決算報告
会議室に人が集まっていた。勿論シーザーに招集されたからだ。どうやらこの前の勇者との戦いの反省会を行う様だ。
「反省会とかガキじゃあるまいし本当にするのか?」
アレクが机に頬杖を突きながら愚痴る。
「まぁまぁ、良いではないですか。反省会は大事ですよ?私もビーツと二人でよく行います。」
不機嫌なアレクをシャトレがなだめる。
「そうですよ!復習は大事って先生も言ってましたですよ!」
「誰だよ先生って!」
「先生は・・・あ!来たですよ!」
会議室の扉が開かれ、サバスとシーザーが入って来た。
「やっぱサバスかよ!また講習か?」
「いいや、反省会だ。」
シーザーが答え、長机の上座へと腰かける。サバスはシーザーの横へ立つ。
「皆、ご苦労だったな。おかげで勇者を始末する事が出来た。それにこちらへの被害は無い。ほぼ完璧な勝利だと言えるだろう。」
シーザーが皆を労う。
「なら反省会はいいんじゃないのか?」
アレクはシーザーに問う。
「言っただろう。ほぼだとな。やはり見直す箇所はいくらかある。サバス。」
「かしこまりました。」
サバスはそう言うと書類を皆に配り、黒板に書き出した。
「まず初めに今回の決算を報告いたします。利益ですが、無形財産として日本の知識が幾つか分かりました。後、私の持つ手記の内容の解読も進みそうです。これにつきましては現在尋問しておりますので纏まりましたら改めて報告いたします。」
「あのぉ、ですよ?」
キュアがそろりと手を上げる。
「おや?どうしましたか?」
サバスが不思議そうに聞き返す。
「そのぉ、無形財産ってなんですよ?」
「「「・・・」」」
会議室に一瞬の静寂が訪れた。
「これは失礼しました。私とした事が配慮を欠いた様ですね。無形財産とは形に残らない財産の事でして、簡単に説明すると知識だと思って下さい。逆に有形財産は形あるもの、金銭的な事だと思って下さい。」
「なるほどですよ!わかったですよ!それにしてもキュア以外みんな知っているなんて流石大人ですよ!」
「いえいえ、正直に言ってくれてありがとうございます。その方が私も助かります。知った振りをされるのが一番危険ですからね。おや?今何人か動揺されませんでしたか?」
「ま、まさかな!そんな事ぐらいなら知っているさ!」「そ、そうだぜ!まぁ、キュアちゃんは分からない事があったらどんどん質問した方が良いぞ!」
「・・・そうだな。」
「し、知らない事は悪い事ではないですしね!」
(あぶねぇ!恥かく所だった!キュアちゃんナイス!)(後で何か買ってやるか!)
(・・・冷や汗をかいたな。)
(今日はキュアちゃんの好きな献立にしましょう!)
あえて名前は出さないが、何人かがホッと息を吐きキュアへの感謝を心にしたのだった。
「はい!それでは続きに移りますよ。」
サバスが手を叩いて意識を集める。
「続きまして有形財産ですね。こちらはまずは損失から報告します。まず、今回被害に遭った兵士の見舞い金が三人に合わせて金貨60枚、兵長のガルバ君は勇退退役としまして金貨1,440枚が支払われます。あと、馬が1頭ですね。その他に無効化のアンクルが2つと審議の間の修繕費が必要となります。あとガルバ君は拷問官として再雇用しましたが、こちらの給金は今回には含みません。」
皆が手元の資料を見ている中、シーザーは何か思案している様だった。
「次に利益に移ります。こちらはまず件の金貨ですが二袋で金貨2,000枚となります。」
現金な表現が出ると室内がざわつく。
「それからニーナ嬢は国金貨70枚で引き取ってもらえました。ついでにシェリーは国金貨10枚です。」
「男と女でこんなにも差が出るのか。」「こりゃ女衒がいなくならない訳だ。」
「まぁ、こちらは子爵の趣味における所のウエイトが大きいですがね。その他は税収としてニーナ嬢の村人から人頭税の徴収もありますが、こちらは表に記載しています。」
「・・・ややこしいな。」
「バカには出来ん仕事じゃて。」
「本当に賢いヤツに良い奴はいないぞ。」
ハッカがしみじみと言った。
「ここまでが金銭になりますので金額を報告します。結果、純利益が金貨8,523枚となりました!」
「「「おぉ!!」」」
部屋に歓声が響く。
「すごいな!」「これは報奨金も色付くんじゃねぇか!」
「温泉にでも行こうかのう。」
「キュアは新しい服が欲しいのですよ!」
皆が様々な欲望を口にし出した。
「落ち着いて下さい。まだ続きがあります。勇者の所有物についてです。」
「そう言えば、勇者はどうなったんだ?」「おぉ!そうだった。」
ABコンビがそう言えばと言った感じで思い出す。
「勇者はいま地下で幽閉されていますが表向きは審議中に暴れ、反逆罪でその場で処刑された事となっています。」
「それで勇者の持ち物を接収したのか。」
「えぇ。」
「確かアイテムボックス持ちと聞いたが、取り出せたのか?」
「それについてはウィードさん、お願いします。」
サバスがウィードに説明を促すと、ウィードは椅子に深く掛け直し口を開いた。
「まずアイテムボックスは外から干渉出来ないのは皆知っておるの?」
皆が一様に頷く。
「これは本人のスキルによるものでのう。本人にしか取り出せん。あと死亡した場合は分からん。」
「・・・わからないのか?」
「うむ、異次元に行くのか消失するのか仮説はあほうるが誰もそれを証明出来んわい。だから本人に取り出してもらった。」
「どうやったのですか?」
「そこは流石に秘密じゃな。」
「今夜一本多く付けますよ?」
シャトレがウィードを誘惑する。
「むむぅ!いや・・・でも・・・」
「おじいちゃん!ダメですよ!」
以外にも揺れたウィードをキュアが諫める。
「孫に叱られてしまったわい。」
「残念です。」
「まぁ、そういう訳で勇者から接収した者がこれじゃ。」
ウィードは足元から箱を取り出した。すると中から深紅の液体の入った小瓶や、様々な色のクリスタル、財布に、歪な形の石、それにフライパンと包丁が出て来た。
「何か沢山出てきましたね。お料理に関係あるモノはこのフライパンと包丁だけですか?」
シャトレは買い出しの気分の様だ。
「良くわからない者が沢山あったが、とりあえず危険の無い物を持って来たぞ。他の物については同じく後日報告じゃな。」
そう言ってウィードはソーマから接収した物の説明を始めるのだった。
本日もありがとうございます。
こちらは久しぶりに雨が止みましたが、まだまだ梅雨は続きそうですね。
次の構想を練っておりますのでもうしばらくお待ちください。