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日常

一年ぶりに投稿します。不定期更新ですがよろしくお願いします。


「違う!俺じゃない!俺はその時店で酒を飲んでたんだ!ニーナが・・・」




 ドパァン!!




「!!」




 必死で何かを訴えていた男は急な衝撃と痛みで言葉を失う。




「黙れ!お前が盗みを働いた事は分かっているんだ!」


「ほ、本当だ!だから俺は店で・・・がぁ!!」




 鞭と言うにはそれはあまりにも固くそして重い。まるで鉄の棒にでも打ち据えられているのではないかと思うほどである。




「貴様のいう事は偽りだ!店の者に聞いたが、ニーナと言う娘は10日も前に店を辞めて故郷に帰ったそうだ。」


「そんな!嘘だ!だって・・・」


「五月蠅うるさい!」




 ドコッ! 




「ぐぎゃ!」




 大男がさらに筋骨隆々な男にいたぶられてうなだれていた。




「領主様!この者、いくら責めても白状しませんが処遇はどう致しますか?」




 屈強な男に領主と呼ばれた男は赤い髪の似合う美丈夫だった。背は高くそこの男よりは低いものの、引き締まった体は体幹の良さをうかがわせた。




「おい、ハッカ。そんな無茶をするんじゃない。この者が潰れてしまうよ。」




 この筋骨隆々の男、もといハッカは名をハッカ・テーラーと言い領主に仕える男だ。




「ハッ!承知しました!」




 ハッカは領主の言葉に従い男への折檻をやめる。




「まったく、うちの部下が申し訳ないね。えーと・・・」


「この者はライズと言う名で町に住むの農夫です。」


「ありがとう、ハッカ。では改めてライズ君。君には徴収した税金の窃盗の容疑がかかっているが、何か言う事はあるかい?」




 領主は灰色の瞳でうなだれている男の顔を覗き込むように見た。




「ご、誤解です!領主様!俺はあの日酒場で酒を飲んでいたんです!それは店員のニ・ー・ナ・が知っています!」




 男は必至の形相で領主に訴えかける。




「だ、そうだよ。どうなんだい?ハッカ?」


「ハッ!酒場にはニーナと言う店員はいましたが10日前に辞めて故郷に帰ったそうで・・・」


「嘘だ!そんなわけが無い!」




 食い気味に男が反応する。




「貴様ぁ!我々が嘘をついていると申すのか!」




 ハッカが激怒し再び男に鞭を据えようと振りかぶった。




「やめよ、ハッカ。」


「むぅ!承知しました。」




 ハッカは射殺いころさんばかりの瞳で男を睨む。




「ふむ、ライズ君そのニーナと言う者の家と故郷は分かるかね?」


「はい、家は・・・」


「いや、ちょっと待ちたまえ。」


「え?」




 男はキョトンとした顔で固まった。




「ハッカ、音玉おとだまを持て。」


「承知!」




 ハッカは懐から透き通った水色の球を取り出し領主に渡した。




「ライズ君、君の証言をこの音玉に覚えさせよう。間違えがあっては困るからね。」


「はぁ、まぁそうおっしゃるのなら。」


「よし、では始めようか。」




 領主はそういうと人の良さそうな笑みを男にむけていた。




「よく話してくれたね。」




 領主は聞き取りを終えると即座にたたずまいを正し声高らかに宣言した。




「ジュダイ公国が伯爵、シーザー・モスの名において判決を言い渡す。被告人ライズを公益窃盗の罪において5年の奴隷落ちとする。また彼の所有する財産の半分を取り上げ、連犯として彼の一族に追徴課税として人頭にんとう税を3年間一割増しとする!ただし、ニ・ー・ナ・の・証・言・により事実無根の場合は彼を無罪とする。執行猶予はひと月とする。以上だ!」




 シーザーの宣言は一瞬で男を青ざめさせた。




「なっ!領主様!どういう事です!どうしてこんな!」


「まぁ、落ち着きたまえライズ君。君は無・罪・なんだろう?」


「そうです!なのにこんな事って!」


「大丈夫だよ。その為の執行猶予だ。その間にニーナ嬢の証言があれば君は無罪だ。それとも何かね?無罪では無いと?」


「い、いえ!間違いなく私はやってません!」


「ならば問題ないだろう?さて、ハッカ。ニーナ嬢の家と故郷の村に人をやって調べてくれ。すぐにニーナ嬢の出頭命令の書状をしたためよう。」


「承知しました。」




 ハッカはすぐに部下にシーザーの命令を実行させるべく指示をした。




「さて、ではライズ君には申し訳ないが無実が証明されるまで地下牢にいてもらうよ。あぁ、ハッカのさせた怪我については治療させよう。おい!」




 シーザーが声を掛けると部下が数名やってきた。




「ライズ君を手当てして地下牢へ案内してくれたまえ。くれぐれも丁重にな。大事な労・働・力・だ。」


「ハッ!直ちに!」




 兵士たちはそういうと男を両脇から拘束し地下牢へと連行していく。シーザーは男とすれ違う際に耳元でボソッと呟いた。




「あ・の・娘・は子爵の好みらしいぞ。」


「!!どういう意味です!?領主様!?」


「連れていけ。」




 喚く男を後目に領主はハッカに告げた。




「ハッカ、僕は執務室に戻るよ。後でお茶を入れてもらうから君も一緒にどうだい?」


「承知しました。後ほど伺います。」


「じゃあ、また後でね。」




 コンコン。




「どうぞ。」


「失礼します。領主様。」




 ハッカは先ほどの尋問の後処理を終え約束通り執務室へと訪れていた。




「ご苦労様。ちょうどお茶の準備が出来た所だ。こっちで飲もう。」




 シーザーは部屋のテラスのがある窓際のテーブルへハッカを誘う。




「領主様、窓際は・・・いえ、なんでもありません。」


「そうかい?さぁ、冷める前に頂こう。あ、君もありがとうね。もう下がっていいよ。」




 シーザーは準備をしてくれたメイドに労いの言葉をかけて下がらせる。そしてメイドが出て行ったのを見送ると先ほど入れてもらった紅茶に口をつける。




「やっぱり紅茶はティーユーロ産に限るね。」


「そうですね。しかし、私はもう少し甘い方が好みですが。」


「相変わらず見た目に寄らずの甘党なんだねハッカは。それで、いつまでそ・れ・を続けるんだい?」




 シーザーがハッカに含みを持たせた事を言うとハッカは紅茶に砂糖を大量に入れて一気に飲み干した。




「はぁあ!やっぱりこれに限るな。」




 ハッカは先ほどの態度とは違い砕けた口調で喋り出した。




「しかしお前もえぐい事するなぁ。事後処理する俺の身にもなれよな。それで、お前は?」




 ハッカはまるで酒場で友に仕事の愚痴をこぼすような態度でシーザーに語りかける。




「悪いな、だがこれで万事OKってやつだ。しばらくはのんびり普通の仕事でもして金が入ったら旅行でも行こうぜ。」




 シーザーもまるで友人に語り掛けるようにハッカに接した。まるで上司と部下と言うよりは長年の悪友あくゆういったと感じだ。




「それもいいがその為には後詰ごづめをしっかりやれよ?」


「わかっているさ。お前も頼むぞ。って事で首尾を聞こうか?」




 シーザーは机に脚を乗せてハッカに問う。




「まずは、ライズだがあいつは地下鉱山へ3・0・年・の・契・約・で・売・れ・た・。それで酒屋の女だが今はサフラン子爵が館で遊んでいる。」


「ちゃんと金は貰ったのか?」


「前金で50。後金で20だとよ。」


「本当かよ?あいつにしては気前がいいじゃないか。てっきり値切ると思ったんだがな?」


「よほど好みだったんじゃないか?」


「アレがねぇ。まぁ、いいか。それで女の故郷には?」


「先ほど音玉を持たせた兵士を三人ほど走らせた。明日には報告が来るだろう。」


「聞くか?」


「おう。」




こうしてハッカは持って来た音玉に魔力を流し出した。

色々ありまして一年ぶりとなりますが、新規投稿しました。前回の分もぼちぼちやりますので応援よろしくお願いします!

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