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美少女クシナちゃんの雑貨屋~呪いしか鑑定できませんが、問題あります?~  作者: なすちー
第一章 人工呪物編

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11 いざピクニックへ 前

 迷宮に潜るためには、探索者協会での登録が必要である。 基本的には誰でも登録できるが、それなりに条件はある。十六歳以上であること、重犯罪の職歴がないこと、そして登録料として五十銀貨を支払うこと。

あとは、迷宮内での死亡はすべて自己責任であるという誓約書への署名や、万が一の際、家族に支払われる見舞い金の受け取り先といった、事務的な書類の山に同意すれば、晴れてライセンスが発行され、迷宮への立ち入りが許可される。


「あ……私のライセンス、もうすぐ期限切れじゃない」


 手元のカードを眺めながら、ふとそんなことに気づく。

 最近はめっきり迷宮にも入らなくなったし、このまま失効させてもいいかしら。そんな益体のないことを考えていた時だった。


カランコラン、と乾いた鈴の音を立てて、店の扉が開いた。


「へー、ここにも探索者の道具、売ってるんだ」

「でも、なんか小さくないか? パッと見、品数も少なそうだし……」


 入ってきたのは、一組の男女。 顔つきにはまだ幼さが残り、装備も新調したばかりといった様子だ。探索者だろうけれど、独特の初々しさが全身から漂っている。


「いらっしゃい。品揃えに不満があるなら、大通りにある大手商会にでも行きなさいな」


 カウンターの向こうから、私はいつもの口調で声をかける。突き放すわけではなく、単なる事実を告げただけだ。


「あ、ごめんなさい! そういうつもりじゃなくて……」


 女の子の方が、慌てたように頭を下げる。


「別に怒ってなんかいないわよ。品数が少ないのは事実だしね、素直な意見でしょ。あっちの大手の方が、色々選べて楽しいはずだわ」


 すると今度は、隣にいた男の子の方が少し困ったように口を開いた。


「そうなんだけどさ……あそこ、人が多すぎて買うまでに時間がかかるし。それに物が多すぎて、結局どれを買えばいいのか分からなくなっちゃうんだよ」


「なるほどね」


 私は小さく頷いて、店内に並んだ棚を指し示す。


「うちにあるのは、無難で使いやすいものばかりよ。どれを選んでも大外れはしないはずだわ」


「そうなんですね。ありがとうございます!」


 私の言葉に、女の子がぱっと表情を明るくした。


 二人は棚の前でああでもない、こうでもないと話し込みながら、時間をかけて商品を選んでいた。 結局、彼らがカウンターに持ってきたのは、ナイフや回復薬、それに水袋とロープ。どれも迷宮に入るなら欠かせない、ごく基本的な必需品ばかりだった。


「店主さん、これください」


 男の子の方が、少し緊張した様子で代金を差し出してくる。


「はい。……合わせて金貨二枚ね」


 私はそれを受け取り、商品を包んで渡す。


「実は私たち、これから初めて迷宮に入るんです」


 女の子の方が、報告でもするようにそう言った。


「そ。頑張ってね」


 私はいつも通りの口調で、短くそう返す。

あいにく、私は探索者としてのアドバイスなんてできないからね。


 二人は嬉しそうに、クシナ雑貨屋を後にしていった。


 私もああいう時期があったのかしらね……。あの新人二人を見たせいか、あるいはただの気まぐれか。結局、私は探索者ライセンスを更新することにした。


 雑貨屋を戸締りして、探索者協会へと向かう。 時間は昼過ぎ。協会内は相変わらず、多くの探索者たちで混み合っていた。


 カウンターを眺めると、看板受付嬢ちゃんがいる窓口だけ、他より明らかに列が長い。

 ……まあ、どうせなら美少女に相手をしてほしいっていう心理は分からなくもないけれど。私は迷わず、一番空いているカウンターへと並んだ。


 看板受付嬢のシエルちゃんがこちらに気づくと、私に向けてパチンとウインクを飛ばしてきた。 何の合図だかよく分からないけれど、とりあえず私も同じようにウインクを返しておく。……たぶん今ので、私の美少女度がまた一段と上がったはずである。


 そんな不毛などうでもいいやり取りをしていたら、ようやく私の番が巡ってきた。

「こんにちは。探索者協会へようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか?」

 

 淀みのない、事務的な声で受付嬢が問いかけてくる。


「探索者ライセンスの更新をお願いしたいのだけれど」


「はい、承知いたしました。ではライセンスをお預かりします。更新料として銀貨二十枚をご用意ください」


 言われた通り、私はローブのポケットから銀貨を二十枚、カウンターの上にじゃらじゃらと並べた。


「ありがとうございます。確認いたしました」

 受付嬢は手際よく銀貨を回収すると、私の古いライセンスをじっくりと眺め、それから分厚い台帳を開いた。 羽ペンを走らせて書類に私の記録を書き込み、最後に専用の印章にたっぷりとインクを含ませ、ライセンスの期限欄へと力強く押し当てる。


「お待たせいたしました。こちら、更新後のライセンスです」


 少しして、新しい日付が刻まれたライセンスが私の手元へと戻ってきた。


 用事を済ませ、さあ帰ろうかと思った、その時だった。


「クシナさん! ちょうどよかった。……今から迷宮へ行ってくれませんか?」


 声をかけてきたのは、さっきまで長蛇の列を捌いていた看板受付嬢のシエルだ。わざわざカウンターからこちらにやってきて、私を呼び止めている。


「……は?」


意味わからないのだけれど


 あまりにも唐突な物言いに、思考が一瞬停止した。


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