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ラヴィラントの貧民街に差し込む朝日は弱々しく、魔導師マグス・サトゥリが先日の「埃払い」で散らしたはずの「呪いの霧」を突き破るのに苦労していた。かつて「黒蔦の館」と呼ばれ、今はマグスの頭の中で「山の休息所」と改名された屋敷の中は、ようやく空気が澄み渡り、オゾンと焼けた蔦の微かな甘い香りが漂っている。


マグスは三時間かけて磨き上げた床に胡坐をかいていた。目の前には新しい鉄瓶が置かれている。その均一な密度ゆえに、中の水が「一の沸騰」に近づくにつれ、低く完璧な音色を奏でていた。


(ようやくだ。安定した環境が整った。)


彼は湯気を見つめた。山において、湯気は道標だった。だがここでは、湯気は戦いだ。盆地特有の湿気は、彼の繊細なハーブティーのバランスを乱す「侮辱」に他ならない。


「今日の表面張力は、わずかに狂っているな」マグスが呟くと、その低音の響きに空中の塵がぴたりと静止した。「塩のせいか。いくら質の良い粗塩でも、ミネラルの不純物が多すぎる。」


その時、彼が山の頂点捕食者たちを狩る中で十年間磨き上げた「斬神」――感覚の網――が、鋭く金属的な反応を捉えた。


彼は扉を見ようとはしなかった。その必要がないからだ。十二人の明確な気配が屋敷に近づいてくる「重み」を感じていた。それは、彼が洗濯のついでに追い払う「大きなアライグマ」の類ではない。人間であり、しかも小規模な山脈を一瞬で平らげるほどの魔力を持った者たちだ。


(重い。非効率だ。それに、泥だらけのブーツで掃除したばかりのポーチを踏んでいる。)


「サトゥリ殿!」


壁を振動させるほどの太い声が響いた。ライナー隊長だ。その鉄の鎧は、侍という名の「集団幻覚」を魔導師委員会に信じ込ませようと奔走した一日の疲れを物語るように、がしゃがしゃと音を立てていた。彼の後ろには、セラフィナ王女と、金糸の刺繍が入ったローブを纏った三人の男たち――王国の「至高魔導師」たちが控えていた。


「話をせねばならん!」ライナーが玄関に足を踏み入れながら続けた。「神殿の測定宝珠が、この屋敷を中心に『クラスSの現実歪曲』を感知したのだ!」


マグスは鉄瓶から目を離さない。


「隊長、言ったはずだ。私はただ洗濯をしていただけだと」マグスは刀の柄にさりげなく手を添えた。「お前たちが感じている『歪み』とやらは、壁から湿気が抜ける際の反動だろう。湿った茶は好かんのでな。」


顎髭があまりに長く、自分の足に引っかかりそうになっている一人の魔導師が前に出た。彼は、煙を吹き出しそうなほど高速で回転しているクリスタルの羅針盤を手にしていた。


「ありえん!」魔導師が叫んだ。「この部屋の霊圧はゼロだ! 貴殿は虚無だ! 女神の創造した理に開いた『穴』そのものだぞ!」


マグスはようやく顔を上げた。その黒い瞳には、山で培われた、すべてを達観したような静かな疲れが宿っていた。それが魔導師の視線とぶつかる。


「虚無、だと?」マグスは首を傾げた。「盆地ではそれを『礼儀』と呼ぶのか? 人の家に上がり込んで、穴呼ばわりするとは。」


(常識がないな。魔法がどうこう言う割に、空気の摩擦すら感じ取れていない。)


「サトゥリ様、お願いです」セラフィナが割って入った。彼女の指は、首にかけたペンダントを強く握りしめていた。「彼らは、貴方が『物理的特異点』ではないかと疑っているのです。貴方を……その、再調査したいと。」


マグスは立ち上がった。188センチの長身は魔導師たちを圧倒し、黒と白の羽織が岩壁のように彼の体に馴染んでいる。


「また調査か?」マグスは鼻を鳴らした。「この前の『真実の眼』とやらは不良品だったぞ。またあんな安物のガラスを持ってきたのなら、門の外に置いていけ。温室の材料にする。」


「不良品だと!?」大魔導師の顔が、マグスが焼き払った呪いの蔦と同じような紫色に染まった。「あれは第一紀の遺物だぞ!」


「私が触れただけで壊れた」マグスは淡々と言い返した。「山では、踏んだだけで折れる枝は『悪い枝』だ。単純な物理だろう。」


その部屋と並行して存在する亜空間の奥深くで、「影の観測者」は頬杖をつきながらその光景を眺めて、にやりと笑っていた。


「『単純な物理』、か」観測者は赤い目を輝かせ、愉しげに囁いた。「原子レベルの剣意を、折れた小枝のように説明するとは。ああ、マグス……見せてやれ。世界が、特異点を定規で測ろうとした時に何が起こるのかを。」


マグスは昼食用に用意していた山羊の肉を手に取った。それを至高魔導師たちに突きつける。


「調査をしたいなら、これを手伝え」マグスは言った。「完璧な焼き目をつけたい。一定の熱出力で、魔力の残滓を残さずにな。お前たちの『魔法』とやらはそれができるのか? それとも、ガラスを割るくらいしか能がないのか?」


魔導師たちは呆然と生の塊肉を見つめた。王女はため息をついた。


「測定の儀」は、今まさに、非常に脂ぎった展開を迎えようとしていた。

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