開廷
「碌でもないか。そうかもしれないね。私はまだまだ未熟だ。だからこうして嫌疑不十分で審議を行わなければならない。」
シーザーはそういってソーマを見下ろす。
「意外と謙虚だな。普段からそうならいいのによ。」
「貴様!」
机を叩き割らんばかりの勢いでハッカが机を叩きつけた。
「先ほどから調子に乗りおって!」
領主の横の席から勢いよく立ち上がり怒鳴る。
「なんだ?腰巾着。お前はおつむが足りないのか?」
顔を真っ赤にして怒鳴るハッカをソーマは更に煽る。
「下がれ、ハッカ。」
今にも飛びかかりそうなハッカをシーザーが止め、ハッカは渋々席に座る。
(来ないか。こいつは単純そうだと思ったが。まんまだな。)
(ソーマ様!何いきなり喧嘩を売ってるんですか!様子見では!?)
(いや、面倒だから手を出させて制圧した方が早いと思ってな。こいつ等くらいなら問題ないだろう?)
(それはソーマ様だけです!。『鑑定』が使えないのではっきり言えませんが、恐らく大丈夫でしょう。ただ、あの執事服の男だけは良く分かりません。)
(あいつか、確かに不気味だな。)
ソーマとシェリーが相談しているとサバスが宣言した。
「どうやら双方落ち着かれましたね。これより審議を開始しますが、進行の妨げになりますので不用意な発言は控えて下さい。わかりましたね。ハッカ親衛隊長。」
「うむ、すまない。取り乱した。」
(あいつが親衛隊長か。見た目通り脳筋だな。)
「それでは審議を始めます。進行は私サバスが行います。」
サバスはそう言うと手元の羊皮紙を見ながらソーマに掛けられている嫌疑を読み上げた。
「・・・以上で被告人ソーマ並びにシェリーに掛けられた嫌疑にございます。それでは反論があればどうぞ。無ければ異論なしとして有罪が確定します。」
「当然異議ありだ。」
ソーマがそう言うとサバスはあらかじめ用意してあった資料をシーザーに渡し、手元にも置いた。そしてソーマに発言を促した。
「まず初めに、村での騒動だがお前達は俺が公務を妨害したと言っているが何故だ?俺達は無茶な要求をしている者達を諭しただけだ。」
「と申しておりますが、ハッカ隊長?」
「愚問だな。我々は罪人ライズの自白によりニーナを共犯と認め、連行しに向かったのだ。その最中にこの者達が乱入し妨害した。あまつさえ兵士に怪我を負わせてだ。」
ハッカそう言うと腕を組みソーマを睨む。
「ソーマ君、何故妨害しただけではなく兵士に怪我までさせたのか聞いていいかい?」
「だから言っただろうお前達の要求が無茶苦茶だったからだ。それに手を出したのは兵士の方からだ。」
ソーマは面倒臭いといった態度で答える。
「何がどう無茶苦茶だと?」
「まず、ニーナが犯人だと仮定してだ。村人になぜ理不尽に罪を着せるんだ?犯人はライズって奴とニーナだろうが。それに他には調査したのか?他に犯人がいるんじゃないのか?どうも強引すぎるんだよ。」
ソーマはシーザーを見上げ口角を釣り上げる。
「ふむ、では次に何故兵士にあそこまで重症を負わせたんだい?」
シーザーはソーマの問いに動揺する事無く次の質問に進めた。
「アレはお前の所の兵士が襲い掛かかってきたんだよ。だから攻撃した。身にかかる火の粉は払うもんだろ?まぁ、やり過ぎたというよりは兵士があまりにも弱すぎてそこまでなるとは思わなかったんだがな。」
ソーマが平然と答えるのに対してハッカは歯ぎしりをしている。
(おー、おー、安い挑発に乗ってんな。)
「なるほどね。」
シーザー顎に手を当てて頷く。しかし、笑みは崩さない。
(こいつはボロを出さないな。まだ言い逃れ出来ると思っているのか?)
「ではこちらも答えよう。」
シーザーが腕をほどき椅子にかけ直し姿勢を正す。そして笑みが消え真顔になり領主のソレになった。
「まず、村人の罪の件だがこちらは我がジュダイ公国が制定する連犯罪を適応している。罰則も法に則り、逸脱しないしかるべき量刑だ。どこの誰とも知らない君に指図される謂れは無い。」
シーザーは冷たく言い放つと係員に一冊の分厚い本を渡しソーマへ持って行くように促した。すると兵士はソーマにその本を渡した。
「疑うなら確認するといい。519ページの中くらいにある。」
ソーマは言われるがままにページをめくり内容を見たシェリーも一緒に見ている。
「もしかして字が読めなかったかな?そうなら誰か付けようか?」
シーザーは心底気を使った様に言うがソーマはキッと睨み答えた。
「ご親切なこった。文字くらい読めるさ。」
(チッ!この世界の言葉はスキルで分かるが文字はな。)
(大丈夫です!私が読みます!・・・あいつの言っている内容は間違いないようですね。)
(・・・そうか。)
「それは失礼、異国の者かと思ったものでね。このジュダイ公国法令全書は共通語だが、どこの生れか言ってくれれば各国の言語に翻訳したものを用意するよ。勿論、そこのエルフのお嬢さんの国のものまで用意しよう。」
(嫌味な野郎だな。しかも適当な出身を言えばすぐにバレるか。シェリーがいて助かったな。)
「間違いないようだな。」
ソーマはふてくされて言う。
「なら次に兵士の怪我についてだが、こちらは公務を宣言したハズだ。それなのに君たちは兵士を妨害した。」
「お前らが先に剣を抜いたんだぞ!それに・・・」
ソーマが捲し立てる。
「それは君が私を侮辱した上に公務を妨害しようとしたからだろう?その本にも載っているが『正当な理由無くして貴族を侮辱または侮蔑してはならない』と明記している。」
「なんだよ、その無茶苦茶な法律は!」
ソーマが机を叩き悪態をつく。
「無茶苦茶?どこがだい?」
シーザーがキョトンとした顔で問う。
「貴族が優遇され過ぎだろうが!」
ソーマの叫びに一同どころかシェリーまでもがポカンとしてしまった。
(ソ、ソーマ様!?)
「君は頭は大丈夫か?貴族が何なのか知らないのか?一応、説明するが貴族とは建国に貢献した者の血筋や、国に大きな功績をもたらしたものに与える社会特権階級だ。勿論特権だけではない。国を動かす政や私みたいに領地を運営している者もいる。そのなんだ、商家で言えば会頭みたいなものだ。民は従業員って所だね。」
「・・・」
「いいかい?貴族は国の上流階級だ。自分で言うのもアレだが敬うものだよ。例えどこの国であろうともね。だから、どれだけ力を持っていようと貴族に無礼は許されない。それを許せば盗賊と何も変わらないよ?」
「それでも・・・」
「君は何か勘違いしているようだね。貴族も自由ではない。法を犯せば罰せられるし、先ほども言ったが、正当な理由無くしてと言っただろう?理由があれば問題ないんだ。民は貴族の顔色を窺うが貴族もまた民の顔色を窺っている。貴族は民の模範でなくてはならないんだ。まぁ、帝王学だが庶民には関係無い話だね。」
シーザーはやれやれといった感じで語る。
「だから、君の行いは罪になるんだ。私の命令を遂行しようとしただけの兵士の公務を妨害した。これは命令書を発行している正式な公務だ。勿論王都にもお伺いを立てているよ。それに正当な理由なくして私を侮辱し、また公務を妨害したものを捕縛しようとするのは当然だろう?君はその兵士に犯行し怪我を負わせた。どうだい?私は間違っているかな?」
シーザーは子供に説明する様に易しく諭した。
(クソ!でっち上げるってそう言う事か!)
(ソーマ様!いささか分が悪いです!どうしましょう!)
(・・・落ち着け。相手のペースに飲まれるな。確かに俺たちは無知だったかも知れないが、根本ははっきりしているだろう?)
(そうでした!調子に乗っている領主をギャフンと言わせましょう!)
(そうだ、俺達の反撃はこれからだ!)
「どうした!小童!ぐうの根も出ないのか!」
ハッカが勇者を煽る。
「黙れよ。脳筋。」
「はッ!負け惜しみか!」
「なぁ、領主様よ。確認するが正当な理由があれば問題ないんだよな?」
「あぁ、そうだとも。君にはその正当な理由があるとでも?」
「ある。」
ソーマが断言すると周囲がざわつき始めた。
「ならば聞こう、その理由とやらをね。」
お待たせしました。なかなかまとまらなくて苦戦しております(´;ω;`)
自分の文才の無さが身にしみますw
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます!