20歳(3):懐かしい友からの祝福
ふと気が付くとマーレエラナは見慣れた景色の中に立っていた。
天界で自分の領域としていた森の中の景色だ。空を見上げれば夜と昼の中間くらいの明るさで、なのに満天の星が輝き、懐かしさに手を伸ばしたくなる。夢というには周りの空気がやけにひんやりと清々しく、自分の意識もはっきりとしていた。下を見れば、いつも見ているよりも健康的な肉付きの体が目に入る。
それらの事から、これはひょっとして自分はうっかり死んだのでは、とマーレエラナは思った。そんな自覚もなかったが、予定よりも早く死んでしまって天界に帰ってきてしまったのではないかと考えたのだ。
何か失敗したのかなぁとちょっと焦って周りを見回すと、遠くに手を振る人影が見えた。それはマーレエラナにも見覚えのある人影だった。
「あれは……もしかしてリリー? リリレイラ?」
「やっほーマナ! 久しぶりっ!」
明るい桃色のふわふわした髪を揺らして、年頃の可愛らしい少女の姿の女神がぶんぶんと手を振っている。
彼女はパタパタと走ってくるとマーレエラナに勢いよく抱きついた。細い体は重くはなかったけれど、ぎゅうぎゅうと抱きしめられて少し苦しい。
「リリー、苦しいよ」
「あ、ごめんごめん、久しぶりで嬉しかったから、つい」
リリレイラは慌ててマーレエラナの身体を離し、そして代わりにその両手を握った。握られた手は温かく、現実味があってマリエラはやはり、と思う。
「ねぇリリー、私、もしかして死んだ?」
マーレエラナが真剣な顔でそう問うと、リリレイラはぶんぶんと首を横に振り、にっこりと笑った。
「まだ死んでないって、寝てるだけ! あのね、トリメリアに頼んで、ちょっとマナの夢に繋いでもらったの。マナの身体は今寝てると思うよ。トリメリア作の夢だから、良くできてて本物っぽいっていうだけ!」
「夢……そっか、なら良かった。神域に帰ってきたのかと思ってびっくりした。もう二十年も我慢したのに、また最初からやり直しかと思って焦ったよ」
「ごめんね、いきなり! ちょっとマナと話したくてさ。無理言って頼んだの」
リリレイラはそう言うとあっちでゆっくり話そ、とマーレエラナの手を軽く引いて歩き出した。
裸足の足の裏に当たる草の感触が久しぶりで気持ちいい。マリエラでいる時と違って体も軽い。マーレエラナは森の空気を深く吸い込み、木々を見上げて微笑んだ。
「懐かしい。何だか、すごく久しぶりだこういうの」
「あはは、人間界にいると時間経つのすっごい長く感じるよねぇ。まぁそう実感するのも還ってきた時だけどさ」
やがて森は急に終わり、空が広く明るくなった。森の向こうは草原になっていて、そこには色とりどりの花が咲いていた。マーレエラナの神域にはなかった可愛らしい色の花が所狭しと咲いている。
「ほらこれ、私の好きな花! やっぱさー、恋バナはこういうとこで乙女っぽくしないとね!」
「リリーは相変わらず好きだね、そういうの」
「そりゃあね、恋の女神だもん、生きる糧みたいなものよね!」
そう言ってリリレイラはごろりと花畑の上に寝転がった。ひざ丈の衣がめくれてしなやかな足が丸見えになるが、乙女だという割に気にした様子もない。
「ほら、マナもここ座って!」
せっかくの花が散るのもお構いなしにリリレイラはパシパシと地面を叩いた。苦笑いを浮かべたマーレエラナが隣に座ると、リリレイラは彼女の膝に上半身を乗り上げその細い腰に抱きついた。
「重いよリリー」
「重くない! 私なんて花束よりも軽いわよ」
古い友ではあるが、あまり深い付き合いをしてこなかった女神に突然くっつかれて、マーレエラナはどうしていいかわからず少し困ってしまった。何となく手持無沙汰で桃色の髪を手で梳くようにしてそっと撫でるとリリレイラは嬉しそうに笑う。しばらく黙って抱きついていたリリレイラは、やがて小さく呟いた。
「ねぇ、マナ。マナもやっと恋をしたのね」
「……してないよ。神は、恋なんてしないんじゃないかな」
「あら、するわよ。私はいつもしているわ」
「それはリリーが恋の女神だからだろう? すべての恋を愛し、祝福するのが君だから」
気まぐれで奔放で時に残酷で、けれどひたむきな、恋の女神リリレイラ。全ての恋を見守り、祝福するのが彼女の神としての役割だ。初恋が切なく終わるのに涙してみたり、小さな火種を業火にしてみたり、老いらくの穏やかな恋に優しく寄り添ってみたり。そんな様々な恋を愛し、眺めては楽しむ、可愛らしい女神。
愛と美の女神とは時折本気の喧嘩をしつつも仲直りしては酒を飲む仲だという彼女は、マーレエラナにとっては友であるがちょっと縁遠い、微妙な関係の女神だった。天界にいた時にも仕事上の付き合いもほとんどなかったため、もう結構長い間会っていなかったのだ。
だから顔には出さなかったが、マーレエラナはリリレイラがわざわざ他の神に頼んでまで自分に会いに来たことに内心ではかなり驚いていた。
「いつだって君は、恋に恋をしているようなものじゃないか」
「あら、他の神だって恋をするわ。していいのよ、マーレエラナ。そうじゃなきゃ、私が始まりの神々として生まれる訳ないじゃない?」
「私は恋などしていないし、きっとしないよ」
そう言って首を振るマーレエラナの言葉に、リリーはがばりと起き上って頬を膨らませた。
「もー、頑固! 昔っからそう。仕事だの使命だのって、ほんとそればっかりなんだから!」
リリレイラはぷりぷりと怒りながら宙に手を伸ばし、手のひらを広げた。その手のひらの中に小さな光が点り、やがてそれは凝縮して何かの形を作った。
「これを返そうと思って、マナを呼んだのよ。これ、憶えてる?」
マーレエラナが覗き込むと、彼女の手の上には小さな金色の鍵が現れていた。小さな宝石箱に使うような、そんな華奢な鍵だ。しかしマーレエラナには見覚えがなかった。
「憶えてないな。私のなの? 何の鍵?」
「やっぱり覚えてないかぁ。もうすっごい昔の話だもんね」
リリレイラはため息を一つ吐くと、手のひらの中のそれを大切そうにそっと撫でた。そしてマーレエラナの顔を見た。
「あのね、これはマナの心に掛かった枷の鍵。マナは自分で自分に枷を掛けて、これを捨てたの。そして掛けたことすら忘れたのよ。私はそれを探して、こっそり拾っておいたの」
「……私が、それを? 全然憶えてない……枷って、いったい何の?」
リリレイラは不思議そうに呟くマーレエラナに手を伸ばし、その胸の真ん中をとん、と指で突いた。
「だから、心よ、心。色んな強い感情とか、それこそ恋とか、そういうの。それを遠い昔にマナは自分で自分の奥に封じ込めたのよ」
そう言われても全くマーレエラナには心当たりがなかった。キョトンとした顔で自分の胸を見下ろす彼女にリリレイラはため息を落とす。
「やっぱり忘れたままなのね。あのね、うんと昔のマナには、もっと迷ってた頃あったでしょう? 持ってる地上干渉資格がだんだん高くなってきて、転生を頼まれる事が増えた頃。あの頃までマナは、もっと感情豊かな女神だったの、憶えてない?」
「……そうだったろうか? わからない」
「うまく役目を果たせてない気がするって泣いて、私たちによく相談してたじゃない。そんなことない、マナは頑張ってるって皆言ったのに、真面目なマナはちっとも頷かなくてさ」
マーレエラナはまじまじと金の鍵を眺めた。その鍵は自分が地上に降りる時に使うものと、大きさこそ違うが少し似ていた。
「地上に降りる時に力を封じる鍵と似ているな」
「まぁ、そうね。本質的には同じものだからじゃない? これは、マナの力じゃなくて心を封じたものだけど。マナは結局迷いに迷って、勝手に結論を出しちゃったのよ。自分の心が必要以上に浮き沈みするから、きっと悪いんだって」
私たちに相談もしないで、と少しだけ責めるようにリリレイラは唇を尖らせて呟いた。
「そうしてマナは、今のマナになったの。喜怒哀楽が薄くて、色んなことがどこか遠くて現実味が薄いなって、そう思わない?」
そう言われてみれば確かにマリエラにはその傾向が強かった。いつも薄幕のかかった夢の中で生きているような気持ちがしていたことは確かだ。けれどマーレエラナはそれを、自分の魂に刻まれた傷の影響を薄めるための自己防衛のようなものかと思っていたのだ。
「確かに……いや、でもクソ審議会には頭から湯気が出そうなほど腹が立ったよ?」
「そりゃあね。せっかく上手く行ってた転生計画をあんなに台無しにされて、さすがに封印も緩むほど切れたんじゃない? でもその後は相変わらず、他の感情は薄いままでしょ?」
「うん……でも、それは魂の傷の影響を受けないようにするための防衛反応か何かかと思ってた」
マーレエラナのその言葉に、リリレイラは深い深いため息を吐いた。
「はぁ、もう。恋の悩み以外で私にこんな深いため息吐かせるのって、ほんとマナだけだわ。いい、マナ。それは逆よ。全然逆! 心を封じてから魂の傷が増えて、その上それがちっとも癒えないからそんなに弱ったのよ!」
強くそう言われてマーレエラナは思わず身を引いた。
「大体、使命のために自分の心を封印するって、何なのそれ? 馬鹿じゃないの? 神が怒ったり悲しんだり喜んだり楽しんだりしちゃいけないって、誰が決めたの!? もし創造神様がそう決めたって言うなら、私たちがこんなにも個性豊かで喜怒哀楽を持っているのおかしくない!? マナの星に無数の言葉が宿るみたいに、私たちにだって色んな気持ちが宿っているのが自然なのよ! 私たちは道具じゃないの!」
「……けど、それでも、私はそうなってから多分それなりに上手く使命を果たしてきたと、思うんだけど……」
そうは言いつつもその語尾は小さく擦れて消えた。その言葉にリリレイラがキッと眉を吊り上げたからだ。
「そんなの、マナについた新しい傷と引き換えにしてきたようなものじゃない! 自分のこと置き去りにして、上手く果たしたなんて言わないわよ!」
そう叫ぶとリリレイラはがばりとマーレエラナに抱きつき、苦しいくらいの力で抱きしめた。
「勝手に心を封じて、勝手に会いに来なくなって、私の存在が自分には関係ないから必要ないなんて、そんなのないわよ! 私のことだって、忘れかけてたんでしょ!? 私にとってマナはいつだって大事な友達だっていうのに!」
「わ、忘れてはないよ、ただ……私に、恋は必要ないとは思っていた。君は明るくて、激しくて、ちょっと……夜ばかり見てる私には、眩しかった、のかもしれない」
始まりの神々は、誰もが大事な友人だとマーレエラナは思っていた。けれど、仕事で良く会う神以外とは何となく少しだけ距離を置いていたのは確かだった。それが自分が心を封じた故の無意識の事だったということに、マーレエラナは気が付いていなかった。
「愛ならわかるんだけど……恋は、よくわからなくて。少し、怖いっていうか」
「……馬鹿ね、マナったら。ほんと、真面目に仕事しかしてこないからそうなのよ。あのね、恋はきっかけなのよ。世界を鮮やかに色付かせ、新しい道を拓くための」
「道を拓く、きっかけ……」
「まぁ、子孫を残すためについてるちょっと馬鹿になる機能って言えなくもないけど」
「身も蓋もない! 今のいい感じ返して!」
「冗談よ。でも、それだって嘘じゃないわ。ほんの些細なきっかけで馬鹿みたいに恋をして、それを愛に育てるかはその人次第ってこと。その先に何を繋ぐのかは私の知るところじゃないわ。でも、叶っても叶わなくても、きっと世界は深く広くなるし、知る前よりもきっと色鮮やかになるのよ。それが明るい色でも暗い色でも」
そう言ってリリレイラは艶やかに笑う。彼女は怒ったり笑ったり、どこか色っぽかったり子供っぽかったりと忙しい。
そんな風に色鮮やかな彼女がきっと眩しかったから、封じた心を思い出さないために離れたのかもしれないとマーレエラナは何となく思った。
「マナに勝手に疎遠になられて腹が立ったから、貴女の神気を追って捨てられてたこれを探し出したのよ。ホント、苦労したんだから。それで、いつか貴女が誰かに恋をしたら、したいと思ったら返そうって思ってずっと大事に持ってたの」
「私は……」
「お願いだから、いらないなんて言わないで。貴女の魂の傷を癒すためには絶対必要なの! その傷を本当に癒すのは、心からの喜びや楽しさなの。怒りや悲しみだってかまわないわ。ちゃんと怒って怒鳴りでもすれば心は軽くなるし、泣きたい時にちゃんと泣けば、新しい傷だってきっと少なくなる」
「……そうだろうか」
「そうよ。それにね、マナ。今世は使命なんてどうでもいいのよ。好きなだけ浮き沈みしたっていいの。マナが生きててくれれば、世界は勝手に癒えていくんだから。でも死なないように息をしてるだけなんて、そんなの生きてるって言わないわ。私は貴女に、ちゃんと、”生きて”ほしいのよ」
そう告げるリリレイラの声はどこまでも真剣で、そして泣くのを堪えるかのように微かに震えていた。
「私がそれを取り戻して……頭にきて憤死したり、恋に狂って死んだら?」
「あら、その時はその時よ。いいじゃない、世界の半分が壊れたって全ての人間がいきなり死ぬわけじゃないわ。残りの救済とかそんなのは審議会に考えさせときなさいよ。マナに散々迷惑かけてきたんだから、それでちょうどおあいこでしょ!」
「はは、私の友達は、過激派ばかりだな」
そう言って体を少し離すと、リリレイラはマーレエラナの顔を間近で覗き込んだ。
「私、マナに恋占いしてもらうの大好きだったのよ。早く帰ってきたら、喜んじゃうかもね」
「そっか……じゃあ、どうなっても楽しみがあるね」
マーレエラナは笑って、彼女に手を差し出した。
その手に小さな鍵が乗せられる。マーレエラナはしばらくそれを黙って見つめ、そしてゆっくりと、自分の手でその胸の真ん中にそっと差し込んだ。
「っ、う……」
パキン、と自身の中のどこかから音がして溶けるように鍵が消え去り、マーレエラナの体がぐらりと傾く。リリレイラは慌てて彼女を抱き留め、そしてそのまま二人はぱたりと花畑に転がった。
「マナ、マナ! 大丈夫?」
自分の上に倒れたマーレエラナを抱きしめながら、リリレイラがその名を何度も呼ぶ。
マーレエラナは自分の胸がぱっくりと大きく裂けて、そこからどっと血が流れでた、と思った。
赤い色が見えるかとうっすらと目を開けたけれど、それはどこにも存在しない。ならばこの身体の奥から出てきた奔流は何だろう、と思えば、それは心だ、と自分自身の中から答えが返る。
長い長い間マーレエラナが封じ、なかったことにしてきた様々な感情が彼女の中から溢れ出てきていたのだ。
憎しみに近い、炎のような激しい怒り、世界を壊してしまいたいような悲しみ、空に光る星を倍に増やしてしまいたいくらいの喜び、今すぐ誰かと踊りだしたくなるような楽しさ。それ以外の絡み合った複雑なものも、名をつけるほどでもないちいさなものも。
隠していた何もかもが転がり出て、その胸の内から零れていく。けれどそれは転がり落ちてなくなるために出てきた訳ではなく、ただそれがあったという事をマーレエラナに確かに伝えて、そして彼女の中にまた戻ってゆく。
マーレエラナは転がったままリリレイラの肩にすがりつき、顔を埋めて小さく呻いた。
きっと今自分はひどい顔をしていると思うと顔を上げられなかった。
「リリィ……リリレイラ」
「ここにいるわよ、マナ。傍にいるわ」
「ひどい気分だ……最悪だ……きっと今の私は、百面相をしてる」
「大丈夫、見ないであげる。でもほら、魂に力が戻ってきたの、わかる? マナの中、昔みたいに喜びと願いで、いっぱいになってるわ」
確かめなくてもマーナエラナにもわかっていた。手足が温かくなり、体中に新しい神力がめぐっていくようだった。自分が封じていたものがいかに力を持つものだったのか、それを思い知る。
「ねぇ、マナ。恋をしてるのね」
「……うん、そうみたいだ。リリーみたいに眩しくも、激しくもないけど……穏やかで、でも色鮮やかだ」
「そういうのもあるわ。マナらしい、素敵な恋ね」
胸の中に確かに存在する温かな気持ちを認め、マーレエラナはふふ、と楽しそうに笑った。
リリレイラもくすくす笑い、それからマーレエラナの体をギュッともう一度抱きしめ、その頬に口づける。
「恋の女神の祝福をあげる。良く効くわよ!」
「ありがと、リリー……私はもう少し、”生きて”みるよ。だから、君の恋占いはもうしばらく待っていてくれる?」
「あとたった六十年くらいでしょ? かまわないわよ。そんなのあっという間だわ」
マーレエラナはリリレイラの上からごろりと転がり、彼女の隣に寝そべった。そのまま横を向いて彼女と顔を合わせる。
どちらからともなく手を伸ばし、そっと繋ぐ。昔よくこんなことをした気がする、とマーレエラナが思うと、リリレイラもそう思ったのだろう。目が合った二人はくすくすと楽しげに笑い合った。
やがて手を繋いだまま、マーレエラナはごろりと仰向けになって空を見上げた。森に切り取られたように広がる空を、茜色の雲が横切っていく。その向こうにはいつだって愛してやまない星々が輝いていた。
その空の景色も、森の緑も、頬をくすぐる花々も、そして隣で笑う友の姿も、全てがさっきまでよりも色鮮やかに見える。自分の視界に掛かっていた薄幕が取れ、久しぶりに目を開けたようなそんな気持ちすらした。
「……世界がこんなに色鮮やかだったなんて、忘れていたよ、リリー」
「そうよ。もう忘れないでね。皆、貴女を見守っているから」
「うん……ありがとう」
地面がぽかぽかと暖かくて、心も体も暖かくなって、マーレエラナは眠たくなった。
そんな彼女の頭をリリレイラが優しく撫でる。
「眠ってもいいわ、マナ。目が覚めたら貴女はまた地上よ。貴女の中の一番奥の大きな傷はまだ残ったままで私には触れられないけれど、きっと地上でなら癒せるわ。だから、幸せになってね。ちゃんと”生きて”みてね」
「うん……がんばるよ」
「頑張らなくていいのよ。そんなの貴女の周りが代わりにやればいいんだから。今だって、予定よりずいぶん長く眠っちゃった貴女のために必死で頑張ってる男がいるわ。貴女はちゃんと心を開いて、自分に素直になればいいだけ」
マーレエラナは眠りに落ちてしまう前に、懸命に目を開けてリリレイラを見た。優しい、懐かしく慕わしい友の姿を目に焼き付けるように。
「ありがと、リリー……次は、私から会いに行くね」
「待ってるわ。またね、マナ」
傍から見てちょい百合っぽいくらいの友情、可愛いと思うんですよ。




