかだ。セミの音がけたたましく聞こえる。今日も日差しが強い。すでに30度を超えている。
「たっちゃん、明日から夏休みだよね」
真由美は後ろを向いた。真由美は笑顔を見せた。今日から夏休みだ。何をして遊ぼう。
真由美もまた妖怪で、姑獲鳥族だ。姑獲鳥族は女性のみの種族だ。巨大なカラスのような姿で、飛翔力が極めて高い。また、知能も高い。真由美は学年で一番成績が良く、太一もよく頼りにしていた。
「うん。でも宿題に家の手伝いに、休みはないよ」
太一は笑った。自分に夏休みはない。夏休みになると多くの登山客が訪れる。そのため、登山前に腹ごしらえにと多くの登山客がそば屋を訪れる。当然いつもの状況では生産が追い付かず、この時期は太一やスエも応援に加わる。
「そうだよね。その気持ち、わかる」
真由美は太一の気持ちがわかった。太一はあまり人と遊んだことがない。家業の影響だ。休日は専ら家業の手伝いをしている。全ては将来、家業のそば屋を継ぐためだ。仕方がなかった。
「まゆちゃんはどうするの?」
「私は旅行に出かける以外は何もすることないわ。勉強ばっかり」
真由美は普通の家庭で、父は教員をしている。夏休みは家族と旅行に出かける予定で、とても楽しみにしている。
「ふーん」
太一はそれがうらやましかった。だが、それも家業を継ぐため。耐えなければならない。
「近頃、魔獣が襲い掛かってくるって言うけど、太一と私なら大丈夫よね」
「うん」
ここ最近、この辺りでも魔物が襲い掛かってくるらしい。学校の先生も注意するようにと生徒に言うことがしばしばある。太一も真由美も気を付けていた。
「じゃあね」
集落に入り、真由美はT字路で太一と別れた。太一は真由美とは別の道を進んだ。
太一は1人で家に向かっていた。太一の家はこの集落では一番大きな家だ。洗馬家は先祖代々の自営業でかなりの利益を上げている。
太一は家に帰ってきた。家には農業機械もあり、まるで農家のようだ。この洗馬家はそば粉も自分達で作っていて、そのそば粉でそばを作っていた。
「ただいまー」
「おかえりー」
迎えたのはスエだ。この日は休みで、家にいた。スエ以外の家族はそば屋で働いていて、家にはいない。
「いよいよ今日から夏休みだね」
「山登りする人が多いから、このそば屋も多くの人が訪れるだろうな。頑張らなくっちゃ」
太一は自分の部屋に入り、ランドセルを置いた。とりあえず今日はゆっくりしよう。
と、叔父の洗馬洋一が帰ってきた。登龍門の店長だ。出来上がったそばを取りに来た。
洋一は元々洗馬家ではない。登龍門の店長となる代わり洗馬家の婿養子になった。
「たっちゃんおかえりー」
「おじさんただいまー」
太一は笑顔を見せた。交通事故で両親を亡くし、引き取ったのは洋一だった。だが、まさか自分の家業を継ごうとしているとは思わなかった。
「今日から夏休みだね」
「うん」
太一は嬉しい半面、これから忙しい日々が始まる。気合を入れて頑張らねば。
「明日から忙しいぞー」
「そうだね。頑張らなきゃいけないし、宿題をしないといけないし」
洋一はそばの入ったトレーを持つと、忙しそうに家を出て行った。太一はその様子を見ていた。明日はもっと忙しくなるだろう。
翌朝、朝から登龍門はあわただしくなっていた。特急で来た人々が駅前にやってきて、昼から山に登る人々が登龍門にやって来る。従業員は朝からフル回転で調理や会計をしていた。
洗馬家も朝からあわただしい。すでに引退したスエも手伝っている。太一はまだ夜が明けていない時間から作業をしている。石臼でそばの身を引き、つなぎの小麦粉とお湯を入れてこねる。綿棒でのばし、細く切る。太一は朝からそば切りの作業に回っていた。
「おはよう」
洋一がそばを取りにやって来た。洋一も朝早くからあわただしくしていた。そばの入ったトレーを取りに来ると、すぐに店に向かわなければならない。
「今日から夏休みか」
太一は笑顔を見せた。だが、夏休みはあわただしい。決して楽しいものではない。そばを作って勉強してお風呂に入って寝るぐらいだ。遊んでいる時間なんてない。
「朝一番から多くの人が来てるよ」
「そうか」
太一のいとこで9歳年上の洗馬海斗も朝からあわただしくしている。今年の春に高校を卒業して実家のそば屋で働いている。太一同様、自身もそば打ちが得意で、若い太一に期待していた。
海斗は龍族で、羽はないが空を自由自在に舞うことができる。洗馬家は人間だが、婿養子の父、洋一から受け継いだものだ。あまり龍にならない洋一に対して、海斗は毎朝気晴らしに龍になって空を飛んでいる。
「頑張らなくっちゃ」
「そうだね」
太一は再び作業に向かった。宿題をする暇もない。
11時のオープン前、登龍門では朝から客であふれていた。彼らは登山口までのバスの乗り換えの合間に食事を済ませようとしている。この店はこの辺りでは珍しいセルフ式で、そばを注文してその先で天ぷらやごはん物、おかずを注文する。最初は席に着いて注文していた。だが、客が増えたため、素早くさばけるセルフ式になった。
11時と共に、登龍門の扉が開いた。待っていた客はどっと店内に入った。あっという間に登龍門には行列ができた。
まず最初にそばを注文する。量は並と大で、メニューはかけそば、ざるそば、山菜そばがあり、どれも冷と温が選べる。客はそのまま進み、天ぷらやごはん物、おかずが並んでいるカウンターの先で受け取る。
「いらしゃいませ、ご注文は?」
カウンターの最初にいるのは太一の母の姉、洗馬春香だ。両親を失った太一をここに連れてきて、母親代わりに育ててきた。
「ざるの並で」
「ざる並一丁!」
春香が厨房に向かって叫ぶ。しばらくすると、一番向こうのカウンターにざるそばの並が出される。
「ひやかけ並」
「ひやかけ並一丁!」
「すいません、天ざるはないですか?」
「申し訳ございません。天ざるというメニューはございません。ざるそばをご注文して、この先のカウンターでお好きな天ぷらを取ってください」
春香はカウンターを指さした。その先には天ぷらの置かれたカウンターがある。
「それじゃあ、ざる並」
「ざる並一丁!」
と、そこに従業員が揚げたてのえび天をもってやって来た。人気のえび天はすぐに切れてしまう。
「えび天揚げたてでーす」
従業員はカウンターに揚げたてのえび天を置いた。すると、すぐにカウンターを通る客がえび天を取っていく。
「あっ、えび天欲しいね」
後ろの客はその隣にある野菜かき揚げに興味津々だ。かき揚げはボリュームがあり、食べ応えがある。
「野菜かき揚げもおいしそう」
「いか天欲しいな」
他の客はその上のイカ天にも興味津々だ。えび天よりも長くて、こちらもボリュームがある。
「そば入りまーす」
そこに、洋一がやって来た。実家から出来上がったそばを取りに来た。洋一はそばの入ったトレーを厨房に置いた。
トレーを中央に置くとすぐに、洋一は再び車に向かった。客が多くて、そばがすぐになくなってしまう。早くまた取りにいかないと。
騒然とした朝が終わり、昼下がりになった。ある程度手が空いてきたので、太一は手伝いをやめ、畳に仰向けになっていた。
朝早くから作業をして、太一は疲れていた。だが、夏休みはこんな感じだ。まだまだ始まったばかり。これがほぼ毎日続く。そう思うとまだまだ疲れたとは言ってられないと思った。
昼下がり、ぐんぐん気温が上がり、35度近くなってきた。太一は扇風機に当たりながら昼寝していたが、あまりにも暑くて起きてしまった。太一は入道族の一つ目の姿になって仰向けになっている。
「疲れたのか?」
「うん」
洋一がやって来た。再びそばを取りに来たみたいだ。その隣では従業員がそばを打ち続けている。スエは午前中だけ手伝って、道の駅に向かった。
「今は少し落ち着いてるみたいだ」
「そっか」
太一は大きく息を吸い込んだ。騒然とした朝が終わり、ほっとした。
「今夜、みんなでそばを食べようか?」
突然言われて、太一は驚き、首をかしげた。どうしてこんな時に。だが、我が家のそばを食べられると思うと、嬉しかった。
「それいいね! でも、どうして?」
「夏休み始まったから、たまにはいいかなと思って」
洋一を笑顔を見せた。今日から夏休みだし、太一が朝から頑張ってくれたからねぎらいにご馳走しようと思った。
「あっ、まゆちゃんとお母さんも一緒だって」
実は、そばを運ぶ途中に真由美とその母に会って、久々にそばが食べたいなと言ったので、ならばいっしょに食べようと誘っていた。
「そっか」
太一は嬉しくなった。普段作っているそばが食べられるし、真由美と食べられる。夏休みの始まりにいいじゃないか!
その夜、シナビレッジはいつもの静かな夜を迎えていた。山を下りてきた人が通るが、彼らはみんな駅弁を買ってそのまま帰る。帰りにそばを食べる人はそんなにいない。
太一と洋一、海斗、春香、真由美とその母は登龍門の空いたテーブル席でそばを食べていた。店内はそんなに人がいない。まるで昼の騒がしさが嘘のようだ。店員や客の声がよく聞こえる。
太一は家族の打ったざるそばをすすり、今日1日の事を思い出していた。まるで嵐のような朝が来て、静かな昼を迎えた。夏休みはいつもそんな感じだ。気合を入れないと。
「今日は忙しかったね」
「うん」
と、従業員がコップとお酒を持ってきた。オーダーしたのは真由美の母だ。
「どうも、霊峰の水割りね」
霊峰はこの近くの酒蔵で作っている米酒で、この村の特産品の1つだ。山登りから帰ってきた大人はこの米酒のカップを買ってそれを買えりの車内で飲むという。
「ありがとう」
従業員はコップにお酒を注いだ。真由美の母は酒を口に含む。
「でもまだ始まったばかりよ」
「そうだね。もっと頑張らないと」
真由美の母は笑顔を見せた。真由美の母は少し酔っていたが、意識はしっかりとしている。
「僕らもいつか山に登ってみたいな」
「そうだね」
太一は山の方向を見た。山を登る人々は夕方のうちに帰るか5合目の山小屋に泊まっている。
「やっぱここのそばはおいしいね」
「うん」
真由美はおいしそうにざるそばをすすった。いつか、太一がこの店の店員として働く姿が見たいな。
「たっちゃんもいつかここで働くんだよね」
「うん。僕がこの店の後を継ぐんだ」
太一は笑顔を見せた。いつかこの店を継いで、おいしいそばをみんなに食べてもらうんだ。
「なーに。後を継ぐのは僕さ」
その隣でざるそばをすすっていた海斗だ。海斗は昔からこの村に住んでいて、洗馬の姓を名乗っている。だから自分がこのそば屋を継ぐんだ。
そして、シナビレッジはいつものように静かに夜が更けていくと思われた。だが、その頃、山小屋ではとんでもない事が起きていた。村人はその事を全く知らなかった。
次の日の朝5時、太一は目を覚ました。昨日もこの時間だ。今日も朝の内はそばの仕込みで忙しい。大変だが、将来この店を継ぐためにしなければならない。
太一はパジャマのまま上から降りてきた。まだ眠たいのか、太一は目をこすっている。
太一はリビングに目をやった。すると、そこにはスエと洋一がいる。彼らは真剣な表情でニュースを見ている。
「おはよう」
太一は2人にあいさつしたが、反応がない。なぜだろう。大変なニュースだろうか?
「どうしたの?」
「ニュースでやってる。山に登った人々がみんな帰らないんだって」
太一は驚いた。昨日山に登った人々が帰ってこないなんて、何だろう。これだけの大人数がいなくなるなんて、どうかしている。
「帰ってこないって?」
「うん。みんな帰ってこないんだよ」
2人は心配そうな表情だ。下山して帰宅するまでが登山なのに。何があったんだろう。
「な、何があったんだろう」
太一は首をかしげた。2人同様、これだけの人々が一気に行方不明になるなんて、どうかしている。
「変だな。火山活動の兆候はないし、噴火したって知らせもない」
その山は活火山で、100年ぐらい前に噴火したという。噴火の兆候が見られたら、登山を禁止するはずだ。昨日も噴火の兆候が見られなかったし、噴火の情報もなかった。明らかにおかしい。
「そうだね」
「一体何だろう」
2人も首をかしげた。太一は2人の後ろに立ち、そのニュースを食い入るように見始めた。この村でこれだけの人が行方不明になるなんて、一大事だ。
「わからない」
「神隠しとか?」
太一は適当に考えた。これだけの人々が一気にいなくなるなんて、神隠しでしか有り得ない。
「いやいや、そんなことない」
2人はそれを否定した。神隠しなんて信じられない。この世界に有り得ない。
「だから今日はあんまり人が来ないんだよ。みんな怖がって」
スエや洋一は心配していた。この時期の特需はとても大切で、今年1年の利益に大きく影響してくる。もしこれが続けばここ1年は赤字になってしまう。
「うーん、それじゃあ、仕事が空いてるから行ってみよう」
太一は自ら行って、その理由を探り出そうと考えた。どうなってもいい。自分の力で突き止めてやる。
「うん」
と、そこに真由美がやって来た。真由美もそのニュースで早く起きてしまった。
「あっ、まゆちゃん」
太一が振り向くと、そこには真由美がいた。
「どうしたの? 仕事は?」
「今日はないんだ。非常事態だもん」
真由美は下を向いた。こんな時だもんね。観光客が来ないのもわかる。
「あー、あの行方不明の事で?」
「まゆちゃんも知ってるんだ」
「うん。今朝からニュースでやってるもん」
真由美もニュースを食い入るように見ている。これは大変な事だ。観光客が激減し、村全体が賑わいをなくす。
「私、これから調べるために行ってみようかなって」
「僕も行こうと思ってたんだ」
真由美もその理由を知りたいと思っていた。だが、1人では心細い。なので、太一と一緒に行こう。力持ちの太一がいれば心強い。
太一は護衛用に鎌を手にした。太一は農作業で鎌を使うことがあり、使い慣れている。
太一と真由美は玄関に向かった。家族は玄関までやって来た。家族は2人を心配している。
「それじゃあ、行ってくるね」
太一は手を振った。家族は2人を心配そうに見守っている。
「行ってらっしゃい。気を付けてね」
2人は洗馬家を出発した。まだ明け方だ。まだ少し暗い。虫の鳴き声は聞こえない。
真由美は辺りを見渡した。人通りは少ない。まだみんな寝ているんだろうか? それともみんな朝からニュースにくぎ付けになっているんだろうか?
「静まり返ってるわね」
「そうだね」
2人は登山道に向かった。洗馬家の前の道路は登山道の入口に続いている。駅と登山口を結ぶバスはここを通って登山口までを結んでいる。
「不気味に思って誰も来てないんだ」
2人は登山道までの道路をしばらく歩いたが、やはり誰もいない。だんだん夜明けが近づいてきた。
「これはうちの利益にも影響が出るわ」
太一はそば屋の事を心配した。多くの登山客がやってきて、利益が上がるこの時期はとても重要だ。もしそれがなくなったら、赤字になってしまう。
「そうね」
真由美もそのことを気にした。太一は将来、この店を継ごうというのに、このままでは店がなくなり、告げなくなってしまう。
「また賑わいを取り戻したいな」
太一は事件が解決して再び客が戻るのを楽しみにしていた。それが冒険への始まりだとも知らずに。
「そうね。早く行きましょ?」
「うん」
2人は集落を離れ、山道を進み始めた。徐々に坂が急になっていく。左手には雑木林が広がる。とても静かだ。
進み始めてしばらくすると、敵が襲い掛かってきた。2匹のオオカミだ。
「な、何だありゃ」
「殺そうとしてるのか?」
2人は驚いた。まさか、本当に襲い掛かってくるとは。
「そうみたい」
太一は腕をまくり上げた。やる気満々だ。
「やってやろうじゃないか!」
太一が目を閉じて念じると、太一の目が1つになった。太一の体は少しずつ大きくなり、人間の時の2倍になった。
真由美が両手を広げると、手は黒い翼になった。顔や体は徐々に黒い毛でおおわれ、口が鳥のくちばしに変わっていった。足は徐々に短くなり、鳥のようになった。
「炎の力を!」
真由美は魔法で火柱を起こした。2匹のオオカミは熱がったが、すぐに持ち直した。
「これでも食らえ!」
太一は持っていた鎌でオオカミを斬りつけた。オオカミは痛がり、少し表情が苦しくなった。
「ガオー!」
オオカミは真由美に噛みついた。だが、真由美はびくともしない。
「グルルル・・・」
もう1匹のオオカミは太一に噛みついた。だが、太一もびくともしない。
「天の怒りを!」
真由美は魔法で雷を落とした。太一の攻撃も食らったオオカミは表情が苦しくなった。
「とどめだ!」
太一は鎌でオオカミを斬りつけた。オオカミは倒れた。
突然、残ったオオカミは太一に噛みついた。太一は少し表情が苦しくなった。
「癒しの力を!」
真由美は魔法で太一を回復させた。
「とどめだ!」
太一は力を込めて鎌で斬りつけた。残ったオオカミは倒れた。
「どうしてこんな奴が現れたんだろう」
「わからない」
太一は腕を組んで首をかしげた。だが、息つく間もなく敵が襲い掛かってきた。2匹のオオカミと1つ目のヘビだ。
「雪の力を!」
真由美は魔法で吹雪を起こした。3匹は少し凍えた。
「食らえ!」
太一は鎌で1つ目のヘビを斬りつけた。1つ目のヘビは痛がり、少し表情が苦しくなった。
「ガオー!」
オオカミは真由美に噛みついた。真由美は少し表情が苦しくなった。
「グルルル・・・」
もう1匹のオオカミは太一に噛みついた。だが、太一はびくともしない。
突然、1つ目のヘビは真由美に噛みついた。真由美は表情が苦しくなった。
「癒しの力を!」
真由美は魔法で自分を回復させた。
「覚悟しろ!」
太一は炎を帯びた鎌で1つ目のヘビを斬りつけた。1つ目のヘビは熱がり、倒れた。
「ギャオー!」
オオカミは太一に噛みついた。太一は少し表情が苦しくなった。
「グルルル・・・」
もう1匹のオオカミは真由美に噛みついた。だが、真由美はびくともしない。
「癒しの力を!」
真由美は魔法で太一を回復させた。
「覚悟しろ!」
太一は毒を帯びた鎌でオオカミを斬りつけた。オオカミは表情が苦しくなり、毒に侵された。
「ガオー!」
オオカミは真由美に噛みついた。だが、それでも真由美はびくともしない。だが、オオカミは毒に侵され、倒れた。
「グルルル・・・」
残ったオオカミは真由美に噛みついた。真由美は少し表情が苦しくなった。
「癒しの力を!」
真由美は魔法で自分を回復させた。
「食らえ!」
太一は鎌でオオカミを斬りつけた。オオカミは表情が苦しくなった。
「ガオー!」
オオカミは太一に噛みついた。太一は少し表情が苦しくなった。
「癒しの力を!」
真由美は魔法で太一を回復させた。
「とどめだ!」
太一は炎を帯びた鎌で斬りつけた。残ったオオカミは倒れた。
「本当に敵が多いな」
「何だろう」
真由美は少し焦っていた。こんなにも多いなんて。何か不吉なことの前触れだろうか?
「早く行こう!」
2人は再び進み始めた。だが、またもや敵が襲い掛かってきた。3匹のオオカミと2匹の1つ目のヘビだ。
「天の怒りを!」
真由美は魔法で雷を落とした。5匹はダメージを受け、2匹のオオカミは体がしびれた。
「うりゃあ!」
太一は炎を帯びた鎌で1つ目のヘビを斬りつけた。1つ目のヘビは痛がり、体に火が点いた。
突然、1つ目のヘビは太一に噛みついた。だが、太一はびくともしない。
「ガオー!」
オオカミは真由美に噛みついた。だが、真由美もびくともしない。
「炎の力を!」
真由美は魔法で火柱を起こした。5匹はダメージを受け、1匹のオオカミと1匹の1つ目のヘビが倒れた。
「食らえ!」
太一は毒を帯びた鎌でオオカミを斬りつけた。オオカミは表情が苦しくなり、毒に侵された。
「グルルル・・・」
オオカミは真由美に噛みついた。真由美は少し表情が苦しくなった。毒に侵されたオオカミは倒れた。
「癒しの力を!」
真由美は魔法で自分を回復させた。
「覚悟しろ!」
太一は炎を帯びた鎌でオオカミを斬りつけた。オオカミは倒れた。
「とどめだ!」
真由美は鋭いくちばしで1つ目のヘビを何度も突いた。1つ目のヘビは倒れた。
「次第に山道に入ってきたわね」
2人が辺りを見渡すと、村の中心部が見える。鉄道も見える。下を見ると、実家が見える。こんなに高く登ったのか。2人はため息をついた。
「うん」
2人は頂上に向かって進み出した。だが、すぐに敵が襲い掛かってきた。3匹のオオカミとクマだ。
「炎の力を!」
真由美は魔法で火柱を起こした。4匹は熱がり、2匹のオオカミに体に火が点いた。
「覚悟しろ!」
太一は炎を帯びた鎌でクマを斬りつけた。クマは熱がったが、びくともしない。
「ガオー!」
オオカミは真由美に噛みついた。だが、真由美はびくともしない。
「ギャオー!」
クマは鋭い爪で太一を引っかいた。だが、太一はびくともしない。
「天の怒りを!」
真由美は魔法で雷を落とした。4匹はダメージを受け、1匹のオオカミが倒れた。
「食らえ!」
太一は炎を帯びた鎌でオオカミを斬りつけた。オオカミは倒れた。
「ギャオー!」
残ったオオカミは太一に噛みついた。太一は表情が苦しくなった。
「ガオー!」
クマは鋭い爪で真由美を引っかいた。だが、真由美はびくともしない。
「癒しの力を!」
真由美は魔法で太一を回復させた。
「とりゃ!」
太一は毒を帯びた鎌でクマを斬りつけた。クマは表情が苦しくなり、毒に侵された。
「ガオー!」
クマは鋭い爪で太一を引っかいた。だが、太一はびくともしない。クマは毒に侵され、倒れた。
「グルルル・・・」
オオカミは真由美に噛みついた。だが、真由美はびくともしない。
「とどめだ! 炎の力を!」
真由美は魔法で火柱を起こした。オオカミは倒れた。
「ここも人通りが少ない」
小学校2年の頃、初めて山に登った。その時は多くの人がいた。だが、今日は誰もいない。いつもの山じゃない。
「昨日はあんなに賑わっていたのにね」
真由美は昨日のニュースで多くの人が山に登っていたのを見た。まるで昨日の賑わいが嘘のようだ。
「うん」
2人は前を見た。山小屋まであと少しだ。2人はほっとした。だが、あと少しの所で、敵が襲い掛かってきた。3匹のオオカミと2匹の1つ目のヘビだ。
「炎の力を!」
真由美は魔法で火柱を起こした。5匹はダメージを受け、2匹の1つ目のヘビの体に火が点いた。
「食らえ!」
太一は炎を帯びた鎌で1つ目のヘビを斬りつけた。1つ目のヘビは倒れた。
「ガオー!」
オオカミは太一に噛みついた。だが、太一はびくともしない。
「グルルル・・・」
別のオオカミは真由美に噛みついた。真由美もびくともしない。
「ギャオー!」
また別のオオカミは太一に噛みついた。太一は少し表情が苦しくなった。
突然、1つ目のヘビは太一に噛みついた。太一は表情が苦しくなった。
「癒しの力を!」
真由美は魔法で太一を回復させた。
「食らえ!」
太一は毒を帯びた鎌で1つ目のヘビを斬りつけた。1つ目のヘビは倒れた。
「ガオー!」
オオカミは真由美に噛みついた。真由美は少し表情が苦しくなった。
「グルルル・・・」
別のオオカミは太一に噛みついた。だが太一はびくともしない。
「ギャオー!」
また別のオオカミは真由美に噛みついた。真由美は表情が苦しくなった。
「癒しの力を!」
真由美は魔法で自分を回復させた。
「覚悟しろ!」
太一は毒を帯びた鎌でオオカミを斬りつけた。オオカミは表情が苦しくなり、毒に侵された。
「グルルル・・・」
オオカミは太一に噛みついた。だが太一はびくともしない。オオカミは毒に侵され、倒れた。
「ガオー!」
別のオオカミは真由美に噛みついた。だが、真由美はびくともしない。
「グルルル・・・」
また別のオオカミは太一に噛みついた。太一は少し表情が苦しくなった。
「癒しの力を!」
真由美は魔法で太一を回復させた。
「覚悟しろ!」
太一は炎を帯びた鎌でオオカミを斬りつけた。オオカミは倒れた。
「ガオー!」
残ったオオカミは真由美に噛みついた。真由美は表情が苦しくなった。
「癒しの力を!」
真由美は魔法で自分を回復させた。
「とどめだ!」
太一は炎を帯びた鎌でオオカミを斬りつけた。オオカミは倒れた。
2人は深く息を吸った。ようやく山小屋の前に来た。山小屋は7合目にある。2人は下を見下ろした。村の中心も、実家もかなり小さくなった。
「山小屋だ!」
2人は山小屋に入った。山小屋は暗い。静まり返っている。誰もいないようだ。昨日は日の出を見ようとする人が泊まって満室だったのに。どうしてだろう。
2人は山小屋の事務所に入った。だが、そこにも人はいない。部屋の電気は消えていて、真っ暗だ。まるで誰も住まなくなった家のようだ。
「ここにも誰もいない」
「従業員もいない!」
太一は首をかしげた。従業員はどうしちゃったんだろう。ひょっとして、登山客とともに消えてしまったんだろうか?
「集団がさらって行ったのかな?」
真由美は最近のニュースで飛行船で大量の人々がさらわれるのを聞いていた。ここでもそれが起こったんじゃないかな?
「そうかもしれない」
太一もそのニュースを知っていた。だが、ここでも起こるとは。太一は信じられなかった。
「昨日の夜、そばを食べてるとき、変な音しなかった?」
「いや」
2人には聞こえなかった。深夜に連れ去れてたのでは?
その時、誰かがやって来た。その男は龍のペンダントを付けている。
「だ、誰だ?」
誰かに気付いて、太一は振り向き、声を上げた。その声に反応し、真由美も振り向いた。登山客だろうか? まだ残っている人がいるとは。
「まだ残っていたか。連れ去ってやる!」
太一の予想は外れた。人々を連れ去った奴だ。連れ去った人々を返せ! 太一は心の中で叫んだ。
「お前がやったのか?」
「ああ!」
男は笑みを浮かべた。人間を連れ去ってよかったと思っている。
「許せない!」
2人は拳を握り締めた。男はドラゴンに変身して襲い掛かってきた。
「氷の力を!」
真由美は魔法でドラゴンを氷漬けにした。だがドラゴンはびくともしない。かなり体力があるようだ。
「食らえ!」
太一は氷を帯びた鎌で斬りつけた。それでもドラゴンはびくともしない。
「ここで息絶えろ!」
ドラゴンは炎を吐いた。2人はダメージを受け、真由美は少し表情が苦しくなった。
「癒しの力を!」
真由美は魔法で自分を回復させた。
「覚悟しろ!」
太一は氷を帯びた鎌で斬りつけた。ドラゴンは少し痛がったが、すぐに持ち直した。
「ガオー!」
ドラゴンは鋭い爪で太一を引っかいた。だが太一はびくともしない。
「氷の力を!」
真由美は魔法でドラゴンを氷漬けにした。ドラゴンは氷漬けにならない。
「覚悟しろ!」
太一は炎を帯びた鎌で斬りつけた。だがドラゴンはびくともしない。
「グルルル・・・」
ドラゴンは氷を吐いた。だが、2人は氷漬けにならない。
「癒しの力を!」
真由美は魔法で2人を回復させた。
「人々を返せ!」
太一は氷を帯びた鎌で斬りつけた。ドラゴンは氷漬けにならない。
「ガオー!」
ドラゴンは炎を吐いた。2人は大きなダメージを受け、太一は表情が苦しくなった。
「癒しの力を!」
真由美は魔法で太一を回復させた。
「食らえ!」
太一は氷を帯びた鎌で斬りつけた。ドラゴンは少し表情が苦しくなった。
「グルルル・・・」
ドラゴンは太一に噛みついた。だが、太一はびくともしない。
「氷の力を!」
真由美は魔法でドラゴンを氷漬けにした。ドラゴンは表情が苦しくなり、氷漬けになった。
「とどめだ!」
太一は氷を帯びた鎌で斬りつけた。ドラゴンは倒れた。
「やっぱり連れ去られたんだな」
2人は確信した。やはり、みんな誰かに連れ去られたんだ。決して遭難でも事故でもない。
「どうしてこんなことを」
太一は拳を握り締めた。連れ去った奴らが許せなかった。
「頂上に行こう!」
「うん」
2人は誰もいなくなった山小屋を後にした。相変わらず山は静かだ。大量に人がいなくなった山に、誰も行こうとしない。
太一は頂上を見上げた。頂上が徐々に見えてきた。頂上まであと少しだ。太一は大きく息を吸い込んだ。
その時、敵が襲い掛かってきた。3匹のオオカミと2匹のクマだ。
「雪の力を!」
真由美は魔法で吹雪を起こした。5匹はダメージを受け、1匹のオオカミと1匹のクマが氷漬けになった。
「食らえ!」
太一は炎を帯びた鎌でクマを斬りつけた。クマは少し痛がったが、すぐに気を取り戻した。
「ガオー!」
オオカミは真由美に噛みついた。だが、真由美はびくともしない。
「グルルル・・・」
もう1匹のオオカミは太一に噛みついた。太一もびくともしない。
「ガオー!」
クマは鋭い爪で太一を引っかいた。太一は少し表情が苦しくなった。
「癒しの力を!」
真由美は魔法で太一を回復させた。
「食らえ!」
太一は炎を帯びた鎌でオオカミを斬りつけた。オオカミは倒れた。
「ガオー!」
オオカミは太一に噛みついた。だが、太一はびくともしない。
「グルルル・・・」
クマは鋭い爪で真由美を引っかいた。真由美は少し表情が苦しくなった。
「癒しの力を!」
真由美は魔法で自分を回復させた。
「食らえ!」
太一は炎を帯びた鎌でクマを斬りつけた。クマは倒れた。
「ガオー!」
オオカミは太一に噛みついた。だが、太一はびくともしない。
「天の怒りを!」
真由美は魔法で雷を落とした。3匹はダメージを受け、1匹のオオカミと残ったクマは倒れた。
「とどめだ!」
太一は炎を帯びた鎌でオオカミを斬りつけた。残ったオオカミは倒れた。
「ここでも襲い掛かってくるとは」
「とにかく頂上に向かって進みましょ」
真由美も息を切らしていた。こんなにたくさん敵が襲い掛かってくるとは。こいつらはもしかして連れ去った人々の仲間だろうか?
「うん」
2人は再び頂上に向かって歩き出した。だが、すぐに敵が襲い掛かってきた。2匹のオオカミと3匹の1つ目のヘビだ。
「炎の力を!」
真由美は魔法で火柱を起こした。5匹はダメージを受け、1匹のオオカミと2匹の1つ目のヘビの体に火が点いた。
「食らえ!」
太一は炎を帯びた鎌でオオカミを斬りつけた。オオカミは少し表情が苦しくなった。
「ガオー!」
オオカミは太一に噛みついた。だが、太一はびくともしない。
「グルルル・・・」
別のオオカミは真由美に噛みついた。真由美もびくともしない。
突然、1つ目のヘビは真由美に噛みついた。だが、真由美はびくともしない。
「天の怒りを!」
真由美は魔法で雷を落とした。5匹はダメージを受け、1匹のオオカミは倒れた。
「食らえ!」
太一は炎を帯びた鎌で1つ目のヘビを斬りつけた。1つ目のヘビは倒れた。
「ガオー!」
オオカミは真由美に噛みついた。真由美は少し表情が苦しくなった。
突然、1つ目のヘビは太一に噛みついた。太一は少し表情が苦しくなった。
「癒しの力を!」
真由美は魔法で2人を回復させた。
「覚悟しろ!」
太一は毒を帯びた鎌でオオカミを斬りつけた。オオカミは倒れた。
突然、1つ目のヘビは真由美に噛みついた。だが、真由美はびくともしない。
「炎の力を!」
真由美は魔法で火柱を起こした。2匹の1つ目のヘビは表情が苦しくなった。
「覚悟しろ!」
太一は毒を帯びた鎌で1つ目のヘビを斬りつけた。1つ目のヘビは倒れた。
突然、1つ目のヘビは真由美に噛みついた。真由美は少し表情が苦しくなった。
「癒しの力を!」
真由美は魔法で自分を回復させた。
「とどめだ!」
太一は毒を帯びた鎌で1つ目のヘビを斬りつけた。残った1つ目のヘビは倒れた。
「あと一息よ! 頑張りましょ」
「うん」
頂上まであと一息の所まで来た。だが、あと少しの所で敵が襲い掛かってきた。3匹の1つ目のヘビと2匹のクマだ。
「天の怒りを!」
真由美は魔法で雷を落とした。5匹はダメージを受け、2匹の1つ目のヘビは体がしびれた。
「食らえ!」
太一は毒を帯びた鎌でクマを斬りつけた。クマは毒に侵された。
「ガオー!」
クマは鋭い爪で太一を引っかいた。クマは毒に侵され、表情が苦しくなった。
「ギャオー!」
別のクマは鋭い爪で真由美を引っかいた。だが、真由美はびくともしない。
「癒しの力を!」
真由美は魔法で太一を回復させた。
「食らえ!」
太一は炎を帯びた鎌でクマを斬りつけた。クマは倒れた。
「ガオー!」
クマは鋭い爪で太一を引っかいた。だが、太一はびくともしない。
「炎の力を!」
真由美は魔法で炎を起こした。4匹はダメージを受け、2匹の1つ目のヘビは倒れた。
「食らえ!」
太一は炎を帯びた鎌でクマを斬りつけた。残ったクマは倒れた。
突然、1つ目のヘビは真由美に噛みついた。真由美は少し表情が苦しくなった。
「癒しの力を!」
真由美は魔法で自分を回復させた。
「とどめだ!」
太一は炎を帯びた鎌で1つ目のヘビを斬りつけた。残った1つ目のヘビは倒れた。
2人は頂上にたどり着いた。だが、誰もいない。もう連れ去られたと思われる。飛行船も見えない。
「ここにも誰もいないわね」
「うん」
2人が辺りを見渡していると、巨大な龍がやってきて、2人に近づいてきた。2人を狙っているようだ。
「何だあいつ」
太一は驚いた。まさか、龍が襲い掛かってくるとは。ひょっとして、彼もさらった奴の仲間だろうか?
「やってやろうじゃん!」
太一は腕をまくり上げた。巨大な龍が襲い掛かってきた。
「天の怒りを!」
真由美は魔法で雷を落とした。だが巨大な龍はびくともしない。
「食らえ!」
太一は炎を帯びた鎌で斬りつけた。それでも巨大な龍はびくともしない。
「ガオー!」
巨大な龍は炎を吐いた。だが2人はびくともしない。
「氷の力を!」
真由美は魔法で巨大な龍を氷漬けにした。だが、巨大な龍は氷漬けにならない。
「覚悟しろ!」
太一は氷を帯びた鎌で斬りつけた。巨大な龍はびくともしない。
「グルルル・・・」
巨大な龍は氷を吐いた。2人はダメージを受け、太一は表情が苦しくなった。
「癒しの力を!」
真由美は魔法で太一を回復させた。
「どりゃあ!」
太一は氷を帯びた鎌で斬りつけた。巨大な龍は少し表情が苦しくなったが、すぐに持ち直した。
「ギャオー!」
巨大な龍は氷を吐いた。2人はダメージを受け、真由美は表情が苦しくなった。
「癒しの力を!」
真由美は魔法で自分を回復させた。
「食らえ!」
太一は氷を帯びた鎌で斬りつけた。巨大な龍は少しひるんだ。
「ガオー!」
巨大な龍は炎を吐いた。2人はダメージを受け、太一は表情が苦しくなった。
「癒しの力を!」
真由美は魔法で太一を回復させた。
「食らえ!」
太一は氷を帯びた鎌で斬りつけた。巨大な龍は少し表情が苦しくなった。
「ガオー!」
巨大な龍は太一に噛みついた。だが、太一はびくともしない。
「天の怒りを!」
真由美は魔法で雷を落とした。巨大な龍は表情が苦しくなり、体がしびれた。
「とどめだ!」
太一は氷を帯びた鎌で斬りつけた。巨大な龍は大きな音を立てて倒れた。
2人は辺りを見渡した。だが、誰もいない。頂上も静かだ。昨日の賑やかさは何だったんだろう。まるで嘘のようだ。
「誰も登る人いないな」
太一は拳を握り締めた。連れ去った奴らが許せない。どこに行ったんだろうか? 今すぐ連れ戻したい。
「どこに行っちゃったんだろう」
その時、2人の後ろから男がやって来た。捕り逃したと思われる。男の足はよぼよぼだ。疲れていると思われる。
「あっ、誰かいる!」
太一が後ろを振り向くと、男がいる。まだ残っている人がいるとは。太一は驚いた。
「本当だ!」
それに気づいて、真由美も後ろを振り向いた。人がいる!
「大きな飛行船がやってきて、みんなさらっていった」
男は泣いていた。一緒に山を登った妻と子供たちがさらわれた。どうしてこんなことにならなければならないんだろう。こんなの悪夢だ。夢から覚めろ! 心の中で願っていた。だが、これが現実だ。
「そんな・・・」
真由美は呆然とした。今さっき戦ったドラゴンはその飛行船の乗組員だろうか?
「戻ろう」
その時、緑の龍がやって来た。それを見て、太一は驚いた。海斗だ。実家にいるはずの海斗がどうして来たんだろう。太一は首をかしげた。
「海斗!」
その声に反応して、真由美も海斗を見た。
「ど、どうしたの?」
真由美も驚いた。どうして海斗が来たんだろう。
「村が襲われた。焼き討ちでまるで火の海だ」
山に降り立った海斗は汗をかいている。全速力で焼き討ちから逃げてきた。道の駅にいるスエを除いて、海斗しか生き残っていない。
「そ、そんな!」
太一は呆然となった。こんなことが起こるなんて。今さっきまで元気だった家族がみんな死んじゃったなんて。信じられない。夢だと信じたい。でもこれは現実だ。
「早く行こう!」
太一と真由美は海斗の背中に乗って集落に戻ろうと思った。スエはどうなったんだろう。太一は心配だ。家族はどうなったんだろう。真由美は心配だ。
「おじさんも乗って!」
3人は考えた。疲れ果てた男も海斗の背中に乗って下山させよう。
「ありがとう」
3人は海斗の背中に乗った。海斗は宙に浮き、一気に山を下りた。目指すは焼き討ちに遭った集落だ。スエは無事だろうか? 家族は無事だろうか?2人は気がかりだ。
4人は集落にやって来た。4人は空から集落を見下ろした。海斗の言うとおり、集落は焼き討ちに遭っていた。4人は呆然としていた。とても現実じゃない。これは地獄だ。
「町が破壊されてる!」
「信じられない! これは夢じゃないの?」
真由美は泣きそうになった。太一は真由美の肩に左手をかけた。泣かないで。僕が幸せにするから。
「いや、これが現実なんだ」
太一は右手を強く握りしめた。誰がこんなことをやったんだ。まさか、登山客を連れ去った奴らだろうか?
海斗は廃墟と化した集落で1人の老婆を見つけた。スエだ。この日は道の駅で体験指導をするために朝早くに出かけたはずだ。だが、集落が焼き討ちに遭ったと聞いて、急遽やって来た。
スエは肩を落としている。早朝までの光景がまるで嘘のようだ。とても信じられない。どうしてこんな目にあわなければならないんだ。
「お、おばあちゃん!」
スエに気付くと、海斗は急降下した。太一と真由美も驚いた。
海斗は廃墟と化した集落に舞い降りた。3人は海斗の背中から降りた。太一はスエに抱き着いた。スエが無事でよかった。
「たっちゃん、大丈夫だったか?」
スエは太一を心配していた。ひょっとしたら、山で殺されたんじゃないかと思った。
「うん」
太一は悲しそうな表情だ。スエ以外、家族みんな失った。これから登龍門はどうなってしまうんだろう。
「町がみんな破壊されてもうた。わしと海斗とたっちゃんを残して家族はみんな死んじゃった」
スエは泣き崩れた。あれだけたくさん家族がいたのに、生き残ったのは海斗と太一だけだ。こんなことがあっていいのか? とても現実を受け入れられない。
「だ、誰が破壊したの?」
太一は泣き崩れるスエを慰めた。太一はより力強く拳を握り締めた。集落を焼き討ちにした奴、絶対に許せない。自分の手で叩き潰してやる!
「よくわからんが、ワンボックスカーがこの集落からものすごい速さで出てきたのぉ。ひょっとしたら、そいつわじゃないかな?」
通報を受けて車で家に帰る途中、スエは集落の入口で不審な男を見ていた。スエは素通りしたが、後で思ったら、ひょっとして、こいつらが燃やしたんじゃないかなと思った。
「そんな・・・」
海斗も肩を落とした。家族があっという間に失われるなんて。こんなの夢だと教えてくれ!
「店も?」
太一は店の事が気になった。店のある駅前も焼き討ちに遭っていないだろうか?
「ああ・・・」
スエは集落に戻って、駅前の様子を見た。すると、駅前からも火が上がっているのが見えた。おそらく駅前も焼き討ちに遭ったと思われる。
「家族をみんな殺しやがって、許せない!」
太一は怒っていた。家族が守ってきた店が一瞬にしてなくなってしまった。許せない。自分の手で懲らしめてやる!
「その気持ち、わかるわ」
真由美は太一の気持ちがわかった。一瞬にして家族も店も失った。
「おばあちゃん、家族の仇、俺が討つから」
太一は決意した。この村で焼き討ちをした奴ら、絶対に許さない。自分の力で懲らしめてやる!
「そうかい。気をつけてな!」
「たっちゃん、気をつけてね!」
「ああ」
3人は太一と男を見送った。太一は元気に手を振り、3人の声援に応えた。必ず奴らを懲らしめて戻ってくる。そして、この村を復興させるんだ。
10分後、2人は駅前にやって来た。駅前も焼け野原になっている。登龍門も、土産物屋も、駅舎も何もかもなくなっていた。だが、レールはそのままだ。何事もなかったかのように列車が駅を出て行った。
太一は立ち止まり、茫然とした。昨日まであんなに賑やかだった駅前がこんなことになるなんて。とても信じられない。だが、これは現実だ。彼らが焼け野原にしたんだ。絶対に許せない。自分の手で懲らしめてやる!
男は泣きそうになった。昨日訪れた駅前がこんなことになるなんて。登龍門でそばを食べた昨日がまるで嘘のようだ。
「た、たっちゃんか?」
2人は後ろを振り向いた。ボロボロの服を着た男がいる。太一は驚いた。その男を知っている。登龍門の従業員の中で一番のベテラン、滝越さんだ。滝越は服はボロボロだが、けがはしていない。何とか逃げることができたようだ。
「うん」
太一は首を縦に振った。滝越はほっとした。将来、この店をしょって立つ太一と海斗が生きていた。それだけでも嬉しかった。従業員はみんな焼き討ちで死に、生き残ったのは滝越だけだ。
「滝越さん! よかった、生きてたんだ!」
太一は嬉しかった。誰も生き残っていないんじゃないかと思っていた。これから登龍門はどうなるんだろう。
「ああ。神龍教だ。神龍教の奴らがやった」
滝越は神龍教の事を知っていた。200年前、世界を作り直し、人間を絶滅させようとした。彼らの神、王神龍が封印され、その宗教も忘れ去られたという。だが、今年は王神龍が蘇る年。徐々に神龍教も蘇ってきた。
「神龍教・・・」
「そうだ」
太一は拳を握り締めた。神龍教の事は知っていたが、また現れるとは。
「絶対に許さない」
「その気持ち、わかる」
滝越は太一の肩を叩いた。滝越は太一の気持ちがわかった。自分たちの店が一瞬にして奪われた。これほど悔しい事はない。悲しい事はない。あいつらが許せない。自分の手で懲らしめてやる!
「俺、あいつらをやっつけに行くから」
「そうかい。気を付けてな」
滝越は止めようとしなかった。今、最後の希望は太一しかいない。この村の、登龍門の命運は太一にかかっている。必ず帰ってきて、この村を、登龍門を復興させるはずだ。
「行ってくるからね」
太一は駅で切符を買い、ホームに立った。駅は駅舎を失い、生き残った係員が手で切符を売りさばいている。2人は太一をじっと見ていた。必ず帰ってこい。そして、この村を、登竜門を復興させてくれ。
「頑張ってきてぇな!」
「うん」
しばらくすると、2両編成の気動車がやって来た。気動車には何人かの人が乗っている。彼らは変わり果てた町を見て驚いている。
構内に入ると、気動車は汽笛を上げた。気動車はゆっくりとホームに入った。この駅のホームは多客時に備えて長くなっている。2両編成の気動車では持て余してしまう。
気動車の扉が開いた。誰も降りない。みんな車窓を見ているだけだ。
太一は気動車の中に入った。車内の床は木目調で、緑のモケットのボックスシートが並んでいる。中は冷房がかかっていて、涼しい。
気動車はなかなか発車しない。行き違い待ちと思われる。腕木式信号機は赤だ。
「じゃあ、行ってくるね」
太一は窓を開け、2人に手を振った。2人は笑顔で答えた。
その直後、反対側から気動車がやって来た。3両編成で、ある程度客が乗っている。気動車は向かい側のホームに停まった。だが、誰も乗り降りする人はいない。
腕木式信号機が青に変わった。2本の気動車はほぼ同時に駅を発車した。2人は手を振って太一を見送っている。太一はその様子をじっと見ている。必ずあいつらを懲らしめて、帰ってくる。それまで元気でいてくれ。
太一は後ろの気動車のデッキから村を見ていた。がれきしか見えない。昨日まではあんなに建物があったのに。何もかもなくなってしまった。
気動車は構内を出るとすぐに、鉄橋で深い谷を越えた。その下には誰もいない。いつもだったら遊んでいる人がいるのに。あれもこれも、神龍教のせいだ。彼らを呼び戻すためにも、懲らしめなければ。
鉄橋を超えるとすぐに、トンネルに入った。入口はレンガ積みで、年季が入っている。気動車はトンネルの中に消えていった。そして、気動車から村が見えなくなった。
太一は後ろの気動車のデッキからその様子を見ていた。村は徐々に小さくなり、やがて見えなくなった。自分が帰ってくる頃には、この村はどうなっているんだろう。
太一は客室に戻り、持ってきた家族の写真を見た。今朝だけでスエと海斗を残してみんないなくなった。どうしてこんなことにならなければならないんだろう。全部あいつらのせいだ。自分が何倍にして懲らしめてやる! そしてこの町を復興させるんだ。
気動車が長いトンネルを抜けると、そこは深い渓谷だ。気動車は渓谷沿いを急カーブで走っていく。その下では水遊びをする家族連れがいる。だが、いつもより少ない。こんなことがあって、みんなおののいているんだろうか?
しばらく渓谷沿いを走ると、駅に着いた。だが、誰も乗り降りしない。閑散としている。いつもだったらどれだけの人が来るんだろうか?
気動車が駅を出ると、再びトンネルに入った。その先は真っ暗で、何も見えない。太一にはその暗闇が今のむらの状況に見えてきた。焼き討ちで何もかも失い、今は暗闇のようだ。だが、必ず自分が賑わいを取り戻す! そば屋を再建させる! そのためには神龍教を懲らしめないと!
トンネルを抜けると、気動車は左に大きなカーブを描き、大きな築堤を一気に下った。青空が見え、車窓が明るくなる。神龍教を懲らしめて、復興した村の未来は、この青空のように明るく輝いていてほしい。そう思いつつ、太一は流れる車窓を見ていた。
目指すはクラの港。次の駅で特急等を乗り継いで、クラ駅を目指そう。そこからフェリーに乗り換え、そこからインガーシティを目指そう。インガーシティの辺りにあるアカザ島がかつて神龍教の居城だったと聞く。そこに行けば何かがわかるかもしれない。必ず神龍教の本部を探し出して、懲らしめないと!