理不尽な始まり
理不尽……
人はどんな状況に面したときにその言葉を思い浮かべるのだろう。
災害に巻き込まれたとき?
言われたとおりに行動したのに怒られたとき?
天に二物も三物も与えられた人間を見たとき?
人それぞれ、そう思う瞬間があると思うけど
「こんな理不尽、あってたまるか……」
俺の場合は、それが今だ。
***
「たーっくん!」
机から取り出した教科書をリュックに入れていると、よく聞きなれた声に呼ばれた。
「どうした? 梨沙」
返事とともに顔を上げると、予想通り目の前に笑顔の幼馴染、福代梨沙がいた。
「今日一緒に帰ろうよ」
「松本は? いつもあいつと一緒に帰ってるだろ」
頭の中に梨沙の友人である1人のクラスメートを思い浮かべる。
確か梨沙はいつも、あの眼鏡の女子と一緒に帰っているはずだ。幼馴染で家が隣といえど、高校生になってからは一緒に帰りをと誘われるのは珍しいことだった。
「真由ちゃんは今日委員会があるんだって。先に帰ってて、って言われたの」
「ふーん。でも俺、今日は夕飯の買い物に寄るつもりだけど」
「いいよいいよ。それくらいお供致しますぞ!」
「どういうキャラだよ」
「まあまあ、いいじゃないですかー。とりあえず行こう行こうー」
「引っ張るなって」
リュックを閉め、梨沙についていこうとした。が、俺たちの前に突然人影が立ち塞がった。
「福代~~」
「あ、平田君」
そこに立っていたのはクラスメートの平田だった。手には緑色のノートを持っている。
「福代、今日日直だろ。頼むから日誌は書いていってくれよ」
「あっ」
「梨沙、忘れてたのかよ」
「あははははははー。……たっくん、ちょっとだけ待っててくれないかなー?……すぐ終わらせるのでーーーーーーーーーーーー!!」
「はいはい」