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美少女クシナちゃんの雑貨屋~呪いしか鑑定できませんが、問題あります?~  作者: なすちー
第一章 人工呪物編

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10/25

10 平和が一番よ

可能な限り更新頑張ります。

よろしくお願いします。


 クシナ雑貨店。


「ありがとうございましたー」


 いつものように、私は雑貨屋としての接客をこなしていた。お客様を超絶美少女スマイル?で見送り、カウンターで一息つく。


 そうよ、これなのよ。

私はあくまで雑貨屋の店主。呪いの鑑定なんてものは、頼まれたからやっているだけの副業に過ぎない。 「やっぱり普通の雑貨屋っていいわね……平和が一番だわ」 なんて、珍しく上機嫌で呟いていた、その時だった。


カランコランと鐘が鳴り、勢いよく扉が開く。


「クシナっち、いるー?」


 店内に響き渡ったのは、やけに元気で明るい、聞き覚えのある声。 せっかくの平穏な空気が、一瞬でかき乱されるのを感じた。


 今日のマニアちゃんは、スポーティーな格好にミニスカートを合わせている。 見た目こそ可愛らしい少女のようだが、実地経験も実年齢もそれなりに積み重ねている、呪物コレクターだ。


「アニマだってば。それよりクシナっち、これ見てよ」


 彼女はスカートのポケットから、ガサゴソと何の気なしに「それ」を取り出した。 私の目の前に差し出されたのは……手のひらサイズの、くまのぬいぐるみだった。


「……くまのぬいぐるみ?」


 呪物屋のカウンターには似つかわしくない代物に、私はつい素っ頓狂な声を出してしまう。


「そうそう。ちょっと前にね、迷宮の中にぽつんと落ちてたんだよね。なんだかすごく良い匂いがしたから、つい拾っちゃった」


 満面の笑みで答えるアニマ。 ……この女、いつか本当に取り返しのつかない目に遭うんじゃないかしら。一瞬だけそんな不安がよぎったけれど、私はすぐに意識を商売モードへと切り替えた。


「……いつも通り、鑑定でいいのよね。代金は金貨十枚よ」


「うんうん、お願いしまーす」


 アニマはためらいもなく、カウンターに金貨を並べた。


 鑑定を始める前、くまのぬいぐるみの顔に白い粉のようなものが付着しているのに気づいた。 私はそれを清潔な布で軽く拭き取ってから、意識を集中させて鑑定に入る。


「……うーん。これね、一応は呪いの品に分類されるけれど、実害らしい実害はないわ。ただ、適度にかまってあげないと、寂しがって勝手に動き回ることがある。……それだけね」


 鑑定結果を伝えると、マニアちゃんは目に見えて肩を落とした。


「えー? そんだけなのー?」


 期待外れだと言わんばかりの、実に残念そうな声。


「これも呪物というよりは『奇品』の類ね。あんた、いい加減呪物コレクターなんてやめて、奇品コレクターにでも転向したら?」


 改めてぬいぐるみを観察してみるが、伝わってくるのは前の持ち主に大事にされてきた、温かい思い出のような残滓ばかりだ。悪意の欠片も見当たらない。


「……一応聞くけど、これも持って帰るのよね?」


「そりゃあね、これでも立派な呪物だし!」


 あくまで「呪物」であると言い張るマニアちゃん。どうやら、自分の肩書きを奇品コレクターへと変えるつもりは毛頭ないようだった。


「そういえばさー、この前ちょっと不思議なことがあったんだよ」


マニアちゃんが、思い出したように話し始めた。


「探索の帰りにね、私を含めて三人でカフェに行ったんだ。それで、コーヒーと一緒に、みんなでシェアしようって小ぶりのホールケーキを一つ注文したの」


「ふーん。……それで?」


 私は適当に相槌を打つ。


「ケーキは最初から、十字に四等分されて届いたんだ。まずはみんなで一ピースずつ取って、残りの一つは後で誰が食べるか決めればいいよねってことにしてさ」


 マニアちゃんは身を乗り出して、さらに続ける。


「ケーキはすごく美味しかったし、その日の探索の反省会なんかをして、結構わいわい盛り上がってたんだ。それで、いよいよラストの一ピースをどうしようかってお皿を見たんだけど……もう、そこには何も無かったんだよね」


 誰も取っていないし、食べていない。なのに、気づいた時にはなくなっていた。


「はじめは確かに四ピースあったし、店員さんに聞いても首を傾げるばかりだったんだよね」


 マニアちゃんは、どこか楽しそうに不思議な余韻に浸っている。


「……この前あんたが持って帰った、あの『呪いの包丁』でも使ったんじゃないの? あれなら四等分に見せて、実は三等分になっているとか、ありそうじゃない」


 私の指摘に、マニアちゃんは不満げに口を尖らせた。


「さすがにそこまで非常識じゃないよー。カフェに剥き出しの包丁を持ち込むわけないよ」


 どの口が言っているのだろう。鑑定した包丁を剥き出しのまま持ち帰ったのは、どこの誰だったかしら……。


 結局、ケーキが消えた理由は分からないまま、彼女は窓の外に目を向けた。


「あ、もうこんな時間! クシナっち、今日もありがとね。帰るよ」


 彼女はそう言うと、鑑定したばかりの「くまのぬいぐるみ」をスカートのポケットに押し込んで、店を後にした。


  世の中、本当に不思議なことってあるものね。



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