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訪問

 ギルドは各支部によって様々な建築様式をしているが大体の建屋は二階建ての建物になっている。シーザー領のギルドも例に漏れず、木造の二階建ての建屋だった。一階部は主に冒険者の為のフロアであり、受付カウンター、買い取りカウンター、掲示版、職員事務所や仮眠室と併設の酒場がある。裏手には別の建屋があり、そこは解体を行うスペースや訓練場と言った実務を伴う場所だ。そして二階には会議室や職員用の更衣室、他には来客用の応接室がある。その中でも最も最奥の部屋に貴賓室を兼ねたギルド長室があった。流石に貴賓室を兼ねているだけあって調度品等もそれなりに豪勢な物をそろえていた。入口から入ってすぐの所には大理石製の机に、それを挟む様に何かのモンスターの毛皮であつらえたと思われるソファーが対になって配置されている。その奥に一際大きい執務机があった。奇妙な(まだら)の模様をした木目に艶のある光沢、一見すると深い木の色合いだがどこか赤や紫とも見える深い色はその部屋の中で一層の存在感を放っていた。そのような気品溢れる机、(もと)い部屋に全く似合つかわしくない男が元より険しい顔を更に険しくしてその机の前で報告を受けていた。


「・・・以上で報告を終わります。もうすぐお見えになると思いますのでどちらへご案内致しましょうか?」


 報告をしている女性はどこか感情の無い目をしていた。


「ご苦労だった。来たら応接室に通してくれ。あと、なんだ。」

「どうかしましたか?」

「いや、いい。・・・今日は案内が終わったらもう帰ってゆっくり休め。」

「心遣いありがとうございます。ですが私にはまだ仕事がありますので、気持ちだけ頂いておきます。では失礼します。」


 リューはそう言って室長室を後にした。


「はぁ、領主の使いが来た、か。」


 ギルド長は机からソファへ移動し腰かけ呟く。


「絶対ソーマの件だな。あいつ、領主に何をしたんだよ。あれから顔出さねぇし、絶対面倒事だな。いや、もしかしたら領主もソーマに何か依頼をしてその報告だったりするか?あいつは常識から逸脱しているからその線も・・・。」


 ギルド長が思案に(ふけ)っていると部屋の扉がノックされた。


「ギルド長、領主様の使いの方がお見えになりました。只今、リューが第二応接室に案内しております。」


 扉の外からギルド長へ声がかかる。


「分かった。すぐに向かう。」


 ギルド長は何もない事が無い事は分かっていたがそれでも何もない事を祈るのだった。


「失礼する。」


 ギルド長はそう言ってやや緊張しながら部屋へ入った。すると中には凛とした表情の兵士が座ってこちらを見てから立ち上がった。


「何度も足を運ばせて申し訳ない。俺がこのギルドの長をしている。ベンだ。」


 ギルド長のベンは社交辞令程度には謝罪したが、あまり下手に出ずに堂々と兵士へ歩より右手を差し出した。


「私はシーザー・モス伯爵の近衛兵を務めているバックスだ。この度は領主様がギルドへ通達したき事柄があるとの事で参上した。」


 するとバックスは差し出された右手を無視して淡々と語った。


(友好的では無いか。それともこいつは命令だけで動くただのサンピンか?)


 するとベンは差し出した右手をスッと下げ色々探りを入れる。


「これはこれは、モス閣下からの直々のご通達とは何やら穏やかではありませんな。」


 あくまで友好的に接しようとするベンに対してバックスはただただ職務を遂行する。


「これより領主様の通達を伝える。」


 バックスは懐より羊皮紙を取り出しそれを読み上げた。


 陽火、17日


                              通  達

 

 冒険者ギルドに所属しているソーマが審議の場にて狼藉(ろうぜき)を働いた為これをジュダイ公国の法に則り罰した。その際にギルド長がソーマに便宜を図って要る為、何かしらの指示があっての暴挙ではないかと懸念する。懸念理由としては、ソーマが暴れた時の処分を公開せずにいる事や、ソーマ本人の証言、当兵士の証言、また匿名の証言を元とした事由である。冒険者ギルドは中立を公言している事からそちらでの事件や事故は「ジュダイ公国法」に抵触しなければこちらから審議に口を挟まないが、今回は法に触れた為に通達する事を理解して貰いたい。以上の事からギルド長のベンに当該事件の説明を要求する。この通達に異議がある場合は5日以内にその事柄を述べよ。返事無き場合、この事実を肯定とみなし然るべき行動を実行する。貴殿らが真に中立の立場を貫いている事を切に願う。


                                             ジュダイ公国伯爵シーザー・モス』


「以上が領主様の通達である。改められよ。」


 バックスはそう言うと手元の羊皮紙をベンに差し出した。するとベンはその羊皮紙を受け取り無言で内容を読む。


(確かに本物だ。領主の封蝋印がある。ソーマの野郎!一体何をしやがったんだ!)

「・・・確かに受け取った。」

「では私の任務はこれで完了したので失礼する。」


 バックスはそういうと部屋から出ようとドアに手を掛ける。


「ま、待ってくれ!ソーマは領主様に何をしたんだ!?」


 出ようとするバックスをベンは引き止め問う。


「私は通達を命令されたに過ぎん。他の事や内容を話す権限を持ち合わせてはいない。」

(このカタブツめ!だが、この手のヤツは()()()()()な奴だ。)

「しかし、この内容だけではこちらも理由が良くわからん!罰せられたソーマもそうだが、罪状はなんだ?ギルドは中立だ。これだけではそちらの命令を聞くわけにはいかない。()()()()()()()()()だろう?だからもう少し出来事を教えてくれ。」


 ベンは内容が分からないと言ってバックスから少しでも情報を聞き出す為に模索する。するとバックスは振り向き言った。


「私は別に困らん。任務は遂行した。」


「いや、だからアンタがもう少し説明してくれたら全て円滑に進むと思わないか?後で説明が悪いとか何度もやり取りをするとあんたが後で言われるかも知れないぞ?」

「・・・仕方がない。」

(よし!やはりこの手の奴は自分の仕事にケチが付く事を極端に嫌うタイプだったか!)


 ベンが心の中で確信を得ると同時にバックスが話した。


「もう一度言うが、()()()()()()。」

「なにっ!」

「そもそもお前は勘違いしている。これは命令ではなく通達だ。内容も何処にも命令とはうたって無いだろう。それに無視しようが、異議を唱えようが構わない。領主様はその時場合は然るべき行動を行うと明記してあるだろう。だから、言い換えればこれはお願いだ。『私たちはこうするがいいか?』とな。」

「何を屁理屈を!」

「屁理屈ではない。内容が分からぬなら領主様本人に聞けばいいだろう。その為に説明しに来てくれと()()()しているのだ。」

「だからと言ってこんな脅しじみた横暴が許されると思っているのか!」

「まだ理解出来ぬか?ならかみ砕いて説明しよう。私たちはソーマを裁いた時にギルド長の意思を感じた。裏をとってもどうも怪しい。だから中立のギルドへ然るべき行動をとる。だが、勘違いがあってはならないので確認を取るために通達を出した。おかしい事があれば説明してくれ、とな。通達通りギルドが真に中立なら説明してそれで解決だ。何も問うまい。無視すればこちらの予定通りに動くだけだ。だから貴殿の行動がどうであれ私には何の問題もない。理解したか?元冒険者(バカ)のギルド長よ。」


 ベンはバックスの言葉にみるみる顔を紅潮させていく。


「り、理解したさ。ご高説痛みいるよ、バックス殿!」

「それは良かった。ではこれにて失礼する。」


 バックスはそう言うと部屋を後にした。バックスが去ってから少し後。部屋から激しい物音がした。


「あのクソ野郎が!領主の犬め!」


 ベンは毒を吐くと机を破砕した。


「あの野郎!俺を、いや!冒険者(俺達)を頭が悪いと馬鹿にしやがったな!いいぜ!貴族の甘ちゃん野郎に冒険者がどういう者か理解させてやろうじゃねぇか!」


 ベンは部屋にやって来た職員に宥められたが、その怒りは静まる事は無く沸々とバックス、基シーザーに怒りを向けるのだった。



本日も読んで下さりありがとうございます!

PVもどんどん増えていって感謝感激です(*^^*)

ブックマークしてくれたそこのアナタ達!

本当にありがとうございます!

それではこれからもよろしくお願いします!

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