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花てまり

作者: 春さくら
掲載日:2018/06/08

 さっちゃんの町は、坂のおおい町です。

 六月になると、坂のあちこちに いろんな色のあじさいがさきます。

 きみちゃんの家のまえには、ブルー、やっちゃんの家のまえには、ピンク、そしてさっちゃんの家のまえには、むらさきのあじさい。 雨のしずくがポツンとおちると、あじさいの小さなはなびらのなかの妖精が目をさますせいでしょうか、きまったように 色づきはじめます。

 さっちゃんがその男の子にあったのは、霧雨が坂道をぬらすある日の午後のことでした。学校がえりのさっちゃんが、門をはいろうとすると、その子は、あじさいの花のかげからピョコンとあらわれました。

「あー、びっくりした…」

 さっちゃんは、コトンとなるむねをおさえて つぶやきました。みどり色のシャッに、みどり色のズボンをはいた男の子は、かさもささずにたっていました。

「きみ、しってるかい?」

 その子は、みょうにおとなびたいいかたで、さっちゃんにたずねました。さっちゃんは、あかいかさをはんぶん その子にさしかけると、「ううん」と、つぶやきました。だって、あんまりおどろいて しってることまでわすれちゃったきがしたのです。

「この花は、虹になるんだよ」

「虹に?」

 さっちゃんは、まだ虹をちゃんと見たことがないのです。いつだったか、きみちゃんが、「さっちゃん、虹よ!」とよびにきてくれたことがありました。

 でもそのとき、さっちゃんは、ごはんのまっさいちゅう。ようやく 外にかけだしたときは、もう虹は、しっぽだけになっていたのです。

「色ちがいのあじさいを花てまりにして、イチニッノサンでころがすと、ポーンとはずんで、虹になるんだ。でも、、この花は、まだはやすぎる。もっともっと雨がふって、このむらさきの色が、もっと こくならなくっちゃ」

 この花が、虹になるなんて…。

 ボーと、たったままのさっちゃんをのこして、男の子はいってしまいました。



「かあさん、まだだめ?」

 あの日から、毎日 さっちゃんは、たずねます。でも、あじさいを花てまりにするおゆるしはなかなかでません。さきはじめたときは、小さなマリだった あじさいも、今では さっちゃんの手ではかかえきれないほど、大きくなっています。花のおもみでユラユラとゆれるあじさいは、さっちゃんの手をかりなくても、一人でとんでいってしまいそうです。

 三日、ふりつづいた雨が、ピュルリとあがったある日の午後、

「きみちゃーん、やっちゃーん!」 

 坂道にさっちゃんの大声がひびきました。さっちゃんのむねには、大きな大きなむらさき色のあじさいが、しっかりとかかえられています。やっちゃんは、ピンクのあじさい、きみちゃんは、ブルーのあじさい。

 坂道に三人は、かたをよせてならぶと、イチニツノサンで手をはなしました。

 ポーンポーンポーンと、はずんではずんで三つの花てまりはみえなくなってしまいました。

 でも、虹なんていくら待っても あらわれません。

 ツマンナイノ…。

 さっちゃんがクルンと、せなかをむけたときです。

「さっちゃん、虹よ!」

 きみちゃんの声がはじけました。

 ハッと、空をみあげると、海と山をむすんで 大きな大きな虹がかかっていました。それは、これまで だれも、みたことがないほど大きくまるい虹でした。

 そして、その虹のテッペンには、あのみどり色のふくをきた男の子が、ピョンピョンととびはねていました。

「どうもありがとう。きみたちのおかげで、空の国にかえることができたよ」

という うれしそうな声がきこえてきました。

 虹のむこうの国…。

あの子は、空の妖精だったのでしょうか。

 さっちゃんの目には、いつまでも、虹のうつくしさと男の子のえがおが うかんでいました。


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