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逆天の神子  作者: ゆうジョ
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第一話 プロローグと少女の悩み

昔、お母さんは人の運命は糸だとよく言ってくれた。

ポカポカのグローブ、ひらひらのドレス、ふわふわの枕。

何かになりたい―――人もまたそうやって人生を形にするの。

その形が人の『夢』だと。

お嫁さんになりたい、お姫様になりたい、お母さんになりたい。

私も、そんな夢があった―――


突然だが、天道女子学院高校部二年である私、天宮(あまみや)天衣(あい)はわけあって、彼女絶賛募集中。

条件① 母のように優しく

条件② 娘のように大人しく

条件③ 姉のように頼りになる

条件④ 妹のように可愛がる

条件⑤ 彼女らしく愛し合う

そして条件⑥ 私と共に……

……なんて、そう簡単に見つかる訳ないよねぇ……

だいたい、女子校とは言え、女性同士で付き合うなんて、そう簡単に受け入れる社会になっている訳でもないし……

まして、私は……


そんなことを教室で考え込んでいた私に声を掛けたのは―――


「おはようあまっち! まだ朝から考え事?」

「まあそんなどころ、今年もよろしくね、楓」


風間(かざま)(かえで)、一年から新聞部のエースを務め、私のクラスメイトであり幼馴染で親友だ。

だが彼女には、ちょっと触れてはいけない話題がある。


「まさか、新学期でもまだアイツの代わりを探すつもり?」

「あはは、さすが楓。お見通しだな」

「当然だろう。親友だからな…そろそろ諦めたらどうですか?」

相変わらず、この話題になると容赦しないな、楓は。


「それでも、私は……」


たった一人、両想いの人がいた

私のことを知っても、心から好きって言ってくれた

頑張ってくれって言ってくれた

だから、彼女の為にも、私は……


「ふぅー、まぁあまっちがどうしてもというのなら止めはしないけど、ちゃんと相手を選んだ方がいいよ」

「ありがとう楓、気をつけます。」


否定はしないが、決して心から認めているわけでもない。

心のどこがで距離を取りながら、お互いを仲良くになれる関係を維持する。

それが私と楓の、『親友』という関係だ。

決してそれ以上には成れない…たとえ片方はそれ以上に触れようとしても。

「そう言えば楓、今日は何が面白いことない?」

流石にこれ以上この話題を続けると危ないので、話題を変えましょう。


「ふふん、実はねぇあまっち、今日は編入生がこのクラスに来るって」

「編入生?」


これは驚いた、世界で八個だけの神子専門学校の中でも一の名門学校であるここ、天道女の編入試験は相当な鬼門のことが有名だ。

実力テストは勿論、筆試のテストも大学以上と聞かれた。

それを突破できるなら相当な腕前なはず。


「どころでその情報はどこから?」

「取材からだよ、ミサっち先生から。推薦したのも先生ですて。実はこっそり写真は撮ったけど見る?」


楓は手持ちのデジタルカメラを私に見せるように挙げる。

さすが新聞部のエースと言われたことがあって、仕事が早い。


「どれどれ、へー、結構綺麗な顔をしてるじゃん」

「そう?まぁ顔だけならな。」


カメラの映像には二人が写っていた。いつも微笑むうちの担任の岬先生とその隣で天道女の制服を着ている女子高生、おそらく例の編入生だ。

長い黒髪のポニーテールと同い年にしてはちょっと大き胸、なぜか嫌そうな表情をしているけど顔全体が凜とした美人。きっと外見だけでも学校に入ったらすぐ話題になるでしょう。

けどなぜだろう、彼女の顔を見るときに、どこかキュッとした気分になる。

これって、もしかして……恋ッ?!


「あまっち、顔真っ赤だぞ」

「え?そ、そうなのか?」


必死に手を振って顔を隠そうとする私に対して、楓は疑う目線で睨んだ


「まさかと思うだけど、あいつのこと一目惚れしたの?」

「嫌だな楓、そ、そんなことある訳ないじゃない。幾ら私だからって、め、面識すらもしてない相手に、ここ、恋をしたなんて……」

「おいおい、落ち着けて。重症だなこりゃ……」


あまりの恥ずかしさで両手で顔を隠した私は確認することができませんが、多分楓は今まで一番呆れた顔でこっちを見ている。


「まぁ、あまっちのそういう指向は知ってたことですし、そういうどころも好きだけど、アイツだけは辞めた方が良いぜ。結構怪しいだから」

「怪しい?確かにこの写真だと無愛想に見えるだが、それは楓は尾行したからでは?」

「まぁそれもあるだけど、私の観察眼によると、アイツわざと人を避けてる見えるね。ぜったーい何かを隠しているに違いないわ」

「何がって…例えば?」

「そうだなぁ…最近この辺りも有っただろう―――切り裂きジャックによる殺人事件。」

「あれか、あの血霧の聖夜(ブラッディ・イブ)の―――」


血霧の聖夜(ブラッディ・イブ)、二年前のクリスマス・イブの日本の東京で起きた近年最も残酷な殺人事件、被害者の女性は全身バラバラに切り裂かれて、広場のクリスマスツリーに飾られた。その非道極まりの惨死体と、事件起こる前に現れた謎の霧から、十九世紀末のイギリスにいる霧の都の殺人鬼「切り裂きジャック」の仕業だと言われた。


無論、これはあくまで都市伝説。幾らこの時代でも、百年以上に正体を隠すまま遠い他国にこんな目立つな殺人事件を起こす様な真似をするのは、あまりにも不可解な点が多過ぎる。

しかし、衝撃な事件に神秘な色を付け加えたことは間違いなく、神の存在ですら常識と見なすこの時代にとっては数少ない”謎”の一つであるとして、今でも世間から大きな話題と見られている。

そして今日、新たな事件が……


「確か新聞によると、昨日の夜被害現場らしき場所で不自然な霧が現れたと近所の人がそう言った」

「そして霧が去って警察が確認すると、バラバラにされた女性の遺体が発見された、てことだ」

「でも何でそれが編入生と関わるの?」

「それはねぇ、アイツがやったじゃないかって思うの。名前が『霧崎(きりさき)』で、編入した時期とピッタリだし、おまけにその怪しい態度、結構怪しくない?」

「…あのさ楓、幾らその霧崎さんが嫌いだからって、確証なしで人を疑うのは流石に……」

「じょ、冗談だよ冗談。それにいくら目が良くても、あんな霧の中で人を解体するのは有り得ないよ流石に」


「目が良く?」

「ええ、悔しいが、自慢の尾行を見破れからね。しかも窓の反射から一瞬って、普通見間違いと思うだろうそこは」

「へー、中々凄いじゃない、よくその場で通報されてないな楓は」

「もうからかわないでよあまっち、まぁ甘々のあまっちには一応忠告するけど、あんまり人を信頼しない方がいいよ」

「もう、カエデってたらー。そちらこそ気をつけて、なんだがすぐ深く関わり過ぎるイメージがあるから」

「大丈夫大丈夫、とにかく霧崎さんのことに関してはまだ調べて来るから、じゃ元気でね~」


そう言って、楓は爽やかに自分の席え座った。


「霧崎さん、か……」


編入生だから只者ではないと予想できたが、楓の尾行を見破るのは相当な者だな。

キツイ冗談までしちゃって、余程悔しいだろうな。

しっかし、楓の冗談はキツイとは言え、もしそれは本当なら。

勿論、殺人したと思ってないよ。

だって、この事件の真犯人は別人に居るから―――()()()()()()()()()()()()()別人にね。

でも、もし私の推測通りになれば、彼女こそが私の求めた人かもしれない。

恋人になり、家族になる、共犯者にもなる。

そしてこれは、きっと最後のチャンスだ。


「今日は、よい出会いができそう」


恋の予感が、一度止まった私を再び動かせた。

血に染まった私でも先に進む為に―――

私と共に、()()()()()()()()()()、霧崎さん。

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