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講義二時限目

「それでは二時限目を始めます。起立!気を付け!礼!はい、座って下さい。」

「なぁ、このノリってずっと続くのか?」


 シーザーはハッカに尋ねる。


「何で俺が知っているだ。お前が知らなきゃ誰も知らんだろ。」

(だよなぁ。)


 シーザーはため息をつきシーザーを見る。


「おしゃべりはダメですよ?それだけ異世界勇者は厄介と言う事です。」

「シーザー先生ぇ。」

「何でしょうか、シャトレ君。」

「次は何の講義ですか?」


 シャトレが真面目に生徒をやっている。以外に楽しそうだ。


「一時限目は異世界勇者の定義や基本知識でした。今からは特性を説明します。」

「・・・特性?」

「そうですよ、ビーツ君。人には個性があります。当然異世界の勇者にもありますが、何故か特徴が偏るのです。いくつかのパターンがありますので書き出しますね。」


 サバスはそういうと黒板に何かを書き出した。


 異世界勇者の特性タイプ別


 1、ワクワクタイプ

 2、冷静タイプ

 3、知識誇示タイプ

 4、オラオラタイプ

 5、のほほんタイプ


「さてと、では説明していきますね。まずは1つめですがこれは文字通り楽しんでいるタイプですね。」

「楽しんでいるだけならば問題ないのですよ?」

「まさか!初めに言った様に強力な力を持っているので後から図に乗るのがこのタイプです。まぁ、調子に乗って死にやすいのもこのタイプですけどね。」


 サバスは苦笑しながら言った。


「次は2つ目ですが、こちらは冷静と言うより()()です。」

「・・・病気なのか?」

「ハイ、間違いないです。このタイプは冷静に見えて実は自分に酔っているのです。」

「・・・十代中ごろに発症する万能感に酔いしれている()()か?」

「そうですよ。よくご存じですねビーツ君にも心当たりが?」

「ない!」

(あるな。)

(そうか、ビーツがな。)

(まさか無口なのも後遺症で)


 ある事無い事思われているビーツを後目に講義は続いていく。


「次は3つめですがこれは主に『日本』からの者に多いですね。自分の国の知識を使ってドヤ顏をするのです。自分の知識ではなく先人の発明や知恵をあたかも自分が最初だという感じで風潮します。」

「それは何と言うか、せこいのう。」

「ただ、このタイプはメリットもあります。」

「ほう。」

「例えばこの館のトイレについている『ウォシュレット』ですがアレも勇者の伝道(でんどう)です。」

「マジかよ!」「俺なんてあれが無いともう気持ち悪くて。」


 ABが食いついた。


「他には朝食の『ポテトサラダ』ですアレは『じゃがいも』と『マヨネーズ』で出来ていますが、『じゃがいも』は元々ありましたが誰もその生産性と有用性に気づかない為に見向きもせず、『マヨネーズ』は酢と卵と油ですね。乳化(にゅうか)というらしいですがこれもこちらにはない知識ですね。それらを合わせて調理したのが朝食の『ポテトサラダ』になります。」

「そうなのですねぇ!」


 料理長のシャトレは目を輝かした。


「じゃがいもは儂も好きじゃ。特にコロッケは好物じゃな。・・・まさか。」

「はい、その『コロッケ』も『日本』の料理らしいですよ。」

「なんと。」

「このようにこの世界にも異世界の文化が浸透しています。それはすべて異世界の勇者がもたらせたモノなのです。驚いた所で次に進みますよ?次はオラオラタイプですね。」

「オラオラですか?」

「えぇ、このタイプは調子に乗って上手くいってしまった勇者ですね。」

「どういう事だ?」


 ハッカが首をかしげる。


「そのままです。言い換えればこちらに順応してしまった者といいますか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()がこのタイプになります。このタイプは強力なユニークスキルで一気に力を伸ばし、ギルドマスターや領主に力でかなわないと思わせ支配していくタイプです。最初は協力したりするのですが、一定を超えると『俺には関係無い。』や『俺は俺で勝手にやる。』とか『俺はお前らぐらいなら一瞬で倒せる』などと言って既に(かなめ)になってから非協力的になり半ば脅す様に協力と言う名の服従を強いれます。そして権力者を踏み台に最終的には王族に近寄り、国家を手に入れようとします。そしてかつての協力者に『もう気安く名前を呼べないな。』等と言わせるのをステータスだと思っているクソ野郎です。」

「なんだそのクソ野郎は?」


 シーザーは嫌悪感を前面に出しながら言った。


「だから調子に乗ってしまったのですよ。それでは最後ののほほんタイプですが、こちらについては基本的に害はありません。」

「そうなんですかぁ。まともな勇者もいるのですねぇ。」


 シャトレがほっとして胸をなでおろす。


「基本的にはですよ?シャトレ君。このタイプは僻地(へきち)を開拓します。」

「開拓民じゃねぇか。」「勇者だろ?」


 サバスは懐から古ぼけた革製の手帳を取り出した。元は上質な革と紙で出来ているだろうと思わせるそれは古ぼけながらもしっかりと機能を果たしているようだ。


「勇者ですが、戦闘系のスキルが無い物がこのタイプになる傾向があります。彼らはだいたい前人未踏の森だとか地図に無い無人島だとかに住み着きます。そして訳の分からない能力で村を起こし、町へと発展させいずれ街となる。過去には国にまで発展した例もあります。が、滅びましたけどね。」


 サバスは手元の手記を見ながらそう話した。


「それで彼らは何もしなければ害はありません。進んで誰かを(いさ)めるでも侵略するでもなくただ生活しています。まぁ、周りがほっとかないのですがね。」

「周りって言っても人類未踏だろ?」

「えぇ、ですからたまたま難破した船だとか命からがらたどりついた冒険者などが接触します。それを迎え非常識を見せつけ、懐柔して外界とのルートを築くのです。」

「非常識・・・その元の故郷の知識か?」


 ハッカがそう問う。


「その通りです。まずユニークスキルで引き寄せ、知識で食いつかせる。例えば・・・」


 サバスはまた手元の手記に目を落とす。そしてパタンと閉じるとまた口を開いた。


「そう、例えば難破した商船の生き残りと会合(かいごう)したとしましょう。彼はその商人を介抱した。それからスキルを使用し商人に一夜で家を作り、食事を振る舞った。すると商人は大層驚き感謝した。暫し彼と生活を共にした商人は彼の話すアイディアに驚愕し、驚嘆し、そして感嘆した。すると商人はその話を商品として売ってくれないか、と言った。すると勇者はそれくらいならばと言い商談はまとまった。そして彼の力を借り国へと帰った商人は彼の話を商売にした。」

「そりゃ大儲けだな。なんせ今の現状を見ると分かる。しかし・・・」


 シーザーは言葉を濁す。


「えぇ、利に(さと)い他の商人が黙っている分けわが無く儲けの出所を探し出しました。そしてついに見つけた頃、その商人の噂が他国の耳に入りとうとう国が動き出す。そして勇者のもとへ兵を派遣した。」

「・・・だが応じなかったんだな?」

「えぇ、その国は武力で乗っ取ろうとしました。そうなると勇者の本領発揮です。持前の知識と友好的な協力者の力を借り撃退した。それにとどまらず、敵は許さないと言いその国を滅ぼした。」

「そこまでしたのか!」


 サバスは手記を見ながら淡々と語る。


「敵対者は容赦しないと言う持論があったらしいのでね。まぁ、その結果で他の国はその勇者の町を国と認定し、手を出すことを禁じた。そして初代国王となった勇者は沢山の子供に恵まれ天寿(てんじゅ)を全うするまで末永く幸せに暮らしましたとさ。めでたし、めでたし。」


 サバスは手記を閉じて懐にしまった。


「そして国は滅びた。」


 シーザーはサバスが懐に手記をしまった所で口を開いた。


「初代が無くなった2年後に滅びましたね。」

「やはりそうなったか。」

「な、何でですよ!?話を聞くととても信じられないですよ!」


 キュアが手をパタパタして動揺しているがシーザーはやれやれと言った。


「いいか、キュア。まず勇者云々(うんぬん)は置いといてだ。誰の領地でも無い所に上手く使えば数百年は財をもたらすお宝があったらお前はどうする?」


 キュアはキョトンとしながら首を傾げて言った。


「え?誰の者でも無かったら早い物勝ちですよ?シーザー様は何を当たり前の事を言ってるんですよ?」

「ならそのお宝を少しずつ運びだしている者がいると言う噂が流れてきたら?」

「そんなの全部持っていかれる前に私も急いで取りに行くで・・・あぁ!」


 キュアの頭の上で何かが光ったようだ。


「国も個人も規模が違うだけでとどのつまり同じだ。しかもそいつは国ごと潰した。するとまぁ、潰れた国の王族もやり方はまずかったが自国の、まぁ国民の為だろう。そうすると急に国がなくなって流浪(るろう)の民となった国民はどうなる?貴族は?領主は?潰れた国の民に(ろく)な未来は無いぞ?」

「そりゃあ、悲惨ですよ!」

「その通りです。そしてそんな危ない奴に敵対する国はいないでしょう。()()()()()()()はね。その勇者は結局無害を装いながら他国に恐怖を植え付けた。すると彼がいなくなった後は他国がこぞって潰しにくる。今の内に厄介な()は無くそうとね。」

「そいつは敵を作り過ぎたな。どうせ碌に外交もしないで()()()()でもしてたんだろ。・・・勇者ってのはもしかしてそこまでの知識が無いのか?」


 シーザーは頬杖を突きながら答える。


「えぇ、()()()()()()()()です。所詮は先人の知識ですしね。そもそも故郷で高度な教育を受けていたとしてもたかが一般人。帝王学を学んでいたとは思えません。聞いた所で『そういうもの』としか言いませんしね。」

「完璧ではない、か。」

「そうですね。頭で比べるとハッカ君はもとよりおそらくビーツ君くらい、AB君よりマシってくらいしょう。」

「「おい!」」


 ABコンビから間の良いツッコミが入った所でシーザーが訪ねた。


「なぁ、サバス。」

「何でしょう坊ちゃん?」

「坊ちゃんはやめろ。それよかお前の言い方はまるで勇者に会った事があるような言い回しだな。それにその手記はえらい古い物に見えるが質が良すぎる。同じものが何処で買えるかも気になるが何が書いてあるんだ?」

「流石坊ちゃん!目の付け所が違いますね。それと私は勇者に会った事があります。」


 サラッと爆弾発言をしたサバスだった。


私は講義や授業が大嫌いでしたね。皆さんはどうでしたか?

今日も読んで下さりありがとうございます。

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