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幼馴染を見返す  作者: ふか
5/5

5.戸蒔綾

せん。

  彼女の笑顔は……いや、彼女の俺に対する笑顔は全部偽物なのだ。





 陽はとっくに沈み、辺りは暗闇に包まれており、街灯を頼りにして家に着くことができた。


 玄関に入ると、元気を持て余した様子のショコラが跳ねながら迎えてくれた。それと同時に妹が出てきた。


「兄さん帰るの遅い! 私が帰ってくる頃にはいてよ! ショコラと心配してたんだからね」


 富松琴音、中学2年生だ。琴音は犬だけでは寂しさは補えないようだ。


 元々早く帰るため部活に入らなかった俺だが、今日は道草を食ってきた。


「ごめん、琴音」


 中学の下校時間の方が若干の早いため、俺はいつも早めに帰るようにしている。とはいえ、いつもというわけにはいってない。


 ただ今日は本当に遅すぎたのだ。


「そういえば、幸姉さんに会ったよ」


 幸……。


「物凄くかっこいい人と歩いてたけど、兄さん取られちゃうよ?」

「……もう取られたよ。あと姉さんって呼ばないで」

「え……取られたって、別れたってこと?」

「……ああ」

「えぇぇぇええ!!」


 目を見開いて叫ぶ琴音に、ショコラも驚き耳を立てた。


「まぁ、そうだよね。どんな優しい兄さんでも、あんなかっこいい人いたら、そっち行っちゃうよねー」


 同情はしてくれないようだ。まぁいいさ。


 さっさと風呂に入り、リビングにはニコニコした琴音が座っていた。


「じゃあ可哀想な兄さんの為に、この私が袖をまくって次のうち、普段兄さんにしない事一つだけしてあげる。選んでねっ!」

「……」

「1! 肩揉み。2! 膝枕。3! 頭なで──」

「5の寝るで。んじゃ、お休み」

「ひどいっ! せめて何か、何かさせて!」

「じゃあ子守唄でも歌っといてよ」







 翌日。


 重い目蓋をやっとのおもいで上げて、リビングの妹が座っている向かい側の椅子に腰掛けた。


「兄さん、頼み事があるんだけど」

「何」




──




 いつも通り自分の席に腰掛ける。いつも通り、一人ぼっちの俺に朝一番から気をつかって話しかけてくる九条銀。偽善の優しさを与えてくれる戸蒔綾。


 俺はそれぞれ、その二人との会話にただ相槌を打つばっかりだった。


 今日頑張って登校してきたことを誇ってもいいほど、俺の心は辛かった。とはいえ辛かったうちの3割は琴音の音痴な子守唄のせいで寝不足だった事だ。


「どうしたの? いつもの風太くんじゃないよ?」

「いつもってどんな?」

「えっ……」


 戸蒔綾との会話は、こんな感じですぐ話を打ち切ってしまう。偽物の優しさは嫌いだ。俺は魅力のない俺が嫌いだ。




 昼になったが、食欲は湧かず、俺は机に突っ伏していた。


「……ねぇさ、元気だしなよ」

「……」


 元気は意思で出せるものではない事を、彼女は知らないのだ。


「あっ! そういえばさ! 昨日の話、どういう事? 別れただの晴樹だの」


「……あぁ、あれね。そのまんまだよ」

「よく考えたんだけど、やっぱり……二人は付き合ってたの?」

「……え? 知らなかったの?」

「うん。私、風太くんと初めて話した頃、振られたとしか聞いてない。ただ風太くんが告白に失敗したのかと思った。仲が良かったのは知ってるけど」


 戸蒔綾は、二人だけが聞こえるような声量で、周りへ配慮しているようだ。


 言われてみれば、振られたとしか言ってなかった。俺は勘違いしていたのだ。


「へー、あの子晴樹の事好きなんだ」


 ……となると? 初めて話したあの時、彼女は『でもあの子は』と言った。続きは言ってないが、彼女は、幸が田神晴樹の事を好きだと言うつもりでは無かったのか?


 知らなかったと言うことは……俺に何を言おうとしてたんだ?考えても考えても分からない。


 もうどうでもいいか。


「ねぇ。えっと……綾さん」

「綾でいいよ。綾さんってなんか変」


 少し苦笑いを混ぜられた。口に出すと、確かに変だ。


「分かった」

「よろしい。それで?」

「今日さ。新しく駅前にできた店行きたいんだけどさ……行かない?」

「え?」


 キョトンとした様子だった。初めて女子を誘うことに抵抗はあるが、やはり断られるのは胸が痛い。


「だから、一緒に行こ?」

「……うん。いいけど」


 無理やり感はあったが、押しに負けたようでなんとか同意してくれた。






 

 放課後にもなり、ようやくその時が来た。


「それじゃあ、俺は先に行ってるからね」

「え? 一緒に行くんじゃないの?」

「あっちでは一緒じゃん」

「……そうだけど」


 最近廊下を歩くたびに綾の事が耳に入ってくるのが多い。九条銀の言っていた化けるというのは本当らしい。要するにモテモテということだ。


 そんな人と一緒に歩く。彼女が羨望の眼差しだ。そんな彼女の横を歩く……薔薇に芋虫が付いたようなものだ。そんなもの見せ物にできない。


 それと単純に俺は目立つのは嫌いだからだ。


「それじゃあ」

「あ! ちょっと!」


 教室から出る間際、幸と目が合ったような気がした。

更新遅れてすみません。テスト期間で投稿する事ができませんでした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 続きが気になります❗
[一言] 幼馴染NTRは無茶苦茶嫌いですが続きが気になる.....。 どんな真実が待っているのか、 更新楽しみにしてます。
[気になる点] ntr耐性無い人はそろそろ読むのやめそう。幸視点少しは出しても良いのでは?
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