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はらぺこ青く光る虫

作者: 染井藍

 別のところで投稿していた短編集なのですが、一編だけ気に入ってたので抜き出して投稿。

 幼少期の実体験から話を膨らませてみました。

 庭の木に、変な虫がいた。

 丸くて、ふわふわしてて、つるつるしてて、ときどき青く光る変な虫。

 最初は気にもしていなかったけど、庭の木から葉っぱがどんどん減っていくのを見て、観察しようと思った。

 だから、ボクは小さな虫カゴに入れて家の中に持ち帰った。


「よし! お前の名前はタケルだ!」


 タケルはカゴに入れた葉っぱをどんどん食べた。

 少しずつ大きくなるタケルを見るのは楽しい。


「あれ? タケルがいないよ?」


 タケルが虫カゴからいなくなった。

 部屋の中を探すと、電灯の縁で青く光っていた。


「逃げちゃダメだよ、タケル」


 それでも、タケルはなんども勝手にいなくなる。

 そのたびに、新しい虫カゴに入れた。

 夜になると青く光るから、寝る前の宝探しみたいで楽しい。


「うーん……うーん……どうしよう」


 タケルの餌がなくなった。

 庭の葉っぱはもうとっくにタケルが食べつくしている。


「そうだ! 空き地からとってこよう!」


 家の裏にある空き地から、雑草を沢山とってきた。

 タケルに食べさせたけど、それでも全然たりない。

 でも、空き地にはまだまだ草が生えている。

 空き地のどんどん草を抜いているボクを見て、隣に住んでるお爺ちゃんが褒めてくれた。

 ボクは餌をとってるだけなのに。


「どんどん食べるんだよ、タケル」


 ある日、タケルがいなくなった。

 部屋を探しても、家のなかを探しても、庭を探しても見つからなかった。

 せっかくボクと同じくらい大きくなったのに。

 もう戻ってこないのかなって考えて、少しだけ泣いた。


「ミカちゃん、どうしたの?」


 学校でミカちゃんが泣いてた。

 飼っていた猫がいなくなったって言った。

 ボクもタケルがいなくなって悲しいんだって、二人で泣いた。


「先生、どうしたの?」


 先生が悲しそうな顔で教室に入ってきた。

 学校で育てていた植物や野菜が、全部食べられたって言った。

 みんなでがんばって育てたのに、残念だねって言った。


「お婆ちゃん、どうしたの?」


 庭で遊んでいると、隣のお婆ちゃんが泣きそうな顔をしていた。

 お爺ちゃんがいなくなったって言った。

 一緒に探したけど、見つからなかった。


「お母さん、どうしたの?」


 お母さんが慌てながら家に帰ってきた。

 働いている施設で、女の子がいなくなったって言った。

 危ないからって、これからはお母さんと一緒に学校に行く事になった。

 帰りは学校の先生が送ってくれるらしい。


「お父さん、どうしたの?」


 お父さんが疲れた顔で家に帰ってきた。

 最近、街中の野良犬や野良猫が消えているらしい。

 その原因を探してるんだけど、わからないって言ってた。


「タケル、どうしたの?」


 窓の外で、街が、青く青く青く光っていた。

 実体験というのは、幼稚園くらいのころ青く光る虫が電灯の笠を這っていたという部分です。

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