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三枚目 代行様、お客様です!

「また、朝がやってくる………」


 積みに積み重なった書類の山との激闘の果て。

 漸く訪れる安息の時。

 それが今だ、この達成感と爽快感は内臓が捩切れそうな腹痛を堪えながらも、無事に便所へ辿り着けた時をたやすく凌駕するだろう。


 俺、頑張ったよね。

 もう、寝てもいいよね?

 連続徹夜七日目、この一週間仕事以外の用事で部屋から出た記憶が無いとはどういうことなのか。

 軽い吐き気を堪え、ふらつく足どりでヨタヨタ寝台へと向かう。


「ゴー………、ル」


 どたり、と体を投げだした様を見る者が居たならば『糸の切れたマリオット』のようだと形容しただろう。


 何処までも落下していくような感覚に身を任せる。

 さあ、辛い現実とはお別れだ!

 夢の世界に旅立つんだ………


「魔王様、お客様です!」

 またおまえかハゲェ………


 あーうー、と呻きながら客間へと移動する。

 激しく憂鬱だ。

 客というのがまた問題だった。

『オルクスの貴婦人』マダム・アべリア。

 豚頭の亜人であり、辺境の広大な草原で酪農と畜産を営んでいる。

 魔界の日々の食卓を支える重要人物の一人だ。

 所謂、社長さんだな。

 ドアを開き、客間に一歩踏み込む。


「ヴゥォーッホッホッホッホッ。ご機嫌如何でしょうか、代行さまぁ?」


 絶不調、最悪だな。

 即答しようとした発言を咄嗟に飲み込み、事実だけを端的に答える。


「徹夜、七日目だ」

「あらあら、ですが十五日までは大丈夫ですわ」


 てめぇもか!

 大丈夫じゃねえよ!

 何でだよ! 何で十五日なんだよ!


 顔、化粧暑く。薄ピンクの肌に纏った紫色のドレスは、パンパンに膨れた体を何とか覆っている。

 しかし、その肉体は脂肪よりも筋肉のほうが大部分を占めるのだ。

 外見と戦闘能力の差が激しい種族である。


「そちらの方は少し見ない間に髪型が随分お変わりになりましたがぁ……… どぅなさったのです?」

「聞かないで……… ください」


 斜め後ろに立ったハゲは震える声でそういった。

 俺を魔王と呼ぶからそうなるんだ。


《ヒドイ! 酷すぎる! ドアを開けたらいきなり『哀と怒りと憎しみの ハートレスフィンガー』なんて!》


 心ない指の名の通り、こいつには容赦無い一撃であっただろう。

 具体的には髪型が変わったと明らかに解る程の毛髪が減少したあたり。



「遠路遥々ようこそ、マダム。本日はどのようなご用件かな」


 内心はよ帰れーと思っても口には出さない。

 態度は慇懃無礼だが余り下手に出過ぎてもいけない。

 つーか作法決まってねーし。

 国柄なのか全体的におおざっぱで、細かい事を気にしないこの国だからこそだな。

 多分、長生きの種族が多いからなんだろう。


《シカトですか!?》


「あら、そうでしたわね」

 ばん、と手を打つマダム。二の腕が『ぶるるっ』と震える。


 あー、早く終わらせたい。でないととんでもない暴言を吐きそうだ。


 豚なだけにトン。

《上手くないですよ》

 思考を読むな。


 マダムはテーブルに置かれた皿から、ナッツをひと掴みすると、口の中へといっぺんに放り込んだ。


 ボリボリという咀嚼音が部屋に響き渡る。


 答えろよ!

 自由過ぎんだろ!


「実はわたくしの《シカトなんですかー?》で少々問《今日は随分酷いですな》代行様にご意見を《しかし今日という今日は徹底的に》ですの」


「すまない、少し待ってくれ」

「どうかなされました?」


 振り返り際、裏拳をハゲの顎先へ掠めるように放つ。


 ぐらんっ ばた。


「さてと、何だったか」

「あの、代行様?」

「なに、気にする必要は無い」

「ですが………」

「邪魔なのでな」

「そう、ですか」


 でしたら仕方がありませんね、と流すマダム。

 うん、しかたないネ。







 えっ!?

 続くの?


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